Vサイン
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2006年、アメリカ合衆国テキサス州のジョンソン宇宙センターで、宇宙探査機スターダストが持ち帰った試料が到着した際に、勝利を意味するVサインを掲げた研究員。

Vサイン(ブイサイン、英語: V sign、Unicode:U+270C ✌ .mw-parser-output span.smallcaps{font-variant:small-caps}.mw-parser-output span.smallcaps-smaller{font-size:85%}victory hand)は、人差し指中指を、指先を離すようにして伸ばし、他の指は折ったままにするジェスチャー。文化的文脈やその形をとる手の提示の仕方などによって、様々な意味をもっている。特に、第二次世界大戦中の連合軍側の陣営においては、「勝利 (victory)」を意味する「V」の字を象った仕草として広く用いられた。イギリスや、それと文化的なつながりの深い地域の人々の間では、手のひらを自分の方に向ける形でこのサインを示し、相手への敵対、挑発のジェスチャーとする。また、多くの人々は、単に数字の「2」を意味してこのサインを用いる。1960年代以降、Vサインはカウンターカルチャー運動の中に広まり、通常は手のひらを相手側に向ける形で、ピースサインとしても用いられるようになった。
使い方手のひらを自分に向けたVサインで、侮蔑の意を表している歌手ロビー・ウィリアムズ飲酒運転で逮捕され、マグショットでVサインをする?アメリカ合衆国の俳優スティーブ・マックイーン平和と友情のサインとしてVサインをする歌手リアーナ。2011年撮影。2009年、イラン大統領選挙に関連して抗議行動をする人々。

Vサインの意味合いは、ある程度までは、手がどのような位置で提示されるがによって異なってくる。

手のひらがサインをする者自身に向いている場合、すなわち、手の甲が相手に向けられる場合は、次のいずれかを意味する。

侮蔑として。この使い方は、おおむねオーストラリアアイルランドニュージーランド南アフリカ共和国イギリスなどに限定されている[1][2]

アメリカ手話における、数字の「2」。


手の甲がサインをする者自身に向いている場合、すなわち、手のひらが相手に向けられる場合は、次のいずれかを意味する。

数字の「2」。非言語コミュニケーションにおける量の表現として。

特に戦時下や、何らかの競争における「勝利 (victory)」。これは、1941年1月にベルギーの政治家ヴィクトル・ド・ラブレー(フランス語版)が、ベルギー人たちに統一のシンボルとしてこのサインを用いるよう呼びかけたことが、普及の最初の契機となった。当初はもっぱらベルギー人たちの間で用いられていたが、程なくして他の連合軍側の兵士たちもこれを真似るようになった[3]。時には、両手にこのサインを作り、それを高々と挙げることもあり、アメリカ合衆国大統領であったドワイト・D・アイゼンハワーや、それを真似たリチャード・ニクソンが、この仕草をしばしばしてみせた。

「平和 (peace)」ないし「友人/味方 (friend)」。世界各地における平和運動カウンターカルチャー運動のグループなどが用いている。1960年代にアメリカ合衆国における平和運動から広まったもの。

二指の敬礼 - ポーランドでは、一定の条件の下で、右手の人差し指と中指を揃えて伸ばす敬礼をする。また、ボーイスカウトの幼年組織であるカブスカウトでは、右手の人差し指と中指の先を広げて伸ばす敬礼をする。

アメリカ手話における、文字の「V」[4]


動きを交えて用いる場合、次のいずれかを意味する可能性がある。

エアクオート ? 両手を使い指を曲げ、手のひらを相手側に向ける[5]

この手の形は、様々な手話において多様な意味をもっており、アメリカ手話などでは手のひらを下に向けて「look (見る/凝視する)」、上に向けて「see (見える/了解する)」といった意味になる。人差し指と中指が、手話話者自身の目を指した後で誰かを指差す場合は、「私はあなたを見ている/注視している (I am watching you.)」という意味になる[6]

序数の「2番目」を意味するアメリカ手話は、手のひらを前に出してVサインを作ってから手をひねって返す[7]


侮蔑の表現として

このジェスチャーを、手のひらを自分の側に向けて侮蔑の表現として行なうことは、しばしば(中指だけを立てて手の甲を見せる)ファックサインに相当するものと見なされる。この手の形は英語では、"two-fingered salute"(二指の敬礼)、"The Longbowman Salute"(長弓の敬礼)、"the two"、"The Rods"(竿)、"The Agincourt Salute"(アジャンクールの敬礼)などと称され、さらに、スコットランド西部では "The Tongs"(トング)、オーストラリアでは the forks(フォークス)などとも呼ばれ[8]、手首や肘からVサインを突き上げる形で示されるのが一般的である。手のひらを自分の側に向けるVサインは、イングランドでは久しく侮蔑のジェスチャーであり[9]、やがてイギリスの他の地域にも普及したが、このような意味でのVサインの使用は、おおむねイギリス、アイルランド、ニュージーランド、オーストラリアの範囲に限られている[1]

このようなVサインは、特に権力に対する挑発 (defiance) や、軽蔑 (contempt)、嘲笑 (derision) を表現する[10]。このジェスチャーはアメリカ合衆国では用いられず、オーストラリアやニュージーランドでも既に古風な表現と見なされるようになっており、代わりにファックサインが用いられることが多い。

侮蔑の表現としての、手のひらを自分の側に向けるVサインの例として、1990年11月1日付のイギリスのタブロイド紙『ザ・サン』は、一面に国旗ユニオンフラッグの袖口から突き上げられたVサインの図を掲げ、その横に「お前のケツにぶち込め、ドロール (Up Yours, Delors)」と見出しを打った。『ザ・サン』は、ヨーロッパ中央政府の構想を提唱していた当時の欧州共同体 (EC) 欧州委員会委員長ジャック・ドロールに対して二本指を掲げるよう、読者に呼びかけたのである。この記事はレイシズム(人種主義)だとして批判を集めたが、当時の新聞評議会(英語版)は、『ザ・サン』紙の編集長が、英国の利益のためには卑語を乱用することも正当であると表明したのを受け、苦情を採り上げなかった[11][12]

イギリスでは一時期、「ハーヴェイ(・スミス)(a Harvey (Smith))」という呼称が、こうした侮蔑の表現としてのVサインを意味して用いられたが、これはフランスでは「カンブロンヌの言葉 (Le mot de Cambronne)」、カナダでは「トルドー敬礼 (Trudeau salute)」が、一本指を立てる同様の仕草を意味したことがあったのと同様の現象であった。この呼称は、障害飛越競技の選手であったハーヴェイ・スミス(英語版)が、1971年にヒクステッド全英飛越コース(英語版)において開催されたイギリス飛越競技ダービー (the British Show Jumping Derby) で優勝した際、テレビに映る形でVサインを行なったとして失格とされた(2日後に失格は取り消され、スミスの優勝が再確認された)ことが由来となっている[13]

ハーヴェイ・スミスは、同様に公の注目を集めることになった他の人々と同じように、勝利のサイン (a Victory sign) をしたのだと主張した[14]。また、時には外国から訪れた人々が「二指の敬礼 (two-fingered salute)」を、それが地元民にとっては不愉快なものであることを知らずにしてしまうこともあり、例えばアメリカ合衆国大統領だったジョージ・H・W・ブッシュは、1992年にオーストラリアを訪問した際、キャンベラで、アメリカ合衆国の農業助成金に対して抗議行動を行なっていた農民たちのグループに「ピースサイン」を出そうとして、結果的に侮蔑のVサインを出してしまった[15]


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