ZSU-23-4
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ZSU-23-4 シルカZSU-23-4
ウクライナ キエフの大祖国戦争博物館の展示車両
基礎データ
全長6.54m
全幅2.95m
全高3.8m
重量20.5t
乗員数4名
装甲・武装
装甲10mm(車体前面)
主武装AZP-85 23mm 4連装機関砲
機動力
速度50km/h(路上)
30km/h(路外)
エンジンV6R
4ストロークV型6気筒液冷ディーゼル
280hp
懸架・駆動トーションバー方式
行動距離450km
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ZSU-23-4 シルカ(ロシア語: ЗСУ-23-4 ≪Шилка≫ゼーエスウー・ドヴァーッツァチ・トリー・チトィーリェ・シールカ)は、ソビエト連邦で開発された自走式高射機関砲である。

「ZSU(ロシア語: ЗСУ)」は、ロシア語で「自走高射装置」を意味する「Зенитная Самоходная Установка」の略で、「防空兵器には河川名に由来する愛称をつける」というソ連の方針に沿い、シルカ川に因んだ「シルカ」という愛称がつけられた[1]GRAUインデックスは2A6(ロシア語: 2А6)。
開発

前型の自走式高射機関砲であるZSU-57-2は、57mm機関砲2門を装備し、初期の追尾誘導コンピュータを用いていた。しかし、ZSU-57-2は高速で飛行するジェット機に対して大きな成功を収めたとは言えず、少数の配備に留まった。一方で、タイヤを装備しており、牽引式ながら高い機動性を持つZPU機関砲シリーズは、多くの装甲車両に搭載された14.5mm重機関銃をはじめ、ソ連軍の標準対空装備となっていた。この対空システムの23mm口径シリーズの決定版となったのが、ZU-23-2連装機関砲であった。

こうした中、高度2.5-1.5kmまでの航空機と距離1.8kmまでの地上軽装甲車両を攻撃できる、機甲師団の中高度域防空システムとなる自走機関砲を開発せよという要求のもと、1958年に開発が始まった。水陸両用戦車であったPT-76プラットフォームに23mm機関砲を4門装備したZSU-23-4は1964年に採用され、この新型対空車両は改良されたレーダーシステムを用い、優れた火力と命中率を誇り、低高度を飛行する航空機にとって大きな脅威となった。
設計

ZSU-23-4は、280馬力のV6R ディーゼルエンジン1基と250リットルの燃料タンク2基を備え、通常で400km走行できた。これに加え、APUとして74馬力のガスタービンエンジンも搭載し、エンジン停止中も射撃が可能であった。車体には砲弾片や7.62mm銃弾を防ぐ程度の装甲が施され、機甲部隊との随伴もある程度は可能である。しかし、重装甲車両ではないので、対戦車ミサイル戦車などの攻撃により容易に破壊されるという生存率の低さも指摘されている。ZSU-23-4 後方より
右側に向けられている台皿型のものがRPK-2 ヴィユーガ レーダー

ZSU-23-4は、RPK-2 ヴィユーガ(NATOコードネーム:B-76 ガンディッシュ)レーダーにリンクした液冷式のAZP-85 23mm機関砲を備えた砲塔を搭載した。RPK-2 レーダーは半径20kmまでの目標を探知することができ、さらに、半径8km以内の目標を照準かつ追跡(追尾)することができる。各機関砲へは50発(もしくはより少量)ずつベルトで給弾が行われる。発砲は4門同時の他、4通りの2門ずつ発射が可能である。各機関砲は毎分1,000発の機関砲弾を発射でき、故に4門で毎分4,000発の砲弾を発射することが可能であるとされる。しかし、初期型では冷却システムに欠陥があり、機関砲冷却のために射撃を休まねばならず、1門につき15秒以上の連続射撃は行わないことという制限が設けられた。そして、冷却不十分のまま射撃を再開してしまうと砲身焼損か弾切れのどちらかになるまで射撃が止まらなくなるコックオフを高確率で引き起こした。砲身焼損の場合は機関砲の交換で済めばいい方で、重篤なケースとしては砲が完全に壊れてしまい修理不能になることも多く、最悪の場合砲身が融解したこともある。ZSU-23-4は優れた防空兵器であったが、この制約により攻撃力はやや劣るものになった。この欠陥は、改良型ZSU-23-4Mにおいて対策が行われ、冷却装置の改善により砲身の信頼性は非常に高まり、制限は撤廃された。AZP-85の最大有効射程は7,000m、最大射高は5,100mであるが、対空射撃における有効射程は2,500m前後である。また、追加兵装として砲塔後部左右に各2基ずつ計4基の9K38 イグラもしくは9K38-M イグラ-1を装備できる。

前任のZSU-57-2が目視による光学照準で、砲塔は油圧による動力旋回機構を持つが、それでも旋回が遅く、高速で移動するジェット機への対応が難しく、加えて上面が開放式のためにNBC防護不能なのに対し、シルカは密閉式砲塔でNBC防護が可能であり、レーダーと機関砲をリンクさせ、砲塔旋回用のAPUを搭載することにより旋回速度を高速化しているためより有効な対空兵器になった。ただし、砲が小口径になったことで1発の威力や射程は大幅に低下している。

一部で指摘される問題として、レーダーがRPK-2の1基のみであり、捜索用と追跡用が分離されていないという点がある。これにより、1基のレーダーで両方の役目を兼任させねばならず、事実上単一目標にしか対処できないため、特定目標との交戦中に別の目標を探知するのは不可能となっている。現代の対空戦車では捜索用と追跡用の2基のレーダーを搭載するのが標準的であり、世界初のレーダー搭載対空戦車であるシルカは、この点では旧式であると言える。
運用イスラエルで展示されるZSU-23-4

ZSU-23-4は、1965年11月の革命記念軍事パレードで初公開された。その後、多数が東側諸国中東地域の親ソ連諸国に供与され、1967年第三次中東戦争以降、多くの実戦に投入された。


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