SAP_AG
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クラウドコンピューティングの分野にも注力し、SaaS分野の売上高で世界4位(2019年時点)[6]、クラウド分野総合の売上高(SaaS及びPaaS/IaaSの合計)が世界5位に位置している(2020年現在)[7]

2019年末時点に世界全体で、売上高が約3兆3,000億円[8]、従業員が約100,000人の規模である。日本法人のSAPジャパンは1992年に設立され、従業員は約1,500人である。

第二次世界大戦後に創業したドイツ企業の中で最も成功した企業の一つで、時価総額は2019年時点で約18兆円でドイツ最大の企業である[9]。2019年時点、世界190ヶ国で440,000社の顧客を抱え、経済誌フォーブズが毎年選出するフォーブズ・グローバル2000にランクインする企業のうち92%がSAPの顧客である[10][11]

SAPは「システム分析プログラム開発」を意味するドイツ語Systemanalyse und Programmentwicklungから採った社名で、1972年IBMドイツ法人を退社した5人のエンジニアによって創業された。この名前は後にSysteme, Anwendungen und Produkte in der Datenverarbeitung (資料処理における系、応用および製品) と変更されたが、2005年に会社の正式名称は単に"SAP AG" と変更された。また、2014年7月からは企業形態を欧州会社(: Societas Europaea)に変更し、社名をSAP SEと変更した[12]。俗に「サップ」と呼ばれることもあるが、正しくは「エスエイピー」または「エスアーペー」である。

広告などのキャッチコピーは「Run Simple」[13]
主要製品・サービス
基幹システムパッケージ

SAPの主な製品は、基幹システムパッケージに代表されるビジネスアプリケーション群である。SAPのシステムは、企業における会計システム、物流システム、販売システム、人事システムなどからなり、それぞれがデータ的に一元化されているためにリアルタイムな分析が可能となる。

最も有名な製品は「SAP R/3(エスエイピー・アール・スリー)」という基幹システムパッケージ製品であり、「R」はリアルタイムを意味し、「3」は三層アーキテクチャを採用していることを表している。SAP R/3以前はメインフレームSAP R/2(英語版)上で動作するソフトウェアが開発・販売されていた。後継製品として、2004年7月に出荷されたmySAP 基幹システムパッケージ2004, 2006年5月に出荷されたmySAP 基幹システムパッケージ2005があり、2006年6月にSAP 基幹システムパッケージ 6.0 (SAP ERP(英語版)) が出荷され、R/3という名前の製品は既に出荷されていない。また、2015年2月からは同社のインメモリーデータベースSAP HANAをプラットフォームに採用した次世代基幹システムパッケージであるSAP S/4HANAが提供開始されている[14]。「S」はSimpleを意味する。

機能要件に合わせてアドオン開発する場合は、SAP独自言語であるABAPを利用し開発環境であるABAPワークベンチ上で開発を行う。また、OpenSQLと呼ばれるデータベース非依存のSQL文を利用することでさまざまなデータベースに対応させるとともに、テーブルバッファによるデータのキャッシュの機能を持たせて性能を向上させている。

中小企業向けの基幹システムパッケージとして「ビジネス・ワン (Business One)」、中堅企業向けに「ビジネス・オールインワン (Business All-in-One)」が提供されている[15][16]。2007年9月19日にオンデマンド型の基幹システムパッケージソフトウェアサービス「ビジネス・バイデザイン (Business ByDesign)」を発表した[17]
業務パッケージソフト/SaaS

SAPは基幹システム以外にもCRMSCM, PLMといった幅広い分野でソリューションを提供し、大企業向けから中堅中小企業向けまで幅広くソリューションを提供している。また、オンプレミス製品依存からの脱却を目指し、クラウドサービスも積極的に展開しており、2020年にSaaS分野で売上世界3位にまで拡大した[18][19]。主要なSaaSは経費精算の「コンカー」、人材管理の「サクセスファクター」、調達管理の「アリバ」、労務管理の「フィールドグラス」、スポーツ・エンターテインメント業界向けクラウドソリューション「スポーツ・ワン」、コネクテッドカー向け分析クラウドソリューション「ヴィエクル・インサイツ」などがある[20][21][22]

CRM分野ではオンプレミス型の「SAP CRM」やSaaS型の「クラウド・フォー・カスタマー」を提供しており、2015年時点のCRM分野の売上高は、首位の米セールスフォースに続き世界2位である[23]。2018年6月にインメモリデータプラットフォームを採用した次世代CRMとして「SAP C/4HANA」を発表した。2020年にIDCによって世界小売コマースプラットフォームソフトウェアプロバイダー部門でリーダー格の一社として選出された[24]

金融機関固有業務向けのパッケージも手掛けており、銀行向けの「コア・バンキング」や「オムニチャネル・バンキング」、保険業界向けの「エスエイピー・フォー・インシュランス」なども提供している[25][26][27]
アプリケーションサーバー/SOA

当初の戦略はあまねく業務ソフトウェアを提供し、SAP製品同士であればシステム間のデータなどの整合性を担保することによって他社との競争優位を引き出していたが、昨今のサービス指向アーキテクチャ (SOA) の流行による戦略の転換を図り、2003年からはSOAに対応した「SAP NetWeaver(ネットウィーバー)」という製品を販売している。SAPはSOAをenterprise SOA(SAP NetWeaver; 登場当時はEnterprise Service Architecture (ESA) と呼ばれた)と呼称している。
DB/BI/DWH

2008年1月にビジネスインテリジェンス(BI)最大手のBusinessObjects(ビジネスオブジェクツ)社を買収し、情報分析・活用分野も強化している[28]。計画、予測、BIなどのアナリティクス機能を1つにまとめたSaaS型のソリューション「SAP Analytics Cloud(アナリティクス・クラウド)」(旧称:SAP BusinessObjects Cloud)も提供している[22]

2010年にデータベース大手Sybase(サイベース)社を買収し、リレーショナルデータベース製品「SAP Sybase Adaptive Server Enterprise(ASE)」(旧称:Sybase Adaptive Server Enterprise)や「SAP IQ」(旧称:Sybase IQ)を販売しているが[29][30][31]、2010年よりインメモリーデータベース(DB)SAP HANA(ハナ)」をリリースした。SAP HANAのリリース以降、SAPはSAP HANAを専用データベースとして採用した製品を次々とリリースしており、2015年に次世代ERP「SAP S/4HANA(エス・フォー・ハナ)」の提供を開始、2016年にデータウェアハウス(DWH)製品の「SAP BW/4HANA」をリリースした[32][14][33]。2019年にSAPはガートナー社によるマジック・クアドラントのオペレーショナルデータベース管理部門でリーダー企業の1社に選出され、総合評価で4位につけている[34]
PaaS

2013年にクラウドネイティブのWebアプリケーションモバイルアプリケーションを開発できるクラウドベースのアプリケーション開発プラットフォーム「SAP Cloud Platform」(旧称:SAP HANA Cloud Platform)の提供を開始した[35][36]。Appleとの提携に基づいた「SAP Cloud Platform SDK for iOS」やIoT活用の基盤となる「SAP Cloud Platform IoTサービス」なども提供している[37]

SAP Business Suite製品群を運用するために特化されたプライベートマネージドクラウドサービスとして「SAP HANA Enterprise Cloud」(HEC)も提供されている[38]
AI / RPA

人工知能(Artificial Intelligence)Robotic Process Automation(RPA)を活用したアプリケーションの開発も行っている[39][40]。機械学習ソリューションを開発するためのプラットフォームとして「SAP Leonardo Machine Learning」やチャットボットアプリを開発するための「SAP Conversational AI」を提供しているほか、在庫などの予測分析のための「SAP Predictive Analytics」、支払請求書と入金消込のマッチングを自動的に行う「SAP Cash Application」、ブランドマーケティングの効果を測定するための「SAP Brand Impact」などの業務アプリケーションがリリースされている[41][42]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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