WN駆動方式
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WN駆動方式
赤い部分がWN継手

WN駆動方式(WNくどうほうしき、WN Drive)は、電車の駆動方式の一種である。目次

1 概要

1.1 歴史


2 採用事例

2.1 日本

2.2 海外


3 問題点

3.1 惰性走行時の騒音


4 脚注

5 関連項目

6 外部リンク

概要 WN継手模式図 1,067 mm軌間のWN駆動装置
(秩父鉄道5000系)

高速運転に適した電車用駆動システムとして、アメリカの大手電機メーカーであるウェスティングハウス・エレクトリック(WH)社が、傘下の機械・歯車メーカーであるナタル社(Natal Co.Ltd)と1925年以降共同開発を実施、実用化した。「WN」とは開発に携わった両社の頭文字 (Westinghouse - Natal) にちなむ。もっとも、現在の米国では単に「gear coupling」と呼称される方が多い。

駆動系全体は主電動機を車軸と平行に台車枠に固定し、小さな偏位を許容する「WN継手」を介して電動機の出力軸と駆動歯車を接続する。一般的には主電動機の荷重を全てばね上の弾性支持とした電車用の車軸無装架駆動方式全般をカルダン駆動方式と呼称するため、「WN継手」を使った「平行軸カルダン駆動」の一種とされる。

「WN継手」自体の仕組みは、二組の遊びの大きなスライドスプラインで構成される。スライドスプラインは歯車と異なり全ての歯が噛み合っているので小さくても大きな力を伝達でき、信頼性も高い。ただし公差を利用する角度変化の許容度はわずか5度以内である。
歴史

主電動機を小型、軽量化しつつ駆動力を発揮するには、高速電動機と減速歯車が必要になる。

過去に電気鉄道で使用されていた吊り掛け駆動方式は、主電動機に取り付けられた主歯車と動力を伝達される車軸に取り付けられた大歯車を一体のギアボックスに納め、そのギアボックスが主電動機の重量の約半分を支え、残る半分はばねで台車枠が弾性支持する単純な構造の駆動系だった。

吊り掛け駆動は、その単純さ故に欠点もあった。

主電動機重量の約半分が車軸にかかり、ばね下重量が大きくなる構造により、軌道への負担が多く、かつ軌道と車輪の追従性が悪く、乗り心地が悪い。

レールの継ぎ目や分岐器で車軸に加わった衝撃が、ギアボックスを介して主電動機に直接伝わるため、軸受やモーターケースに損傷を生じる負担があった。整流子電動機の弱点であるフラッシュオーバーを考慮すると、モーター回転数の引き上げも困難になるなど[1]、更なる高速化に向けての性能向上は頭打ちの状況であった。

この問題を克服する方法として、1920年代には、スイスなどでブフリ式駆動方式が、アメリカや欧州でクイル式駆動方式が実用化された。しかし、いずれも大型であるため電気機関車用であり、電車用としては普及しなかった。

こうして電車の性能向上のため、当時アメリカで有数の鉄道用電動機メーカーであったWH社は1925年から、傘下のナタル社と共同で、小型の車軸無装架駆動方式と低電圧高回転電動機を開発した。

平行軸WN駆動は10年以上の長期にわたる実用試験を経て信頼性や性能が確認された後、1941年シカゴ・ノースショア・アンド・ミルウォーキー鉄道(ノースショアー線)のエレクトロライナーと呼ばれる軽量構造の4車体連接車に採用されて成功を収め、さらに1948年にはニューヨーク市地下鉄用R12形電車に大量に採用され、以後アメリカとアジアで普及した。
採用事例
日本 WN駆動方式の主電動機
(三相誘導電動機) WN駆動装置。WN継手が小歯車軸に固定された状態

構造的に高出力に耐える継手の特性から、古くから地下鉄私鉄各社で用いられてきた。また高速運転を行う新幹線でも、開業以来長く標準駆動システムとして使用され続けているが、700系やN700系の一部グリーン車では例外がある(後述)。

日本におけるWNドライブは、1953年6月に完成した京阪電気鉄道1800型1802[2][3][4]に搭載された、アメリカからの技術情報に基づき住友金属工業(現:日本製鉄)が独自開発したWN継手[5]が最初の実用化例となり、これと同様の継手を用いた東京都電5500形5502[6]、さらにWH社のライセンスに基づく駆動装置を備え、営団丸ノ内線開業に備えて30両が一気に製造された300形電車[7]、と続いた。

丸ノ内線をはじめ、米国の鉄道と同等の1,435 mm軌間(標準軌)を採用した路線のほとんど(営団地下鉄(現:東京メトロ)の銀座線丸ノ内線近畿日本鉄道奈良線大阪線などの標準軌線区、京阪神急行電鉄(現:阪急電鉄)の神宝線)においては、継手の耐久性が高く大出力化に有利なWNドライブは早くから導入された。


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