SI基本単位の再定義_(2019年)
[Wikipedia|▼Menu]

SI基本単位の再定義(SIきほんたんいのさいていぎ、: en:2019 redefinition of the SI base units)とは、2018年の第26回国際度量衡総会で採択されたSI基本単位の根本的な再定義である。

国際度量衡委員会 (CIPM) はSI基本単位の定義を改訂する決議案を提案していた[1]。この提案は2018年11月16日に第26回国際度量衡総会(CGPM)で決議・承認された[2][3][4]。この結果、SI基本単位はそれまでの人工物による定義から全面的に解放され、より根源的な自然法則に基づく定義に移行した[5][6]。この決議に基づく国際単位系は2019年5月20日より施行されている。この日は1875年メートル条約が締結された日であり、これにちなむ世界計量記念日である。

本記事の記述は、主として国際単位系の第9版 Ver.2.01[注釈 1][7]とその日本語版[8]を基にしている。.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}旧定義と新定義における7つのSI基本単位の間の関係と、基本単位と物理定数の関係
改定の意義

かつて、度量衡としてのメートル法は、一貫性のある単位系である国際単位系(SI)の1960年の採択・発効によって大きく変化した。SIは定義された7つのSI基本単位と、SI基本単位から組立てられた20の組立単位により構成されている。これらの単位系は一貫性を持ったシステムとして構築されている[注釈 2]

SI基本単位の定義は、かつてはメートル原器キログラム原器天体の運動などに依存していた。原器類はの手による有形的存在であり、普遍的な単位を定める為に十分な「不変の存在」とは言い難い。自転周期公転周期といった天体の運動にかかわる数値も、長い時を経ていずれは変化を受ける。そこで、これまでのSIの改訂によって、たとえば、天体の運動を時間の単位)の定義から排し、メートル原器をメートル長さの単位)の定義に用いないようするなど、よりSIの理念に沿うように単位の定義の改訂を重ねてきた。

今回の国際度量衡総会による採択による新しい定義では、基本単位の導出おいて基本的な自然法則にあらわれる物理定数や特定の物質に固有の物性量の値ついて、これらを定義された固定値(不確かさを一切含まない値)としてまず定義している。そのうえで、これらの物理定数や物性値に整合するように、新しい単位の定義が定めらるようになった。

単位旧定義で参照・使用する値の数新定義で参照・使用する値の数
人工物物性値物理定数依存する単位人工物物性値物理定数依存する単位
s01 (Δν133Cs)0001 (Δν133Cs)00
m001 (c)1 (s)001 (c)1 (s)
kg1 (原器)000001 (h)2 (s, m)
A001 (μ0)3 (s, m, kg)001 (e)1 (s)
K01 (TTPW)00001 (kB)3 (s, m, kg)
mol01 (m12C)01 (kg)001 (NA)0
cd001 (Kcd)3 (s, m, kg)001 (Kcd)3 (s, m, kg)

旧定義および新定義において、それぞれの単位が定義に使用している人工物[注釈 3]、物質の物性値[注釈 4]、物理定数[注釈 5]の数を表に示した。あわせて、その定義に必要な他の単位の定義の数も示した。今回の改訂で定義値として定められている物理定数および物性値は7つあり、これらに対応するSI基本単位も7つある。

このなかで、今回大きな改訂があったもののひとつはキログラム質量の単位)の定義である。改訂前の定義には、SIのなかで唯一の有形的存在である原器(国際キログラム原器)が未だに用いられていた。今回のSI基本単位の再定義では、キログラムはプランク定数量子力学の基本的な物理定数のひとつ)を固定値とすることで定義されており、国際キログラム原器は不要となった[9]。この結果、旧定義において既に自然法則(物理定数や物性値)でより厳格化された秒やメートルなどに続き、キログラムも同じ理念のもとに普遍的な定義へと移行した。さらに、ケルビンモルでは、物性値に拠る定義を廃止し、物理定数を用いた定義へと変更された。[注釈 6]

かつてのメートル法の時代では、光速が不変だとさえ認識されていなかったが、相対性理論が十分に普及した1983年の改訂によって、定数としての光速を用いる定義へと至った。今回(2019年)の改訂では、量子力学統計力学でそれぞれ基本定数であるプランク定数ボルツマン定数等が採用され、自然科学の発展による成果がさらにSIに取り込まれることとなった。この改訂の結果として、SI基本単位のなかで特定の物質(物性値)に依存する単位は、時間を表すだけとなった。一方で、モル以外の[注釈 7]すべての単位は、秒すなわちセシウム133の物性値 (原子スペクトルの周波数)に依存することになった。SIから「物質」であるセシウムを追放することが、次なる改訂では重要な議題になるだろうとの指摘もある[10]。これまでのSIでは、相対性理論量子力学といったそれまでの科学に大きなパラダイムの変化をもたらした発見が、改訂に反映されてきた。もし、いつかSIの秒の定義が特定の物質に拠らなくなるとしたら、それは自然科学がさらなる段階に至ったときではないかとも予想されている[10]
背景と経緯

長さの単位のメートルの定義は1960年国際メートル原器から速度光速)に拠るものに置き換えられている。それ以降、SI基本単位の中で定義が人工の有形的存在に由来するものはキログラムのみとなった。年を重ねるにつれて、キログラムの定義となっている国際キログラム原器の質量に、1年で最大 20×10^?9 キログラムの変化があることが分かってきた[注釈 8][11]。これを受けた1999年の第21回 国際度量衡総会 (CGPM)で、各国の研究機関に対し、キログラムを人工物によらずに定義する方法を研究するよう要請した。

温度の計測については、2007年に測温諮問委員会から国際度量衡委員会(CIPM)にて、「温度の現行の定義では20 K以下の低温および 1300 K以上の高温では十分な計測ができない」という報告がなされた。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:70 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef