SN 1572は、元は白色矮星と通常の恒星からなる近接連星系で、白色矮星に相手の星からチャンドラセカール限界にいたるまで物質(水素)が降着して爆発したIa型であった。一般にIa型の超新星は、かに星雲を形成したSN 1054 [注 3]のようなII型の超新星に見られる典型的ではっきりとした星雲をつくらない。この超新星の残骸は、かなりかすかな星雲としてパロマー天文台で1960年代に発見され、後に衛星ROSAT
の望遠鏡によって写真に収められた。ガスの殻は、今も約9,000 km/sで外側に向かって広がっている。また、電波天体として知られるG.120?1+1?4はSN 1572に同定されている。2004年10月、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」の記事は、SN 1572の近傍におけるG2型[注 4]の恒星の発見を報じた。この星は、ティコの星となった白色矮星に水素を流入させた相手の星であると考えられる。2005年3月に出版されたその後の研究では、「ティコG」と名付けられたこの星についてさらに詳細が明らかにされた。この星は、おそらく爆発の前には主系列星で準巨星であったが、超新星爆発の影響で質量の一部が剥ぎ取られ、外層が衝撃波加熱された。またティコGは高速で固有運動をしており、これは、この星が白色矮星の対をなしていた事の最も有力な証拠である。この星は近隣の他の星の固有運動速度よりはるかに速い136 km/sで動いており、これは、超新星の爆発によって連星の一方であった白色矮星が消滅し、ティコGが宇宙空間に放り飛ばされた結果と考えられるからである。
2008年、国立天文台ハワイ観測所、東京大学数物連携宇宙研究機構、マックスプランク天文学研究所の合同研究チームにより、超新星爆発時の光が周辺の塵へ反射する現象、いわゆる「光エコー」をすばる望遠鏡で観測した結果が発表された[5]。これにより、SN 1572のスペクトルはIa型超新星に特徴的なものであり、SN 1572がIa型の中でも標準的な光度を示す超新星爆発だったこと、そして地球からの距離は約12,000光年であることが明らかとなった。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 正常な視力の人が感知し得る最も暗い星は6等星であるから、6等以下に光度が落ちた事になる。
^ 超新星も含むが、当時は超新星の概念はまだなかった。
^ 1054年におうし座に出現した超新星。日本や中国に記録が残る。
^ 恒星を光のスペクトル分析によって分類した型の一つ。我々の太陽と同じ黄色の恒星である。
出典^ a b c d e f g h i j k l “SIMBAD Astronomical Database
表
話
編
歴
超新星
分類
Ia型
Ib・Ic型
II型 (IIP · IIL)
関連項目
近地球超新星
擬似的超新星
極超新星
クォーク新星
パルサーキック(英語版)
構造
対不安定型超新星
超新星元素合成
P過程
R過程
ガンマ線バースト
炭素爆発
原体
高光度青色変光星
ウォルフ・ライエ星
超巨星
青色
赤色
黄色
極超巨星
黄色
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残骸
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ティコ
ケプラー
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SN 2002cx
SN 2003fg
SN 2007bi
SN 2009dc
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PTF11kx
ガム星雲
G1.9+0.3残骸
研究
超新星宇宙論計画
ハイゼット超新星探索チーム
テキサス超新星捜索(英語版)
SNfactory(英語版)
超新星早期警報システム
超新星/加速探査機
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