STS-50
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STS-50コロンビアのペイロードベイ

任務種別微小重力実験
運用者NASA
COSPAR ID1992-034A
SATCAT 22000
任務期間13日19時間30分4秒
飛行距離9,200,000 km
周回数221


特性
宇宙機スペースシャトルコロンビア
着陸時重量103,814 kg
ペイロード重量12,101 kg


乗員
乗員数7
乗員リチャード・リチャーズ
ケネス・バウアーソックス
ボニー・J・ダンバー
エレン・ベイカー
カール・ミード
ローレンス・デルカス
ユージン・トリン


任務開始
打ち上げ日1992年6月25日 16:12:23(UTC)
打上げ場所ケネディ宇宙センター第39発射施設A


任務終了
着陸日1992年7月9日 11:42:27(UTC)
着陸地点NASAシャトル着陸施設33番滑走路


軌道特性
参照座標地球周回軌道
体制低軌道
近点高度302 km
遠点高度309 km
傾斜角28.5°
軌道周期90.6分


左から、ベイカー、バウアーソックス、ダンバー、ミード、トリン、デルカススペースシャトル計画« STS-49STS-46 »

STS-50は、アメリカ合衆国スペースシャトルのミッションであり、スペースシャトル・コロンビアの12回目のミッションである。ハリケーンダービー(英語版)の残した悪天候のため、エドワーズ空軍基地に着陸できず、コロンビアが初めてケネディ宇宙センターに着陸した[1][2]
乗組員

船長 - リチャード・リチャーズ
(英語版) (3度目)

操縦手 - ケネス・バウアーソックス(初)

ミッションスペシャリスト1 - ボニー・J・ダンバー (3度目)

ミッションスペシャリスト2 - エレン・ベイカー (2度目)

ミッションスペシャリスト3 - カール・ミード (2度目)

ペイロードスペシャリスト1 - ローレンス・デルカス(英語版) (唯一)

ペイロードスペシャリスト2 - ユージン・トリン(英語版) (唯一)

バックアップ

ペイロードスペシャリスト1 - ジョセフ・プラール
(初)

ペイロードスペシャリスト2 - アルバート・サッコ(初)

座席配置

座席[3]打上げ時着陸時
シート1-4はフライトデッキ、5-7はミッドデッキにある。
S1RichardsRichards
S2BowersoxBowersox
S3DunbarMeade
S4BakerBaker
S5MeadeDunbar
S6DeLucasDeLucas
S7TrinhTrinh

ミッションハイライト

スペースラブを用いた材料学、流体力学生物工学の実験を主な目的としたミッションであった。初めて滞在延長型オービタが用いられ、滞在期間の延長が可能となった。

主要ペイロードは、加圧モジュールのU.S. Microgravity Laboratory-1 (USML-1)で、初めての宇宙飛行となった。USML-1は、様々な分野でアメリカ合衆国無重力研究を進めるために計画された一連の飛行の最初のものである。行われた実験は、Crystal Growth Furnace (CGF)、Drop Physics Module (DPM)、Surface Tension Driven Convection Experiments (STDCE)、Zeolite Crystal Growth (ZCG)、Protein Crystal Growth (PCG)、Glovebox Facility (GBX)、Space Acceleration Measurement System (SAMS)、Generic Bioprocessing Apparatus (GBA)、Astroculture-1 (ASC)、Extended Duration Orbiter Medical Project (EDOMP)、Solid Surface Combustion Experiment (SSCE)である。

二次的な実験には、Investigations into Polymer Membrane Processing (IPMP)、Shuttle Amateur Radio Experiment II (SAREX II)、Ultraviolet Plume Instrument (UVPI)がある。
主な成果

フリーダム宇宙ステーション運用の基礎を築く、アメリカ合衆国のための最初の微小重力実験室の飛行を完了

流体力学、結晶成長、燃焼科学、生物科学、技術実証の5つの分野で31の微小重力実験を完了

Crystal Growth Furnace、Drop Physics Module、Surface Tension Driven Convection Experiment等、いくつかの新しい共用微小重力実験施設を設置

成果を最大化するための宇宙飛行士と地上の科学者の相互運用の効率性を実証

スペースシャトル計画で最長期間のタンパク質結晶成長を達成

成長過程の顕微鏡的観察に基づいて化学組成を変化させた反復結晶成長実験を実施

滞在延長型オービタの初めての利用と最長のスペースシャトル計画(13日19時間30分)の完了

多くの実験で使える新しいGlovebox Facilityの多機能性の実証

スペースシャトルの歴史上で最も長期間の飛行となり、コロンビアは、ほぼ14日間宇宙に滞在して、微小重力実験で集めたデータや検体とともに地球に帰還した。このミッションでは、アメリカ合衆国の初めての微小重力実験研究室(USML-1)を宇宙に運び、長期間の微小重力実験を行った。微小重力とは、地球の表面上よりも小さい重力加速度を表す。宇宙船の地球周回等の自由落下の際には、局所的な重力の効果が大きく減少し、微小重力環境を作る。

コロンビアの延長ミッションの間、科学者でもある乗組員はスペースラブ内部で作業を行い、30を超える微小重力実験や試験を行った。ミッションの成果を最大化するため、実験は時計回りで行われた。将来のスペースシャトルや宇宙ステーションフリーダムで用いるコンセプトを実証する、流体力学、結晶成長、燃焼科学、生物科学、技術実証の5つの分野の実験が行われた。
スペースラブ実験ミッション中、脚にプレチスモグラフを付けるデルカススペースラブのコンピュータ

Crystal Growth Furnace (CGF)は、微小重力での結晶成長を実験する再利用可能な施設である。1600℃までの温度で、最大6つのサンプルを自動で成長させられる。さらに、手動のサンプル交換で追加のサンプルを成長させることもできる。方向性凝固法と蒸気輸送法の2つの結晶成長法が用いられる。重力の影響のない結晶成長の組成や原子構造を分析することで、凝固の際の流体の流れと結晶成長の欠陥の相関に関する洞察を得ることができる。CGFでは、計画より3つ多い7つのサンプル286時間成長させられ、その中には2つのガリウムヒ素半導体結晶もあった。ガリウムヒ素結晶は、高速デジタル集積回路、光電子集積回路、固体レーザー等に用いられる。特別に設計された曲げやすいグローブボックスを用いてサンプルの交換に成功し、追加の実験が可能となった。

Surface Tension Driven Convection Experiment (STDCE)は、最新の装置を使用して、微小重力環境での多様な条件での液体表面の表面張力による流れに関する定量的データを取得した初めての宇宙実験である。液体表面での微妙な液体の流れを産み出すには、非常にわずかな表面温度の違いで十分である。熱キャピラリ流と呼ばれるこのような流れは、地球上の液体表面には存在する。しかし、地球上の熱キャピラリ流は、ずっと大きな浮力による流れに隠されるため、研究するのは非常に難しい。微小重力環境では、浮力による流れは大幅に減少し、熱キャピラリ流の研究が可能となる。STDCEでは、液体の曲表面での熱キャピラリ流を初めて観測し、表面張力が流体の動きの強力な原動力となっていることを示した。

Drop Physics Module (DPM)は、容器による干渉を受けずに液体の研究を可能とする。地球上の液体は、中に入れる容器の形になる。さらに、容器を作る材料が液体に化学的に混入する可能性がある。DPMは音波を利用し、チャンバの中央に液滴を保持する。このように液滴を研究することで、非線形動力学、表面張力波、表面レオロジー等の分野の基礎的な流体物理学理論を試験することができる。音波を操作することで、液滴を回転、振動、融合させたり、さらには分裂させることもできる。他の試験では、移植治療での利用が期待される、半透膜内に生細胞を封入する技術の確立のため、液滴の中に液滴がある複合液滴が初めて作られた。

グローブボックス施設は、もしかするとここ数年で導入された新しい実験装置の中で、最も多用途なものかもしれない。これにより、毒性、刺激性、感染性のものを含む、多くの異なる種類のサンプル、材料を直接触れずに扱えるようになった。グローブボックスは、クリーンなワークスペースに覗き窓がついており、操作用のグローブが組み込まれている。陰圧、濾過システム、ワークエリアにサンプルを出し入れするためのエントリードアでワークスペースの清浄さを保っている。主な用途は、タンパク質結晶の混合と成長の観察である。グローブボックスを用いて、成長の最適化のため、定期的に組成を入れ替えることが宇宙空間で初めて可能となった。グローブボックス内で行われた他の試験には、ろうそくの炎、繊維の引っ張り、粒子の分散、液体の表面対流、液体/容器の界面に関する研究が含まれていた。グローブボックスでは、16の試験とデモが行われた。また計画になかったGeneric Bioprocessing Apparatusの運用のバックアップの役割も果たした。

スペースラブで行われたその他の実験には、生体材料を扱う装置であるGeneric Bioprocessing Apparatus (GBA)がある。GBAでは、数mlの中で132の実験が行われた。この装置では、生細胞、廃棄物処理に用いられる微生物アルテミアスズメバチの卵の発達、ガン研究に用いられる医学試験モデル等が研究された。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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