この記事には参考文献や外部リンクの一覧が含まれていますが、脚注による参照が不十分であるため、情報源が依然不明確です。適切な位置に脚注を追加して、記事の信頼性向上にご協力ください。(2022年9月)
W3事件(ワンダースリーじけん)は、手塚治虫が漫画『W3』の掲載誌を『週刊少年マガジン』から『週刊少年サンデー』に切り替えた出来事のことである。本項ではそれに至った経緯についても解説する。 虫プロダクションは1965年(昭和40年)、アニメ用の作品『W3』を企画していたが、それとそっくり同じものが他のプロダクションで企画されていることがわかり、虫プロ内部に産業スパイがいるのではないかという疑惑が起こった[1]。そして、虫プロ社員の中でもその疑惑が話題になり、何人かが虫プロを辞めることになった[1]。手塚はアニメの企画と並行して同作の漫画版を『週刊少年マガジン』で連載することになるが、連載6回目で中断した後『週刊少年サンデー』に掲載誌を変更した。この突然の掲載誌変更が「W3事件」と呼ばれる。 連載誌を変えた理由について手塚は、「虫プロダクションの事情」と「W3のスポンサーはロッテで、宇宙少年ソランのスポンサーは森永という広告業界の関係」と述べている[1]。また、手塚はこの件に関しては誰も責めておらず、講談社から刊行された「手塚治虫漫画全集」版のあとがきにおいては、講談社に迷惑をかけたことについて謝罪している[1]。 手塚はじめ虫プロダクションは、『ジャングル大帝』に続くアニメ作品として、雑誌『日の丸』に連載されていた『ナンバー7』のアニメ化を企画する。しかし、よく似た設定の『レインボー戦隊ロビン』が東映動画で企画されたため、作品が類似することを嫌った虫プロは、タイトルはそのままに設定の大幅な変更を行った。この時の設定は、当時の『007』を中心とするスパイ映画の流行を受け、星光一(ほしこういち)という諜報部員の活躍を描いたものとなった。さらにマスコットとして宇宙リスの「ボッコ」が主人公の相棒につけられ、このボッコには主人公とテレパシーで会話する、空を飛ぶ、発光する、透明になる、といった特殊能力が備わっていた。 ところが、TBSなどの制作するアニメ『宇宙少年ソラン』に、ボッコとよく似たリスの「チャッピー」が登場することが判明したため、虫プロは企画を抜本的に見直すことを余儀なくされ、タイトルも新たに『W3』とした。また、虫プロダクションの中に企画を口外した産業スパイがいるのではないかという疑惑が起こり、豊田有恒らが虫プロダクションを退社した。『W3』は『ナンバー7』とは打って変わってSF色の強い作品となったが、コードネーム「F7号」(ナンバー7)の星光一が主人公星真一の兄となり、ボッコは容姿がウサギへと変わったものの、W3の隊長として名前が流用されたことで、かろうじて『ナンバー7』時代の名残をとどめている。
概要
「事件」に至るまでの経緯