VOCALOID
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スコアエディタは歌声に表情付けを行うための各種パラメータを備えており、歌声を作成する際はこうしたパラメータを調整し、曲にあわせた加工を施すことが前提となっている[22]
歌声ライブラリ(Singer Library)
ヤマハからライセンス供与を受けた各社の担当部分で、人間の声からサンプリングした音声素片(歌声の断片)を含むデータベース。音声素片は、VOCALOID2では、2つの音(音素)が変化する際の移り変わりの部分(二音素連鎖、diphone)と、母音鼻音の伸ばし音が収録されている。例えば「さーいーたー」([sa i ta])という歌詞を合成する場合は二音素連鎖「#-s,s-a,a-i,i-t,t-a,a-#」(#は無音を示す)と母音の伸ばし音「a,i」を用い、これらを接続して歌声が作られる。これら音声素片は合成する際に入力されたメロディに合うピッチ(音高)に変換されるがより自然な合成を得られるよう歌手ライブラリには異なるピッチのものを複数用意している[注 3][24]。1ピッチあたりの二音素連鎖は日本語用ライブラリでは約500個、英語では約2500個収録している[25]。この違いは言語の特性の違いによるもので日本語の二音素連鎖が少ないのは日本語の音素の数が少ないことと、音節がほとんどの場合開音節(母音で終わる音節)であるためである。日本語の子音を含む二音素連鎖では基本的に「無音-子音」「母音-子音」「子音-母音」という組み合わせのパターンとなるが英語の場合は閉音節(子音で終わる音節)も多く存在し、「子音-子音」や「子音-無音」といったように組み合わせのパターンも多くなるため日本語用ライブラリに比べ収録しなければならない二音素連鎖の数も多くなる。またこのような違いがあるため、日本語用ライブラリで英語の歌詞を発音させるといったような使用は適さない。なお、VOCALOID3では、2までと同様の2音素連鎖だけでなく3音素連鎖(triphone)も扱えるようになっている[26]
合成エンジン(Synthesis Engine)
スコアエディタに入力された情報を元にライブラリから音声素片を選び出し周波数領域でピッチ、音色などを調整、連結して歌声に合成する。VOCALOID2では、エディタに入力された情報はVOCALOID MIDIという専用のMIDIメッセージを用いて合成エンジンへ送られる。DAW等からVOCALOID2をVSTiとして使用する場合は、製品に同梱されているVSTプラグインを用いてスコアエディタを介さず合成エンジンへ直接VOCALOID MIDIメッセージを送る形となる[27]。合成エンジンに送られたVOCALOID MIDIメッセージは合成用の楽譜情報に変換される。子音+母音の音節の場合は音符の位置と実際の発音の開始位置にずれがあり音符の位置より早く発音が始まるため、子音ではなく母音の開始位置を音符の位置と合わせるようタイミングが調整される。入力された音符とアタック、ビブラートのパラメーターを元にピッチの変化も計算されこれらの情報を元にライブラリから必要な音声素片が選択される[28]。合成する際は音声素片のピッチの変換を行うがピッチを調整しただけでは同じ音素であっても音声素片毎に音色に違いがあることから、音色の合わせこみも行う。伸ばし音部分では前後の二音素連鎖の末端部のスペクトル包絡に合わせ伸ばし音のスペクトル包絡の変化を決定し、ピークの強度を調整することで音色の突然の変化が生じないようにする。周波数領域でピッチ、音色といった調整がされた後、逆高速フーリエ変換(IFFT)などの処理を行い、合成音声が出力される。
バージョン
VOCALOID
通称「V1(ブイワン)」。2003年2月に発表され、2004年1月から2006年2月にかけて、ZERO-G、クリプトン・フューチャー・メディアの2社から、パソコン用のパッケージ5製品が発売された。後のバージョンとの間に互換性は無く、歌手ライブラリをVOCALOID2以降のエディタで使用することは出来ない。日本語と英語の2言語に対応。
ReWireに対応しており、他の楽曲制作ソフトと同期可能。DAWからVSTインストゥルメントとして、使用することも可能となっている。
VOCALOID2
2007年1月に発表され、同年6月から2011年4月にかけて、ZERO-G、クリプトン・フューチャー・メディアに加え、PowerFX、インターネット、AHS、ビープラッツ、キューンレコードの計7社から、パソコン用のパッケージ22製品が発売された。初代のVOCALOIDから合成エンジンが完全に入れ替えられ、エディタのインターフェースも一新された[29]。よりリアルな歌声が実現できるようノイズとしてカットしていた息遣いなどを原音のまま生かしており、ハスキーな歌声にも対応できるようになった[24]。日本語と英語の2言語に対応。ReWireに対応しており、他の楽曲制作ソフトと同期可能。DAWからVSTインストゥルメントとして、使用することも可能となっている。あらかじめ歌詞を入力しておきMIDIキーボードを使ってリアルタイムに歌を「演奏」することも出来る。
VOCALOID3
2011年6月に発表され[30]、同年10月より提供が開始された。従来苦手とされていた早口の表現や、音色の変化の滑らかさなどの改良が行われているという[30]。VOCALOID3では、1から2の時のような信号処理の根幹に及ぶような大きな変更ではなく、不自然な箇所を直して良くするという方向性で開発されており、ライブラリの作りは基本的にVOCALOID2と変わらないため、2用のライブラリをコンバートして使うことも可能となっている。言語は従来の「日本語」「英語」に加え、新たに「中国語」「韓国語」「スペイン語」の計5言語に対応した[31]。2013年8月以降は、Windows/Mac OS X両対応のライブラリの発売も行われており、ライブラリによってはMac OS Xで使用することも可能となった[19]。2までは、販売形態はエディタとライブラリのセットでの販売のみであったが、3ではライブラリとエディタの別売りが行われている。エディタは、「VOCALOID3 Editor」、ライブラリに付属する機能限定版の「Tiny VOCALOID3 Editor」、DAW「Cubase」上で動作する「VOCALOID Editor for Cubase」、クリプトン・フューチャー・メディア製の「Piapro Studio」が提供されている[32]
VOCALOID3 Editor
「VOCALOID Editor」、「VOCALOID2 Editor」には無かった機能として、エディタ単独でのオーディオトラックの再生や、VSTエフェクトの使用に加えて、VOCALOID3エディタ独自のJob PluginというLuaスクリプト形式のエフェクタの実装および自作等が可能となっている[31]。VOCALOID3用だけでなく、VOCALOID2用のライブラリをVOCALOID3用に変換して使うこともできる[31]。また、2まで1回しか出来なかったアンドゥとリドゥが、3では無限となった[33]。一方で、2までと異なりReWireや、VSTインストゥルメントとしての使用は出来ず、「VOCALOID3 Editor」は完全なスタンドアローン音源となっている[31]
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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