W-SIM(ダブリュー・シム、ウィルコム・シム)は、PHS事業者のウィルコムが開発した、PHS無線通信部分のみをモジュール化したカード型端末である。 2005年7月7日、「WILLCOM コアモジュール戦略」の一環として発表。縦42.0×横25.6×厚さ4.0mmという超小型サイズの中に、PHSのアンテナ部・無線通信部・電話帳等へ利用するためのユーザーメモリーが納められている。W-SIMを挿入して使用する端末の事を"SIM STYLE"と呼ぶ。 ウィルコムの前身であるDDIポケットが2004年7月21日に展示会「ワイヤレス ジャパン」にて発表した、ジャケットフォンとR-SIMがその起源である[1]。 電波出力の大きな携帯電話では無線通信モジュール部分の発熱量が大きく、放熱のために一定以上の大きさが必要とされる[2]が、電波出力が小さいPHSでは小型モジュールに収めることが可能であり、通信モジュールと端末の分離に成功した。 なお「SIM」と付いているものの、第3世代移動通信システムなどで用いられているSIMカードとの互換性はない。 「WILLCOMコアモジュール戦略」では、W-SIMは個人・法人向け、CSCエンジン
概要
2010年には、インベンテック・アプライアンシズ(IAC)よりW-SIM型のGSMモジュールである「CM-G100」が発売。また「WILLCOMコアモジュールフォーラム」会員企業により、W-CDMA方式[3]や中国のTD-SCDMA方式に対応したW-SIMモジュールの提供が計画されていた[4]。
2011年には、W-SIM本体に、microSIMを挿入するタイプのUMTS端末をネットインデックスがコンセプトモデルとして公表した。 通信機能がモジュール化され、電話機と分離されることにより、SIM STYLEのメーカー側には 等が可能となるメリットがあった。そのため、懸賞プレゼントや企業・店舗のオリジナルアイテムへの対応がしやすいほか、固定電話機型端末やへぇボタン型端末など、電話の枠にとらわれない多種多様な端末への導入も検討されていた[6]。 もっとも、モジュールであっても電波を送受信していることには変わりは無いため、例えば、送信電波の自身への回り込みによるオーディオ出力のノイズ重畳や、逆に自身の出したノイズの回り込みによる受信感度の低下など、無線技術の無いメーカーに対するハードルがまったく無くなったわけではなかった。 デメリットとしては、モジュール内にアンテナも組み込む必要があるために、通常の端末に比べて感度が劣ることであった。電波の条件の良い場所でしか利用しないのであれば問題はないが、そうではない場所で用いると、通常端末でなら利用可能な場所でも使えない、通話できても音質が劣る、データ通信の速度が劣る、等が起こり得た。 一方、ユーザー側にとっては、 等が可能になった。実際に一部SIM STYLE端末のW-SIMを同梱しない単体販売、契約1回線でTTとW-ZERO3等の通話用+スマートフォンのパッケージ販売もされており、状況に応じた端末持ち替えは手軽に行えた。 しかし実際にはキッズケータイpapipo!等、W-SIMの電話帳の読み出し・書き込みに対応していない端末もあった。また、端末本体とW-SIMモジュールの互換性確認や、通信モジュール・端末本体それぞれファームウェアのアップデートやオンラインサインアップなどが必要となる場合があった。例として、 などがあった。 また、「Webアクセスの出来ないTTやnico.、Webアクセスがパケット定額の対象にならないキッズケータイpapipo!ではパケット定額を付ける意味が無い」「キッズケータイpapipo!専用のキッズスタジオは他の端末では使用不可」など、SIM STYLE端末によって使えるサービスが異なる。サービスが利用できない端末からはサービス解約も出来ない場合があり、完全な持ち替えに際しては不要な料金が発生し続けないよう使用者側が考慮する必要があった。 W-SIMインターフェース概要Pin No.信号名内容用途 各通信モジュールの仕様として、大きさ25.6×42×4mmに定められ、端子は18ピンという独自のシリアルインタフェースになっている。通信方式として音声通話機能のほか、パケット通信や64K/32K PIAFS2.1、フレックスチェンジにも対応し、タイ、台湾(RX430ALはベトナムも含む)での国際ローミングも可能となっていた。 また、PINコードと呼ばれる暗証番号を設定することで、W-SIMのロックを行い、第三者によるW-SIMの無断使用を防ぐことができた。 一部では、各W-SIMのアンテナ部に着けられたカラーから、RX410INは「灰耳」、RX420ALは「赤耳」、RX420INは「青耳」、RX430ALは「黒耳」、CM-G100は「橙耳」と称される。 現行端末はRX430ALだが、一部非対応のジャケットもあるため、RX420INが付属するジャケットもある。 2012年11月現在、公式オンラインショップであるWILLCOM STOREではいずれも販売されていない。 ネットインデックス製。2005年11月25日より対応端末に同梱されていた(単体販売は、なされなかった)。 エイビット製・アルテル販売。2006年12月19日発売。対応端末に同梱のほか、単体販売も行われていた。RX410INの仕様に加え、消費電力が下がり、高度化通信規格W-OAMに対応。通話中着信、リモートロックなどの機能が追加された。セットされる端末は、ネットインデックス製を除く一般音声端末に多い傾向がある。2011年8月、エイビットによるサポートが終了した。 ネットインデックス製。2007年4月10日発売。W-OAM対応など、基本性能はRX420ALと変わらないが、パケット通信時の消費電力が若干低減している。なお、PIAFS通信時はRX420ALより高い。 以前は単体販売もされていた。また、以前RX410INが同梱されていた端末に同梱されるW-SIMは、当製品発売以降は、ネットインデックス製の音声端末・データ端末やシャープ製スマートフォンを中心にこちらに差し替えられた。ただし、WS008HA等の例外はある。 エイビット製・アルテル販売。ただし、2010年10月以降の製造ロットは、エイビット直接販売に変更。2009年12月17日発売(単体)。RX420ALの仕様に加え、ベトナムローミングおよび高度化通信規格W-OAM type Gに対応。
特徴
無線機器に関する技術基準適合証明の取得に関する作業の省略
製品開発期間の短縮とそれによる開発コストの縮小
無線機器開発技術のないメーカーでの開発・生産
少数ロットでの生産[5]
機種変更なしで同一電話番号でのSIM STYLE端末の持ち替え
W-SIMに置いた電話帳データを複数の端末で共用
W-SIMの機種変更で、同じ端末をより高性能な物としての使用
W-ZERO3に添付のW-SIMを初期状態のままW-ZERO3 [es]に差し替えると、W-SIMのバージョンアップが要求され、それを行わないと一切の通話・データ通信が行えない。
W-ZERO3 [es]と9(nine)間ではW-SIMの差し替え時には、一般的にオンラインサインアップを要する。
仕様
1TXDUART送信シリアルデータシリアルインターフェース
2RXDUART受信シリアルデータ
3RTSUART送信データレディ
4CTSUART送信レディ
5DTRUART受信レディ
6DCDUARTデータキャリア検出
7RIUARTリングインジケータ
8INSW-SIM検出信号電源、検出
9Vcc電源
10GNDグランド
11PCMCLKPCM CODECクロック音声用
12PCMSYNCPCM CODEC同期信号
13PCMINPCM CODECデータ入力
14PCMOUTPCM CODECデータ出力
15IF_SELI/F 通知信号インターフェース通知
16DISP1状態表示1電界強度用
17DISP2状態表示2
18DISP3状態表示3
端末
RX410IN
アンテナ部のカラー - グレー
パケット方式 - 4x/2x/1x
質量 - 約8g
ユーザーメモリ - 約600KB(電話帳約700件相当)
国際ローミング対応国 - 台湾・タイ(ただし、ジャケットの対応状況に依存)
RX420AL
アンテナ部のカラー - レッド
パケット方式 - 4x/2x/1x(W-OAM対応)
質量 - 約5g
ユーザーメモリ - 約1MB(電話帳約700件相当)
国際ローミング対応国 - 台湾・タイ(ただし、ジャケットの対応状況に依存)
RX420IN
アンテナ部のカラー - ブルー
パケット方式 - 4x/2x/1x(W-OAM対応)
質量 - 約8g
ユーザーメモリ - 約1MB(電話帳約700件相当)
国際ローミング対応国 - 台湾・タイ(ただし、ジャケットの対応状況に依存)
RX430AL
Size:52 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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