新型コロナウイルスが中国の武漢で最初に確認されたことにちなんで武漢ウイルス (Wuhan Virus) 、中国ウイルス (Chinese Virus) と呼ぶ者もいる[39][40][41][42]。WHOの規定では2015年以降、新たに発見された感染症やウイルスの正式名称に地域や人の名前などをつけることは差別や偏見を生む可能性があるとして、避けるべき慣行としている[43]。 SARSコロナウイルス2は2019年11月に中国武漢市で発生が確認され、同年12月31日に最初にWHOに報告された[44]。元々コウモリなどの野生動物が保因していたものが、それぞれ独立してヒトに伝播、ヒトへの感染能力を獲得したと考えられている[13]。 2024年現在、発生源の特定には至っていない。中国の海鮮市場から発生したという説と武漢ウイルス研究所から流出したという説が有力である[45]。 2020年1月20日、病原体を調査している中国・国家衛生健康委員会 (NHC) 専門家の鍾南山グループ長は、広東省でヒトからヒトへの感染(ヒト - ヒト感染)が確認されたと発表した[46]。新しいコロナウイルスに対する特定の治療法はないが、既存の抗ウイルス薬を流用することはできるとしている[47]。 ただし、2019年3月スペインのバルセロナ大学の研究チームがバルセロナで採取した廃水サンプルから新型コロナウイルスを検出したと発表した[48]。また、2019年の9月イタリアのミラノにある国立がん研究所の研究によると、早いものでは2019年9月の血液サンプルから新型コロナウイルスの抗体が検出された[49]。 SARSコロナウイルス2は、オルトコロナウイルス亜科(コロナウイルス)に属している。この仲間は哺乳類や鳥類に感染する非常に多数の種を含むが、人に感染症を引き起こすものだけでも、重篤な肺炎の原因となるSARSコロナウイルス (SARS-CoV) やMERSコロナウイルス (MERS-CoV)、季節性の風邪を引き起こすヒトコロナウイルス229EやヒトコロナウイルスOC43、ヒトコロナウイルスNL63、ヒトコロナウイルスHKU1などがある。SARSコロナウイルス2は、2019年にヒトに対して病原性を有する7番目のコロナウイルスとして出現したものである。 このウイルスは国際ウイルス分類委員会 (ICTV) により、SARSコロナウイルスと同じ種(の姉妹系統)と見なされており、ベータコロナウイルス
発見
分類と系統
2020年3月26日に、マレーセンザンコウからゲノムの類似度が 85 - 92% であるコロナウイルスが発見されており、これらはよりSARSコロナウイルス2の祖先に近いと考えられている[50][51]。2020年7月に、SARSコロナウイルス2が属するサルベコウイルス亜属のゲノムデータを使ったMaciej Boniらによる進化歴の解析ではコウモリウイルスのRaTG13が単一の祖先系統を共有する最も近縁のウイルスであり、SARSコロナウイルス2がコウモリサルベコウイルスから遺伝的に分岐したのは1948年、1969年、1982年と推定された[52]。
他種のコロナウイルスと比較すると、中国浙江省舟山市のコウモリから発見されたSARSウイルスに一番近く、コウモリSARSウイルス、ヒトSARSウイルス、ジャコウネコSARSウイルスとも80%近くの類似度を持つことが、香港大学微生物学科感染症専門の袁国勇(英語版)教授により報告されている[53]。 ゲノム情報SARSコロナウイルス2のゲノム配列
ゲノム配列
NCBIゲノムIDMN908947
ゲノムサイズ29,903 塩基
完了年2020
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ウイルスゲノムは29,903 塩基で、一本鎖プラス鎖RNAウイルスである[54]。2019年から2020年にかけて発生した中国武漢市でのアウトブレイクにおいて肺炎患者の核酸検査陽性患者サンプルにより、ゲノム配列が決定された[55][56][57]。