Serial_experiments_lain
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serial experiments lain
アニメ
原案
production 2nd.
監督中村隆太郎
脚本小中千昭
キャラクターデザイン岸田隆宏
音楽仲井戸‘CHABO’麗市
アニメーション制作トライアングルスタッフ
製作PIONEER LDC
放送局テレビ東京系列
放送期間1998年7月7日 - 9月29日
話数全13話
ゲーム
対応機種プレイステーション
開発元PIONEER LDC
発売元PIONEER LDC
メディアCD-ROM XA(2枚組)
プレイ人数1人
発売日1998年11月26日
レイティング[CESA] 非認定[1]
テンプレート - ノート
プロジェクトアニメ
ポータルアニメ

『serial experiments lain』(シリアルエクスペリメンツレイン)は、グラフィック+テキスト形式の雑誌連載企画・アニメ作品・ゲーム作品が同時進行・相互関連して制作されたメディアミックス作品である。1996年ごろに企画が開始され、1998年に作品が発表された。オンライン時代の集合的無意識が主なテーマであり、サイコホラー的な側面も併せ持っている。

雑誌では『AX』で1998年3月10日から11月10日まで連載、テレビアニメテレビ東京で同年7月7日から9月29日まで放送され、第2回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞した。ゲームはプレイステーション(PS)用ソフトとして同年11月26日に発売された。
作品概要

『存在は認識=意識の接続によって定義され、人はみな繋がれている。記憶はただの記録にすぎない。』という世界観のもとで繰り広げられる、14歳の少女・玲音(lain)をめぐる物語。リアルワールドとコンピュータネットワーク・ワイヤード(Wired = 繋がれたもの)には「lain」という存在が遍在し、この存在は分析心理学の創始者カール・グスタフ・ユングが提唱した“集合的無意識”の化身であった。現実世界はワイヤードを介してlainによる侵食を受けるというサイコホラー的な作品である。1990年代アンダーグラウンドなオタクカルチャーを未来的に描き直したような作風で、全作品で一貫して陰鬱とした雰囲気がある。メディアミックスの実験でもあり、媒体間の相互参照により世界観への理解が深まるような仕組みが作られている。

ゲーム版とアニメ版では、登場人物もストーリーも"lain"という存在や破滅的な傾向を除いて大きく異なる。

雑誌連載されたグラフィック+テキストは、キャラクター原案の安倍吉俊による画集『an omnipresence in wired』(オムニプレゼンス=遍在)に未掲載分を含めた完全版が収録されている。長らく絶版だったが、ワニマガジン社より『yoshitoshi ABe lain illustrations』として描き下ろし分を追加して再版された。脚本の小中千昭によるアニメ版シナリオ集『scenario experiments lain the series』(シナリオエクスペリメンツ・レイン)なども出版されており、パイオニアLDCからは、『serial experiments lain BOOTLEG』と題したデスクトップアクセサリー集も発売された。

当初、主人公の名前であるレインの英語表記は未決定で「lain」と「rain」が検討された。安倍吉俊によるスケッチなどは試験的に2種類描かれたが、結局1997年3月ごろに「lain」に決定された[2]

日本のみならず海外でもカルト的な人気を誇り、ファンコミュニティが活動を続けている[3]
テレビアニメ
概要

高度に発展したネットワーク社会から連想される、現実と区別のつかない仮想空間というよくある物語とは逆に、本作は仮想世界(wired)と区別のつかない曖昧な現実(real world)に注目する。各登場人物が語る真実も事実だという保証はない。主人公・玲音の世界は身近な人間や友人に関する内容で占められ、作品は玲音の主観の影響下にある。客観のこのような不在はネットワークコミュニケーションの性質をリアルに描いており、視聴者もlainという作品、岩倉玲音と繋がった『ネットワーク』に接続するよう仕向けられる。番組のエンドカードには、直後に放送されていた『ウェザーブレイク[注 1]を意識した、安倍吉俊によるイラストが挿入されていた(このイラストはDVDに一部、BD-BOXでは全て収録されている)。また、最終話放送後、CMの時間帯にワイヤード上の存在となった玲音が視聴者に向けて呼び掛ける映像が挿入されるなど、現実との融合を強く意識した演出が行われた。

根底には集合的無意識という考え方が導入されており、作中で遍在という言葉が頻繁に登場する。岩倉玲音自身は人の姿をした集合的無意識そのものであり、英利政美が改変を加えたワイヤードのプロトコルにより集合的無意識が意識化されることで、玲音が遍在して現実世界に影響を及ぼす様子が描かれている。最終的には玲音はワイヤードの神のような存在となるが、英利政美との戦いで親友を巻き添えにするという取り返しの付かない過ちを犯し、これ以上現実世界に危害を加えないために、世界を集合的無意識が意識化されていない時点までリセットしてしまう。ラストシーンでは玲音があらゆる人の記憶から消去され無意識化されると共に、ワイヤードのプロトコル改変も無かったことになっている。
デザイン

上田が、安倍の当時の個人ホームページに掲載されていた落書きを見て、安倍に声を掛けた。当初安倍は「怪しげだった」「そんな博打みたいな無謀な企画があっていいのか」と戦慄した[4]

安倍は「一本の線に直せないように」「線・記号にならないように」することを心掛けた。形を模索するために、上田・小中と話し合い、少しずつイメージをまとめていった。最終的には100頁のスケッチブックが11冊かかりながら、作り上げていった[4]
制作技術

放送当時はTVアニメーション制作にデジタル環境が導入されはじめた時期で、CGを売りにする極一部の作品を除いて、全面的なデジタル化には至っていなかった。lainについては、「本作はデジタルカットを含むフィルム作品である」、「TVシリーズだし、お金も無かったのでデジタルカットは市販のPCやらMacを使って」と制作者も述べている通り、業務用としては低価格なコンピュータを用いて制作したデジタルカットを、2GBのHDD(途中から4GBのHDDが登場)に詰め込めるだけ詰め込んでスタジオに持ち込み、セル画を撮影したフィルムをテレシネ変換して作成した動画に合成する方法で制作された[5](当時のCG制作ではSGIワークステーションが一般的であったが、コストは非常に高く付き、テレビアニメで使用することは難しかった)。

アナログのフィルムとデジタルカットの組み合わせは、アニメとしては過渡期の手法であるが、この手法は後に採用されなくなり、珍しい質感を持つアニメになった。デジタルカットについては、3Dモデリングによる無機的な表現が目立つ一方で、脚本の小中千昭が撮影・Macintoshで編集した手触りのある画面が使われたり、時には実写がそのまま利用されたりと、制作当時のPCで実現可能なマルチメディアを最大限に活用している。また、作業工程の最後でデジタルエフェクトを用いていたが、この点は制作当時のTVシリーズでは珍しい試みであった[5]

小中によると、放送に堪えられるクオリティの内容をパソコン上で作れるようになった始まりが1998年当時で、そこに最先端の機械好きが集まって自分でやれることを全てやったのがlainだという[6]。本作の独特なカラーと雰囲気はそうしたハッカー的な色彩の強い環境から生まれている。1998年当時制作できたデジタルカットは標準画質映像のみであり、素材の幾つかは破棄してしまっていたが、2010年のリマスター版制作では高精細度映像として作り直し、保存可能な限りの素材をLTOに保存している[7]
現実世界との対応

本作で描かれたネットとリアルの融合は現実でも進行中で、SNSの普及で個人が世界に遍在する感覚も当たり前のものとなった。この環境において、情報のやり取りが非常に便利である反面、問題も多々起きている。例えば、ネットが繋がる場所であれば瞬時にサービスを利用できるようになったものの、デマによる社会混乱や、特定個人に向けた集団的な罵詈雑言の発出や、非合法活動の増加なども起きている。この問題は作中でも詳細に語られている。

背景として、本作の制作者にコンピュータマニアが多く、理に適った道具立てを行った結果として、ワイヤード(ネット)とリアルワールドの関係性について正確な描写が行われている。まず、現実感を持たせるため、実在のコンピュータOSと、それらの発展型や改造品が数多く登場する。例えば、作中で普及しているNAVIはPCであり、玲音が手に入れるプシューケープロセッサは、1990年代に出回ったパソコンパーツであるオーバードライブプロセッサを参考にしており、後半に登場する初代iMacは本放送の開始直前に発表されたばかりの機種である。他にもAppleネタ、NeXTSTEPネタ、BeOSネタなどが随所に見られる。また、スマートフォンタブレットに相当する機器が普及し、罵詈雑言も含む雑多なメッセージがSNSで飛び交う描写が行われている[8]

AR / VRゴーグルを装着したキャラクターも随所に登場し、メタバースのようなアバターを用いたコミュニケーションも描いていた[9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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