T-2CCV_(航空機)
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T-2CCV

岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に展示されているT-2CCV

用途:CCV研究機

分類:実験用航空機

設計者:技術研究本部

製造者:三菱重工業

初飛行:1983年8月9日

生産数:1機

退役:1986年3月(試験終了)

運用状況:退役

ユニットコスト:改造費約60億円[1]

原型機:T-2
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T-2CCVは、防衛庁技術研究本部1978年昭和53年)から1985年(昭和60年)にかけて、CCV技術を得るためT-2練習機をベースに開発した実験用航空機である。三菱重工業が主契約者として設計・製造を担当した[2]
開発経緯
背景

1970年代、欧米ではCCV(Control Configured Vehicle)に関する技術が発展し、機械式ではないフライ・バイ・ワイヤ(FBW)による実用機として、F-16の試作機が1974年2月に初飛行に成功した。1978年10月には初のデジタルFBW実用機であるF-18が初飛行。ヨーロッパでも同じ頃、CCV設計を取り入れたミラージュ2000が現れた[3]。これまでの航空機は、空力、構造、エンジンの3要素から形状を選び、それを動かす操縦装置はその後に設計してきたが、3要素とともに操縦装置の機能・性能を最初から考慮して形状を選んで設計するものがCCVであり[4][2]、これにより飛行機の安定性と運動性を同時に高めることができる。当時、日本では超音速の訓練機T-2や同機をベースにした戦闘機F-1などを開発したところであり、それぞれロッド・ワイヤーや油圧式アクチュエータによる機力操縦システムを採用しており、高度な制御技術は持っていなかった。

日本においても1970年代から高度な制御技術の開発を進め、1977年にP2Vをベースにした可変特性研究機(VSA)の飛行試験が実施した[5][3]。ただし、これは一重アナログFBW方式で、後述のDLC/DSCモードを備えていたが、主として可変特性(操縦性や安定性を任意に変化させることを可能にするもの)の研究が目的で、本格的なCCV研究機ではなかった[3][6]
開発

そこで、デジタルFBWシステムとCCVに関する制御・設計技術を確立するとともに、CCV技術が航空機の運動性に与える影響を評価するため[2]、1978年度からT-2練習機 試作3号機(29-5103)をベースにT-2 CCV研究機の開発を開始した[3]。まず、1978年度にはCCVの研究に必要な技術要素、T-2をベースに求められる機体改造の検討などの調査研究が実施された[7]。また、1/18スケール模型でカナード特性などの風洞試験が行われた。1979-1980年度には初めての開発となるデジタルFBWコンピュータや制御則の設計を実施。同時に圧力分布、水平カナードのフリーフロートやエアインテーク、フラッターなどの風洞実験が行われ、設計に反映された。1980-1981年度にはアクチュエータやFBWの切替機構など、各種パーツを含めた細部設計が行われ、1980-1982年度に本体の改造に必要な構成部品やカナードの製造が行われた。詳細設計の完了後、1981年度にはテストリグの作成、それを使用したソフト・ハードの適合・作動の確認を実施した[8]

機体の設計・製作と並行して、FBW/CCVシステムに関連する様々な試験が以下の通り、実施された。フライトシミュレーション試験は、模擬視界装置を備えたシミュレーターを用いて行われた。パイロットの操縦に対するコンピュータの反応や飛行特性を評価し、制御則が作られていった[9]。実機の製作前にテスト用リグを用いて、想定通りに作動・適合するかを確認するリグ試験が行われた。テストリグは、鉄骨フレームにセンサーや配管、アクチュエータなどを設置し、実機を再現している。それに操縦装置や模擬視界装置を組み合わせた仮想コックピットを作り、CCVコントローラーやデータ処理装置などを加え、実際の部品の動作状況を確認した[9]。これは仮想シミュレータとしても使用され、FBW飛行の検討やパイロットの訓練、実機の不具合発生時のシミュレータ等に使われた。ダイナミックモックアップ試験では、T-2の前胴供試体にFBWシステムの電子機器類を搭載して、FBWシステムの実装、適合性などを確認した[10]

1981年度には必要な部品の製造や試験がほぼ終わり、1982年度にT-2練習機 試作3号機を分解してCCV研究機に改造された[8]。1983年4月8日にロールアウトし、全機地上機能試験などを実施した後、同年8月9日にカナード翼無しの状態で初飛行した[7]。その後、10月14日にカナード翼を付けた状態で初飛行。1984年3月26日に防衛庁に納入された[8]。1984年度にはカナード無し、1985年度にはカナードありの状態で防衛庁において飛行試験が行われ、1986年3月に試験が終了した[7]。その後、CCV機能は残したまま、試験機器やセンサーの撤去など原型復帰改修を行い、1987年2月2日に航空自衛隊航空実験団に返却された。テストパイロット教育で使われなくなってからは、技術的価値が高いことから航空自衛隊の保存指定航空機に選定された。2014年からは岐阜かかみがはら航空宇宙博物館で展示されている[11]
特徴 一般的なCCVの構造と6自由度制御

T-2CCVは、ベース機のT-2に三重の冗長性を持つFBWシステムを備えるとともに、各種のCCV制御モードを実現するために必要な改造を加えた研究機である[2][12]
制御モード

以下の5つの制御モードが組み込まれている[13][12]

CA(操縦性最適化)- 速度や高度などの飛行条件が変わっても、舵の重さや効きが一定とすることで、パイロットの望む操舵応答を可能とするモード。パイロットの仕事量の減少につながる。

RSS(静安定自動補償)- 空力的に機体を不安定にし、舵面の自動制御により安定させるモード。尾翼面積と抵抗の減少につながる[注 1]。水平カナードの追加により揚力中心を前方に移動させた。

MLC(旋回性向上) - 飛行状態に応じて前後縁のフラップ等を最適位置に自動制御することで、旋回時の抵抗を減らし、旋回性能を向上させるモード。

DLC(直接揚力制御) - 後縁フラップスタビレーターの操作により、縦方向の機体姿勢と飛行経路を独立して制御するモード。姿勢や速度を変更せずに揚力の発生量を直接制御する。引き起こし、上下首振り、上下遷移の3モードがある。

DSC(直接横力制御) - 垂直カナードや方向舵、フラッペロンの操作により、横方向の機体姿勢と飛行経路を独立して制御するモード。平面旋回、左右首振り、左右遷移モードがある。

DLCやDSCの使用により、機体姿勢を変えずに高度や進行方向を変えたり、進行方向を変えずに機首の向きだけを変えることもできるようになり、戦闘機としての運動性が向上する。

CCVの飛行経路変更なしの姿勢制御

CCVの姿勢変更なしの横遷移飛行


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