YAWARA!
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YAWARA!

テレビアニメのロゴ。
ジャンル柔道ラブコメディ青年漫画
漫画
作者浦沢直樹
出版社小学館
掲載誌ビッグコミックスピリッツ
レーベルビッグコミックス
発表期間1986年30号 - 1993年38号
巻数全29巻
映画:(実写版)
監督吉田一夫
制作東宝映画
マイカルグループ
封切日1989年4月15日
上映時間97分
アニメ
原作浦沢直樹
監督ときたひろこ
シリーズ構成井上敏樹
キャラクターデザイン兼森義則
音楽森英治ピカソ)、AXISS
アニメーション制作マッドハウス
製作讀賣テレビ放送キティ・フィルム
放送局讀賣テレビ放送・日本テレビ系列ほか
放送期間1989年10月16日 - 1992年9月21日
話数124話
映画:YAWARA! それゆけ腰ぬけキッズ!!
監督ときたひろこ
制作讀賣テレビ放送
キティ・フィルム
日本ビクター
封切日1992年8月1日
上映時間60分
アニメ:YAWARA! Special
ずっと君のことが…。
監督浅香守生
アニメーション制作マッドハウス
製作日本テレビ、讀賣テレビ放送、
バップ、キティ・フィルム
放送局日本テレビ系列
放送期間1996年7月19日 - 同日
金曜ロードショー
話数1話
テンプレート - ノート
プロジェクト漫画アニメ
ポータル漫画アニメ

『YAWARA!』(ヤワラ)は、浦沢直樹による日本漫画、またそれを原作としたアニメ作品。原作は『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて1986年30号から1993年38号まで連載された[1]。第35回(平成元年度)小学館漫画賞受賞作[1]。2021年5月時点で累計発行部数は3000万部を突破している[2]
概要

祖父・猪熊滋悟郎の英才教育を受けて並外れた柔道の才能を持つ主人公・猪熊柔が、「普通」の女の子になりたいという願いと、自身の柔道の才能との間で葛藤しつつも徐々にその力を発揮し、バルセロナオリンピックにて二階級制覇に挑むまでを描いた作品である[1]柔道をテーマにしながらも、それまでの定型的なスポーツ漫画とは異なる爽やかさやコメディタッチの展開が特徴となっている[1]。青年漫画であるため、初期には「かわいい女の子のサービスカット」もあったが[3]、物語が進むにつれ徐々に減っていった。作者の浦沢は本作品のヒットにより人気作家となり、その後『MONSTER』の連載開始からしばらくの間までは「ライト感覚の作家」として社会的に認知されるに至った[4]

1989年に日本テレビ系列でテレビアニメ化され、同年に実写映画化もされた[5]。アニメは1992年まで放送された。また、テレビアニメでは放送されなかったバルセロナオリンピック編は、後にアトランタオリンピックに合わせ、金曜ロードショーでTVスペシャルとして放送された。

また本作品の連載当時、『JIGORO!』と題したスピンオフ漫画が『増刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)1988年10月20日号から1991年4月11日号にかけて連載された。この作品は柔の祖父・滋悟郎の若き日の姿を描いたもので[6]、『浦沢直樹傑作短編集』として単行本化や文庫本化がされている[7]
作品背景

作者の浦沢は当初、『MONSTER』のような医療ものの連載を企画していたが、編集者の反応は芳しくなかった[8]。その後、担当編集者と打ち合わせを続ける中で浦沢が「女子柔道でもやりますか」と切り出し、さらに「ヤワラって女の子が天才柔道家でさ、あとは『巨人の星』みたいにして描けばいいからさ」と畳みかけたところ、編集者の反応が良く[9]、連載に至った。本作の連載にあたり梶原一騎および梶原原作の野球漫画『巨人の星』は特に意識したという[9]。シェイクスピア梶原に対して、どんな角度で攻めていけばいいかを考え抜いた結果なんです ? 浦沢直樹根性を持って努力を重ねていけば、だんだんと花が咲くっていうのが『巨人の星』だけど、僕の『YAWARA!』は、天才はいる、強いヤツは最初っから強い、ていう方向 ? 浦沢直樹

また、それまでの浦沢は『パイナップルARMY』などの骨太な作品を得意とし、作品作りにおいてもドラマから入る傾向があったが、キャラクターから作品作りに入る方法も身に付けたいと考え、それまでご法度にしてきた「主人公は女の子」「スポーツもの」といった分野にあえて取り組んだとも語っている[4]。そのため漫画マニアの間では批判もあったというが、浦沢はそれまで自身に欠けていた課題に取り組んだ『YAWARA!』は実験作であり、その辺りに誤解があると語っている[4]

一方、連載当初の浦沢は本作を真面目なスポーツ漫画に留めるつもりはなく、パロディ漫画とすることを意図していたといい、雑誌『インビテーション』2006年5月号での宇多田ヒカルとの対談の中で以下のように語っている[4]。そもそも『YAWARA!』はパロディとして始めたんですね。それまでのスポーツマンガをすべて咀嚼して、お約束事をあえてやり尽くすことで、マニアが読むとクスクス笑うようなものを目指していたんだけど ? 浦沢直樹

ただし、連載を続けるうちに浦沢の思惑とは反して「ライト感覚のスポーツ漫画」といった体裁となり、ゴールデンタイムでのアニメ化も決まり子供たちから熱烈な支持を受けると、そうした読者を裏切るような展開を描く訳にも行かず「随分とエライものをしょいこんじゃったな」と途方に暮れる思いだったという[4]
影響・評価

本作品はアニメ化の影響もあり大ヒットを記録し[5][10]、当時活躍していた女子柔道選手の田村亮子(後の谷亮子)とともに柔道ブームの火付け役となった[11]。本作品の影響により中学校や高校の部活動において女子柔道部員が急増するなど競技人口が拡大し、それに応じてほぼ皆無に等しかった女子の地方大会が実施されるようになり、男性の競技と見なされていた柔道が女性競技者に対しても門戸を積極的に開く契機となった[10][11]。また、本作品の主人公・猪熊柔にあやかり実在の田村も「ヤワラちゃん」のニックネームで呼ばれるようになったが、女子柔道の強者はそれまで富田常雄の小説『姿三四郎』にあやかったニックネーム「女三四郎」と呼ばれるケースが多く、それ以来のケースとなった[11]。本作品は田村のニックネームという要素も相まって社会的認知度を高めた[5]。格闘技に限定すれば、初心者が競技を始める上での動機付けという点では『空手バカ一代』の影響力を上回るのではないかとも指摘されている[11]

漫画コラムニストの夏目房之介は、浦沢が「『YAWARA!』は実験作だった」と発言していることについて、「相当冷静に、客観的に自分の表現したいモノと、それを表現できる方法、さらにそれを娯楽として成功させるにはなにが必要かを考えていないと、いえるもんじゃないのだ」と評価し[12]、それまで大友克洋の亜流という存在だった浦沢が本作品の発表により大衆娯楽的な表現方法を習得し、大友の影響下から脱することに成功したとしている[3][12]。一方、作品自体は「江口寿史の『かわいい女の子』のサービスカット、『巨人の星』の親子関係と父のライバル特訓、『めぞん一刻』のすれ違いなどなど。数えればなぞりや類似を指摘できるだろう」とし、これは浦沢本人が「メジャーなヒット作の要素を習得するべく意図的に繰り込んだもの」と評している[3]。ただし、こうした意図的な取り組みについて「当時『パイナップルARMY』に注目しながら、この手つきの『あざとさ』に幻滅したマンガ好きの読者もいただろう」と指摘している[3]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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