SUPER_GT
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しかしその分ワークス競争が過激化し、コストが高騰した。そこでJGTC最終期の2003年には前部・後部フレーム構造のパイプフレーム化、前後車両軸のフラットボトム化、トランスアクスル認可、サスペンション形式及びエンジン搭載位置の自由化などにより、性能均衡を円滑にした。これにより車両のフォーミュラ化が進み、2006年、2007年と空力の制限が行われた[18]

しかし市販車モノコックでは信頼性や耐久性の不足が訴えられたこと、よりシンプルな性能均衡が求められた結果、モノコックのフルカーボン化が実施された。2009年からはフォーミュラ・ニッポンと基本仕様を共通化した、3.4L V8 NAエンジンをフロントに搭載したFR車両のみが参戦出来るようなレギュレーションとなり、以降は海外リアエンジンミッドシップエンジンの大排気量スポーツカースーパーカーは、全て特別に認められた(特認)車両として参加している。国内外メーカーの車両を独自に改造した車両や、FIA GT1車両を使用する個人チーム (プライベーター) が参加する場面は2005年を最後にほとんど無い[注 16]。2010年以降は3社とも規定に適合した車両を使用した。この規定は日産が1年前倒しのシャシー投入・1年遅れのエンジン投入、ホンダが09年も03年規定マシンを使い続けるなど、当初の目的ほどすっきりとした性能均衡にはならなかった。また、個性が薄れるという批判も見られるようになった。

車重、ホイールベース最低地上高トランスミッションなど車両性能に大きく影響を与える部分については概ね共通化されているため、メーカー間で極端に性能が偏ることは少ない[19]エアロパーツなど共通化されていない部分の自由度は極めて高く、レース毎に次々とアップデートパーツが投入されることも少なくないほど開発競争が激しく、内実はシルエットタイプカーへと変貌を遂げ、FIA GT1旧規定が消滅した2012年以降では「世界で最も速いGTカー」とも言われる[20][11]。かつては同じ陣営でも前年仕様(いわゆる型落ち)のマシンを使用し苦戦するチームも見られたが、2022年現在は少なくとも表面上はそういった事例は見られておらず、年度毎に一斉に切り替わっている。

2014年からはエンジンを除き、モノコックカーボンブレーキダンパーリアウイングなど基本部分の車両規定をDTMと統一、2012年のDTM車両規定を元にSUPER GTの独自規定を盛り込んだ仕様となった[注 17]。外観は、各メーカーが市販車の意匠を生かしたデザインとすることをGTAなどに申請して認められている[注 18]。全車が左ハンドルとなったほか、共通項目は60に上るが、各メーカーは限られた部分に開発を集中出来るというメリットもある[注 19][24]。新型はダウンフォースが2013年に比べて約30%増加しコーナリング速度がアップ、最高速度は約10kmもアップしている[注 20]。一方で、タイヤサイズが2013年よりも小さくなり、シャーシの捻れ剛性が低く、車重が軽くなり速度が増したことなども相まってタイヤへの負担が増えることも指摘されている[25][26]。但し、ラップタイムに関してはダウンフォースが向上したことで、タイヤが摩耗しても急激な落ち込みは少ないとみられている[24]。2020年からはフロントフェンダー、リアフェンダー、リアディフューザー周り等のデザインがDTMと共通になりより限られたエアロパーツのみが開発を許されている[注 21]。2020年までにDTM側でマニュファクチャラーの離脱が相次ぎ[27]、最終的にFIA GT3に移行した事から[28]、2022年現在はGT500クラスとDTMに規格上の繋がりは無い。

エンジンにはスーパーフォーミュラと共通となるガソリン2.0L 直列4気筒直噴ターボの“NRE[注 22]”を使用する[30]。形式自体は開発コンセプトを除けば市販車と同一で、近年のレースカーと市販車との技術乖離の傾向が改められた[31][32]。NREには、従来までの吸気を制限する“エアリストリクター”に代わり、エンジンに送られる燃料の上限と瞬間的な流量を制限する“燃料リストリクター”が搭載されている[29]。これにより、設定されたエンジン回転数[注 23]まで機械式の燃料ポンプで制御、設定回転に達するとF1と同様の100kg/hに燃料供給量が制限される。

燃料制限だけで吸気に制限が無いとしてリーンバーン(希薄燃焼)エンジンとすることも考えられなくはないが、近年は採用例が見られなくなっているようにあまり筋の良いエンジンではない。たとえば排気温度の上昇により、ターボチャージャーに負荷が掛かり、エンジンの耐久性も低下するというリスクがある[33]。(一般に希薄燃焼では燃焼自体による発熱量は下がるが、一方でNREのような直噴エンジンでは特に、噴射される燃料による冷却作用もあるため、燃料の量が減ると冷却も弱くなる)

今後は、如何に少ない燃料でパワーを絞り出すかという、燃焼効率向上も重要開発ポイントの一つとなる[32][34]

日産・フェアレディZ(2004年)

日産・GT-R(2011年)

日産・GT-R(2015年)

日産・Z(2022年)


トヨタ・スープラ(2005年)

レクサス・SC430(2010年)

レクサス・RC F(2014年)

レクサス・LC500(2017年)

トヨタ・GRスープラ(2020年)


ホンダ・NSX(2000年)

ホンダ・HSV-010(2013年)

ホンダ・NSX-GT(2017年)

ホンダNSX-GT Type S(2022年 - 2023年)

参戦車両メーカー車両名参戦エンジン仕様備考
日産フェアレディZ2005年 - 2007年3.0L V6 ツインターボ VQ30DETT(2005年 - 2006年)
4.5L V8 自然吸気 VK45DE(2006年 第9戦 - 2007年)GT-Rに移行
GT-R2008年 - 2013年4.5L V8 自然吸気 VK45DE(2008年 - 2009年)
3.4L V8 自然吸気 VRH34A(2010年 - 2011年 第4戦)
3.4L V8 自然吸気 VRH34B(2011年 第5戦 - 2013年)GT-R NISMO GT500に移行
GT-R NISMO GT5002014年 - 2021年2.0L 直4 直噴ターボ NR20A(2014年 - 2019年)
2.0L 直4 直噴ターボ NR20B(2020年)
2.0L 直4 直噴ターボ NR4S21(2021年)Z GT500に移行
Z GT5002022年 - 2023年2.0L 直4 直噴ターボ NR4S21Z NISMO GT500に移行
Z NISMO GT5002024年 -2.0L 直4 直噴ターボ NR4S24
トヨタスープラ2005年 - 2006年4.5L V8 自然吸気 3UZ-FESC430に段階的に移行
GRスープラ2020年 -2.0L 直4 直噴ターボ RI4AG(2014年 - 2023年)
2.0L 直4 直噴ターボ RI4BG(2024年 - )
レクサスSC4302006年 - 2013年4.5L V8 自然吸気 3UZ-FE(2006年 - 2009年)
3.4L V8 自然吸気 RV8KG(2009年 - 2013年)RC Fに移行
RC F GT5002014年 - 2016年2.0L 直4 直噴ターボ RI4AGLC500に移行
LC5002017年 - 2019年2.0L 直4 直噴ターボ RI4AGGRスープラに移行
ホンダNSX-R GT (NA型)2005年 - 2009年3.0L V6 ターボ C32B(2005年 第1戦 - 第3戦)
3.5L V6 自然吸気 C32B(2005年 第3戦 - 2008年)
3.4L V6 自然吸気 C32B(2009年)HSV-010 GTに移行
HSV-010 GT2010年 - 2013年3.4L V8 自然吸気 HR10EGNSX CONCEPT-GTに移行


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