Y染色体
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Y染色体の消失

Y染色体が男性のみに1本単独で存在するため、突然変異などで遺伝情報を失い、形態的にも小型化する傾向にあるのはヒトも例外ではないが、Y染色体自体を失っても雌雄の性別が保たれている種も存在しており、Y染色体の消失が即ち性別や種の存続に関わるかは別の問題である。現在、Y染色体の遺伝情報を修復するためにサイトカイニン水溶液などの薬物を精子に添加する(種無し植物の要領)など、方法がいくつか検討されているが、「失敗した時のリスクが大きすぎる。」という意見と、「人類の存続には犠牲はやむを得ない。」という意見とが対立している状況にある。
Y染色体ハプログループ詳細は「Y染色体ハプログループ」を参照

父系で遺伝するY染色体のハプログループ(=ハプロタイプ集団)をY染色体ハプログループという。Y染色体ハプログループを人類全体について調べることで、世界各地の民族の由来を調べることができる。
Y染色体過剰症群

XYY症候群、XXYY症候群(英語版)などが知られている。XYY症候群では通常の男性となんら変わりのない表現系を示し顕著な障害は発見されていないが、XXYY症候群の男性はクラインフェルター症候群様の症状を示す。

フィクションで描かれた映画エイリアン3では、冒頭に「Y染色体を過剰にもつ人間を集めた囚人星」という設定がある。Y染色体を過剰にもつ人間は通常の男性より破壊や闘争の本能が強いというのは1960年代に間違って流布された説で、現在は否定されている。
脚注^ Stevens NM (1905). ⇒“Studies in spermatogenesis with especial reference to the "accessory chromosome"” (pdf). Carnegie Institution of Washington Publication 36: 1-33. ⇒http://www.esp.org/foundations/genetics/classical/holdings/s/nms-05-spermatogenesis-1.pdf
^ Grutzner F, Rens W, Tsend-Ayush E, El-Mogharbel N, O'Brien PC, Jones RC, Ferguson-Smith MA, Marshall Graves JA (2004). “In the platypus a meiotic chain of ten sex chromosomes shares genes with the bird Z and mammal X chromosomes”. Nature 432: 913-917. doi:10.1038/nature03021. PMID 15502814. 
^ 東京農工大学農学部蚕学研究室『性決定』
^ 小野知夫「高等植物の性決定と分化」(『最近の生物学』第4巻)
^ a b Vallender EJ, Lahn BT (2006). ⇒“Multiple independent origins of sex chromosomes in amniotes”. Proc Natl Acad Sci USA 103: 18031-18032. doi:10.1073/pnas.0608879103. ⇒http://www.pnas.org/content/103/48/18031.full 2009年3月30日閲覧。. 
^ PLoS Biology (2005). ⇒“Evolution of Sex Chromosomes: The Case of the White Campion”. PLoS Biol 3: e28. doi:10.1371/journal.pbio.0030028. ⇒http://biology.plosjournals.org/perlserv/?request=get-document&doi=10.1371%2Fjournal.pbio.0030028&ct=1 2009年3月30日閲覧。. 
^ 諸橋憲一郎ほか(2006年)「性を決めるカラクリ『X・Y染色体』」『Newton』2006年2月号、106ページには「Y染色体はX染色体から進化した」との見出しがあるが不正確である。性染色体としてX染色体のみ持つ生物は、全個体がXX個体またはXO個体となるが、XO型生物からXY型生物が進化したとする報告はない。64-66ページの説明文は常染色体からの性染色体の進化が起こったことを説明する文章となっている。当該106ページの説明も研究者の談話はX染色体からY染色体ができたとは述べておらず、編集者による地の文章で不正確な記述となっている。
^ (遺伝的)組換え - 遺伝子の組合せが入れ替わること。同じ現象を染色体の間の可視現象として捉えると染色体の乗換え(染色体交差)となる。
^ Jegalian K, Page DC (1998). “A proposed path by which genes common to mammalian X and Y chromosomes evolve to become X inactivated”. Nature 394: 776-80. PMID 9723615. 
^ デイヴィッド・ベインブリッジ『X染色体:男と女を決めるもの』83-92ページ。
^ Matsunaga S (2009). ⇒“Junk DNA promotes sex chromosome evolution”. Heredity 102: 525-526. doi:10.1038/hdy.2009.36. PMID 19337304. ⇒http://www.nature.com/hdy/journal/v102/n6/full/hdy200936a.html 2009年6月5日閲覧。. 
^ 黒岩麻里「Y染色体を失った哺乳類,トゲネズミ」『生物の科学 遺伝』2009年1月号
^ 『X染色体:男と女を決めるもの』80-83ページ。
^ a b 「性を決めるカラクリ『X・Y染色体』」『Newton』、34-35ページ。
^ a b 「性を決めるカラクリ『X・Y染色体』」『Newton』、59ページ。
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^ 「性を決めるカラクリ『X・Y染色体』」『Newton』、39ページ。
^ 「性を決めるカラクリ『X・Y染色体』」『Newton』、82-83ページ。
^ Y染色体と共にSRYを失ったトゲネズミも存在する(黒岩麻里「Y染色体を失った哺乳類,トゲネズミ」『生物の科学 遺伝』)。
^ 西田千鶴子「鳥類の性染色体進化」『生物の科学 遺伝』2009年1月号
^ Yoshimoto S, Okada E, Umemoto H, Tamura K, Uno Y, Nishida-Umehara C, Matsuda Y, Takamatsu N, Shiba T, Ito M (2008). ⇒“A W-linked DM-domain gene, DM-W, participates in primary ovary development in Xenopus laevis”. Proc Natl Acad Sci USA 105: 2469-2474. doi:10.1073/pnas.0712244105. ⇒http://www.pnas.org/content/105/7/2469.full 2009年5月2日閲覧。. 
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^ 「性を決めるカラクリ『X・Y染色体』」『Newton』、42-43ページ。

参考文献

小野知夫「高等植物の性決定と分化」(駒井卓、
木原均編『最近の生物学』第4巻)培風館、30-47ページ、1951年。

黒岩麻里「Y染色体を失った哺乳類,トゲネズミ」『生物の科学 遺伝』 ⇒2009年1月号、特集I「性決定の遺伝学」、15-19ページ、2009年、TNS。

東京農工大学農学部 ⇒蚕学研究室『 ⇒昆虫の性染色体』『 ⇒性決定』(昆虫以外の多様な動物の性決定についても詳しい)。

西田千鶴子「鳥類の性染色体進化」『生物の科学 遺伝』2009年1月号、20-25ページ、2009年、TNS。

福岡伸一「できそこないの男たち」光文社新書 371、ISBN 978-4334034740、2008年。

デイヴィッド・ベインブリッジ『X染色体:男と女を決めるもの』長野敬、小野木明恵(翻訳)、青土社 、2004年、ISBN 978-4791761524

諸橋憲一郎ほか「性を決めるカラクリ『X・Y染色体』」『Newton』2006年2月号、34-43, 56-83, 90-112ページ、2006年、ニュートンプレス。

八杉竜一ほか編『岩波生物学辞典(第4版)』 岩波書店、1996年、ISBN 4-00-080087-6

関連項目

性染色体 / X染色体

性決定

ハプロタイプ


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