STEM教育(ステムきょういく)とは、"science, technology, engineering and mathematics" すなわち科学・技術・工学・数学の教育分野を総称する語である[1]。2000年代に米国で始まった教育モデルである[2]。高等教育から初等教育・義務教育までの広い段階に関して議論される。科学技術開発の競争力向上という観点から教育政策や学校カリキュラムを論じるときに言及されることが多い。また、労働力開発や安全保障、移民政策とも関連がある[1]。 STEMという言葉の元となったのは、1990年代にアメリカ国立科学財団 (NSF)が用いはじめたSMETである[3]。SMETにはsmut(汚れ)を連想させるという指摘があり[3]、NSF理事長リタ・コールウェルの意向により2003年ごろからSTEMに切り替えられた[4]。これを受けて、2000年に創刊された学術雑誌 Journal of SMET Education は2003年に Journal of STEM Education へと改題した[5]。NSFの助成プロジェクトでSTEMの名称が使われている最初期の例としては、1997年に開始されたマサチューセッツ大学アマースト校のSTEMTEC(the Science, Technology, Engineering and Math Teacher Education Collaborative)がある[6]。 アメリカ合衆国においてSTEMという言葉が使われ始めたのは、ハイテク職種の適格者が不足しているという懸念から、教育や移民に関する政策提案が論じられる中であった。またこの語は、STEM教科を統合的に教えるカリキュラムが存在しないことへの危惧を訴えるものであった[14]。STEM分野に精通した市民を継続的に育成することは、公教育に関する政策課題の核心だと考えられている[15]。また、テキサス州から広まった用例として、STEM分野に熟練した移民に対する就労ビザ発給を論じる際にも言及されることが多い。現在では、教育の不全とセットになった熟練労働者の不足を意味する形容詞として so-called STEM jobs[16]のように用いられることもある。理工系の職種でも、組立ライン工のような非専門的な領域にはあまりこの語は用いられない。 STEMの構成分野については、アメリカ国立科学財団 (NSF)が策定するガイドラインに従っている団体が多い。NSFはSTEMの範囲を広く取っており、例えば以下の分野はすべてSTEMに含まれる[1][17]。 CSM STEM Scholars Programのような奨学金プログラムの応募条件にはNSFの定義が使われている[18]。 アメリカの組織の多くはNSFのガイドラインに定められたSTEM分野の定義を踏襲しているが、国土安全保障省(DHS)は移民受け入れ方針に関連する基準を独自に定めている[19]。2012年、DHS管轄下にある移民・関税執行局
概要
バリエーション
eSTEM (environmental STEM)
環境教育を加えたもの[7][8]。
MINT (Mathematics, Information sciences, Natural sciences, and Technology)
使用例は少ないが意味はSTEMに近い。ドイツで用いられることが多い[9]。
STEAM (Science, Technology, Engineering and Arts)
芸術分野などの教養(リベラルアーツ)要素を加えたもの[10]。
STEAM (Science, Technology, Engineering and Applied Mathematics)
応用数学に力点を置いたもの[11]。
METALS
STEAMにLogic(論理学)を加えたもの。 コロンビア大学ティーチャーズカレッジのスー・スーが導入した[12]。
GEMS (Girls in Engineering, Math, and Science)
これらの分野に女性を進出させるプログラムに対して用いられる[13]。
各国の状況
アメリカ合衆国
アメリカ国立科学財団
化学
工学
コンピュータ科学(computer science、日本語版の記事としては計算機科学と情報科学の記事を参照)
社会科学(人類学・経済学・心理学・社会学)
数理科学
生命科学
地学
物理学および天文学
STEM領域の教育・学習に関する研究
移民政策