旧協定世界時 (UTC) は標準電波の報時信号を同期する国際協定に基づき1960年頃から試験的に運用され、1961年1月1日に制度を開始し、1964年1月1日から正式に採用されて1971年末まで[31][28][32]使用された。
1950年代にセシウム原子時計が実用化され、標準電波の周波数は原子周波数標準器を基準とし、時刻は地球の自転に基づく UT2 世界時を基準とする報時信号が発射されていた[33]が各国の報時機関がそれぞれ独立に発射して相互に無関係[34]だった。人工衛星の国際観測が興隆し、世界のデータを整約するため国際的な統一方法で UT2 の時刻利用が強く望まれ、1959年にアメリカ合衆国とイギリスを中心に標準電波の周波数や報時信号の同期を合議して報時信号は ±1 ms、標準周波数は ±1×10?10 を目標に同期[31]を図った。
旧協定世界時の周波数オフセットとステップ調整[35][36]年月日オフセット値 (×10?10)ステップ調整 (s)
1960?150なし
1961-01-01?150なし
1961-08-01?150+0.050
1962-01-01?130なし
1963-01-01?130なし
1963-11-01?130?0.100
1964-01-01?150なし
1964-04-01?150?0.100
1964-09-01?150?0.100
1965-01-01?150?0.100
1965-03-01?150?0.100
1965-07-01?150?0.100
1965-09-01?150?0.100
1966-01-01?300なし
1967-01-01?300なし
1968-01-01?300なし
1968-02-01?300+0.100
1969-01-01?300なし
1970-01-01?300なし
1971-01-01?300なし
1960年国際電波科学連合 (URSI) 第13回総会や1961年国際天文学連合 (IAU) 第11回総会で報時信号の国際同期に関する問題が討議され具体化され、セシウム原子振動標準の周波数 (9192631770 Hz) が公認[37][38]される。
天測航法や測地、人工衛星観測などは地球の自転に基づく世界時を要するが、物理学などは時間単位だけが必要で世界時は不適当であることから、標準電波の周波数は原子時に基づき、時刻は世界時に基づくものになり、公認されたセシウム原子の振動数を F0 とすると、周波数や秒間隔は F = F 0 × ( 1 + s ) {\displaystyle F=F_{0}\times (1+s)} で決定し F は1年間固定する。 s はオフセット値で1960年は ?150×10^?10 だった。本方式は標準時計の歩度が1年間固定され、地球自転の角速度は不規則に変動し、報時される時刻は世界時に差が生じるため世界時との差は月初に 50 ms [注釈 7]単位でステップ調整した。周波数オフセットは国際天文学連合が毎年決定することが採択された[39][38]。
本報時方式は1960年頃からアメリカとイギリスが試験的に開始し、日本、フランス、スイス、カナダなど数ヶ国が国際無線通信諮問委員会 (CCIR) や国際天文学連合による正式な採択を待たず順次実施[28]した。日本は郵政省電波研究所 (RRL) のJJYで1961年9月から実施[40][41]している。
1963年国際無線通信諮問委員会第10回総会の議決[33]後、1964年国際天文学連合第12回総会で、報時は世界時に近似するよう1年間一定の周波数オフセット(50 × n × 10?10、n は整数)とし、世界時と 0.1 秒以上の差を生じたときは月の1日0時UTに 0.1 秒のステップ調整を実施し、オフセット及び秒信号の修正の量と時期は国際報時局 (BIH)が関係天文台と協議の上で決定して報時信号を国際的に同期する、旧協定世界時 (UTC) 方式が、多くの国は勧告実施に設備と研究を要するため議論の末[41]に勧告[27][26]された。
原子周波数標準器を保有しない国々は協定世界時の保時が不可能で、西ドイツは独特の形式での報時を継続し、ソビエト連邦はステップ調整を 0.05 秒の幅で実施するなど、旧協定世界時 (UTC) の報時方式は国際的同一歩調ではなかったが、1967年国際天文学連合第13回総会で方式変更要求の意見が見られるも、利用者がようやく習熟しつつあり、ソビエト代表が 0.1 秒のステップ調整ならば同調可能と言明し、継続が決まる[42][43]。 1967年 - 1968年の第13回国際度量衡総会 (CGPM) でセシウム原子周波数標準に基づくSI秒の定義が採択され[44]、物理学や計測の関係者を中心に旧協定世界時の周波数オフセット廃止意見が増加[30]する。 旧協定世界時は運用が煩雑で1秒の刻みも一様でないなどの不都合から、1970年国際天文学連合第14回総会で旧協定世界時の大幅な改善策が決議されて周波数オフセットの廃止、閏秒の導入、協定世界時と国際原子時との差 (TAI-UTC) を整数秒とすること、少なくとも 0.1 秒精度で UT1 世界時を求めることができる情報として DUT1(UTCとUT1の差) を標準電波の報時信号に含めることなどが勧告される[12][13]。 1971年国際無線通信諮問委員会中間会議で、細部の具体策を含め現行の協定世界時が決定され、TAI-UTC を整数にする特別調整を含めて1972年1月1日0時0分0秒UTC(1972年1月1日0時0分10秒 (TAI))から実施された。閏秒調整日は1月1日または7月1日で、協定世界時は UT1 世界時と差が 0.7 秒を超えぬように国際報時局で調整・管理され、以後世界時 (UT0, UT1, UT2)、暦表時 (ET)、国際原子時が協定世界時を仲介して結ばれる[45]。 旧協定世界時のステップ調整は UT2 基準だが閏秒調整は UT1 基準である。これは UT1 が地球の自転角度そのものを示し UT2 は平滑化したもので測地や天測航法には UT1 の方がより直接的に利用できるからである[46]。 国際無線通信諮問委員会が決議した標準電波の時刻の基準は、旧協定世界時までは UT2 が基準だが現行協定世界時採択時に UTC 基準へ変更[33]された。 1973年国際天文学連合第15回総会で協定世界時の管理規則改訂が決議され、UT1-UTC の許容差を ±0.7 秒以内から ±0.950 秒へDUT1の最大値を0.9秒にとどめるために拡大する、閏秒の実施時期を追加することが勧告[47][24]される。1974年3月国際無線通信諮問委員会会議で協定世界時の運用規則(CCIR勧告460[3]、現 ITU-R勧告TF.460[4])が改訂され、UTC-UT1 の絶対値の許容限界を 0.9 秒以内に広げること、時刻調整の閏秒実施予定日を従来の協定世界時6月末および12月末を第一優先、3月末と9月末を第二優先として加えること、が1975年1月1日から実施[48]された。 1973年国際天文学連合第15回総会において、第4委員会(暦)と第31委員会(時)の共同決議第1号(1973年8月採択25)で、SI秒に基づく単一の世界的に協調された時計の時間が望まれること、協定世界時からSI秒に基づく国際原子時を得ることが一般的に可能であること、および、UTC標準電波が航法や測量で必要とされる精度の平均太陽時を直接的に提供することを考慮し、すべての国の標準時の通報のための基礎として、UTC を採用することが勧告された[24]。
協定世界時の改善
協定世界時に基づく標準時の推奨