ソニーのノートPC「VAIO」に搭載されているSonicStage Mastering Studioなどのソフトウェアを用いることで、DSD形式の音楽をDVDメディアに書き込んだ擬似的なSACDを作成することができるので、小ロットのディスク制作には向いている。ただし、VAIOの他にこの方法で作ったDSDディスクを再生可能な機器は、一部のスーパーオーディオCDプレーヤーとPlayStation 3(スーパーオーディオCD再生非対応モデルを含む)のみである。 再生機としてはまずソニーから1999年5月21日に『SCD-1』が発売された[8][9]。 2003年11月には、ソニーからSACDを標準対応としたミニコンポ「Listen」を発売し、実売価格が4万円強からと普及価格であったものの、僅か1年半程度で終焉している。 2006年に発売されたPlayStation 3は日本国内でSACDが再生できるのは初期型である60GB/CECHA00と20GB/CECHB00のみである。ファームウェア・バージョン2.00で光デジタル音声端子からの出力が可能になった。5.1chサラウンドを収録したソフトについてはDTS5.1chサラウンド(48kHz/24bit)に変換して出力されたが、直後に出たバージョン2.01において、デジタル光出力ではリニアPCM2.0chステレオ(44.1kHz/16bit)のみ出力可能、DTS5.1chサラウンドでは出力されなくなった。ただし、HDMI端子接続ではリニアPCMに変換することで、2.0chステレオ(176.4kHz/24bit)と5.1chサラウンド(176.4kHz/24bit)のハイサンプリング&ハイビットで出力可能である。なお、DSDのビットストリーム出力には対応していない。 その後、複数の映像・音声規格が再生できるユニバーサルプレーヤーが登場し、その価格が大きく下落したため、実売2万円以下のクラスからスーパーオーディオCDの再生機を購入できる状況になってきている。 しかし、レーベルが積極的に発売しないこと、コンパクトディスク(CD)と比較して選択できる機種が限られることや、過剰なコピーガードの為にパソコンでの取り込みどころか再生すらできないこと、CD以上の特性を十分に発揮するために一定水準以上のオーディオ機器が必要なこと、多くの消費者は現行のCD(あるいはそれ以下のMP3、WMA、AAC等の圧縮音声)でも音質に不満が少ないとされていること等から、スーパーオーディオCDはCDを代替する程には普及していない。 このためSACDは、CD規格のPCM録音に満足できないハイエンドユーザーを対象とした録音フォーマットとみなされることが多い。発売されているソフトはロックやポップスから歌謡曲まで様々なジャンルあるが、クラシック音楽・ジャズなどが発売されるソフトの大部分を占める。2008年6月現在で約5300タイトルが発売されている。 2010年6月、ユニバーサル ミュージック ジャパンはSHM-CDと同じく液晶パネル用ポリカーボネート素材を用いた「SA-CD ?SHM仕様?」の発売も開始した。 DVD規格の一つであるDVD-Audioは、ハイエンドユーザーを対象としている点では、スーパーオーディオCDと競合する規格である。DVDオーディオはリニアPCM形式(非圧縮または可逆圧縮)を採用。DVDビデオとの互換性を活かして映像との融合・低価格機種への展開などが見られるが、ソフト数ではスーパーオーディオCDの方が多い。 一時はベータマックス・VHS規格の対立のような規格争いが指摘されてきたが、その後オーディオ専業メーカーを中心にスーパーオーディオCD・DVDオーディオの両規格が再生可能なユニバーサルプレーヤーが普及し、規格提唱メーカー(ソニーはスーパーオーディオCD専用、松下電器産業(テクニクスブランド。現・パナソニック)と日本ビクターはDVDオーディオ専用、パイオニア(ホームAV機器事業部。後のオンキヨーホームエンターテイメント→オンキヨーテクノロジー/ティアック)とオンキヨー(旧法人。後のオンキヨーホームエンターテイメント→オンキヨーテクノロジー/ティアック)からもそれぞれスーパーオーディオCD専用プレーヤーが発売された[注 1])以外はほぼその方向に向かった。しかしその後DVDオーディオは普及せず、SACD/CDが再生可能な機種が目立つようになってきた。 2010年代に入ると、DVDオーディオで採用されたCD-DAスペックを超えたリニアPCMやFLAC、スーパーオーディオCDで採用されたDSDが、共にインターネット経由で本格的に音楽配信されるようになり、ハイレゾリューションオーディオ媒体としての特別な優位性はなくなっている。
普及
競合規格
脚注[脚注の使い方]
注釈^ もっとも、パイオニアは当初DVDオーディオ陣営であったが、2001年以降に発売された新規機種からスーパーオーディオCD対応のDVDオーディオプレーヤーを発売している経緯がある(2008年度に発売された製品まで)。
出典^ a b 鈴木 & 前田 2001, p. 808, 3.1 基本コンセプトと規格書.
^ 三浦孝仁「『ハイレゾ、発展の10年』: ハイレゾオーディオ発展の流れ
^ 鈴木 & 前田 2001, p. 806, まえがき.
^ “Specification Books (SACD) Orders
^ a b c d e f 鈴木 & 前田 2001, p. 808, 3.2 DSD信号とディスク・バリエーション.
^ a b c d e f g h 鈴木 & 前田 2001, p. 809, 3.3 コンテンツ.
^ ⇒DV-RA1000HD
^ 『News and Information "SCD-1"』(プレスリリース)ソニー、1999年4月6日。https://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/199904/99-002/。2024年2月11日閲覧。
^ “Super Audio CD Player”. ソニー. 2024年2月11日閲覧。
参考文献
鈴木弘明、前田宗泰「音声用光ディスク」『映像情報メディア学会誌』第55巻第6号、映像情報メディア学会、2001年、doi:10.3169/itej.55.806、.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISSN 1342-6907、NAID 110003685818。