S&W_M36
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S&W M36[1]M36 基本モデル
概要
種類回転式拳銃
製造国 アメリカ合衆国
設計・製造スミス&ウェッソン
性能
口径9 mm
銃身長47 mm (2インチモデル)
ライフリング6条右回り
使用弾薬.38スペシャル弾
装弾数5発
作動方式シングル/ダブルアクション
全長165 mm
重量550 g
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S&W M36は、スミス&ウェッソン(S&W)社が開発した回転式拳銃1950年の発売当初はチーフスペシャル[2]英語: Chiefs Special、チーフズ・スペシャルとも)と称されており、モデル・ナンバー制度が導入されたあとでも、通称として残っている[3]
来歴

1940年代、S&W社の技術陣は、.38スペシャル弾・5連発のポケットリボルバーの設計に着手した。当時、同社には、既に小型リボルバー用としてIフレームがあったものの、これは.38 S&W弾用のものであり、より強力な.38スペシャル弾の使用に耐えるものではなかった。このことから、Iフレームをもとに拡張して、Jフレームが設計された。そしてこのJフレームを用いた初の拳銃として開発されたのが本銃である[4][5]

この新しい設計は、1950年の国際警察長協会(IACP)の大会で公表された。この場で行われた投票に基づいて、製品名は「チーフスペシャル」と決定された[6]。なお実際にM36というモデル・ナンバーが付与されたのは1957年頃であり、それ以前の生産分については「プリM36」と通称される[5]
設計

上記のとおり、本銃ではJフレームが採用されており、5連発のシリンダーが用いられている。エジェクターロッドがやや短いため、押しこむだけでは完全に排莢されないことがある[5]。銃身下部にはそのエジェクターロッドを前方から抑える簡易的なフロントロッキングが備えられている。

基本的なトリガーメカニズムは従来の同社製リボルバーと変わらないが、ハンマースプリングに板状のリーフスプリングではなく信頼性の高い弦巻状のコイルスプリングを用いている点が特徴的である。トリガープルは、ダブルアクションでは約7キログラム、シングルアクションでは約1.6キログラムである[5]。リアサイトはフレームトップに彫られたスリットの簡易型。照準の際に上下左右の調整などは出来ないが、引っ掛かる部分が少なく、ホルスターから抜きやすい。

当初は2インチ銃身モデルしかなかったが[注 1]、1950年12月には3インチ銃身モデルが追加された[7]。また1967年には3インチ銃身モデルにヘビーバレル仕様が追加され、3インチ銃身モデルではこれが標準化した[7]

グリップも、当初は細いラウンドバットしかなかったが、1952年にはスクエアバットが追加された[7]。ただし携行性が重視されたことから、これでもグリップは比較的小さかったため、必要であればサードパーティ製のカスタムグリップに交換することもできた[7]
バージョン M36-10

本銃は1950年の発表以降、長期間にわたって生産されたことから、順次に改良が重ねられている。
プリM36
「チーフスペシャル」が正式名称だった最初期モデル。フレームは、当初は5スクリュー(ネジ5本留め)タイプであったが、後に4スクリュー(4本留め)、3スクリュー(3本留め)と変遷した。グリップとしてはラウンドとスクエアバットの二種類が生産された。また仕上げも、ブルーとニッケル仕上げの二種類があった。
M36
1957年以降の生産モデル。1962年以降は撃鉄が一部改正され、1966年以降はシリンダーラッチの厚みを増す改正が施された[3]
M36-1
1967年以降の生産モデル。3インチのヘビーバレル仕様が追加され、1975年以降はヘビーバレルが標準仕様となった。また1982年にはバレル固定用のピンが省略された[3][5]
M36-2/3
1988年以降の生産モデル。ヨークの保持機構(yoke retention system)を改正したもののうち、テーパード・バレルを採用したものがM36-2、ヘビーバレルを採用したものがM36-3である[3][5]
M36-4/5
1989年に発表された女性向けモデル。ローズウッドのグリップと刻印を施しており、レディスミス(LadySmith, LS)と称される。2インチの標準型バレル版が36-4、3インチのヘビーバレル版が36-5であるが、後者は1992年に販売終了となった[3][5]
M36-6
1989年に発表された射撃競技向けモデル。3インチのフルラグバレルを採用している[3][5]
M36-7/8
1990年に発表された射撃競技向けモデル。M36-6と比して、サイト幅を見直すとともにバレル長もわずかに短縮している。標準型バレル版が36-7、ヘビーバレル版が36-8である[3][5]
M36-9
1996年に発表された。新開発のJマグナム・フレームを採用することで、強装弾である.38スペシャル+P弾の運用に対応した。インターナルロックにも改正を加えているほか、ハンマーやトリガーに金属粉末射出成型法を導入しており、1997年からはシリンダーラッチにも導入した[3]

1999年、通常の生産ラインから外されたが、2001年、レディスミス仕様を元にインターナルキーロック[注 2]を導入したM36-10が改めて発表された。またその後も、これを元にした特別仕様が若干数販売されている[3][5]
派生型

本銃は、Jフレームの初量産銃だったこともあり、非常に多彩な派生型が開発された。
素材による差異 M60-10

コンベンショナルなM36が炭素鋼製であるのに対し、下記のような素材を採用したバリエーションがある。
アルミニウム合金
まず1951年に、全面的にアルミニウム合金製とすることで重量305グラムと驚異的な軽量化を実現したチーフスペシャル・エアウェイトが登場し、3,777丁が生産されたものの、シリンダーの強度不足から亀裂を生じる例が報告されたことから、1954年にシリンダーのみ炭素鋼製に変更して生産が再開された。M36をもとにしたモデルにはM37の番号が付与されている[3][5]
ステンレス鋼
1965年より、まずM36をもとにフレームをステンレス鋼としたM60が生産されており、これは拳銃の主要パーツをほぼ全てステンレスとした世界初の市販モデルでもあった[7]。M36と歩調を揃えてバージョンアップしてきており、1996年より生産を開始したM60-9では、Jマグナム・フレームを採用することで、.357マグナム弾の使用にも対応した[3]
スカンジウム合金
2001年に、フレームをスカンジウム添加アルミニウム合金、シリンダーをチタン製としたモデルが発表された。M60をベースとしたDA/SA仕様がM360、M640をベースとしたセンチニアル仕様がM340というモデルナンバーを付与されている[5]
撃発機構の設計による差異M642。グリップセフティは省略されている。ラッチレバーのすぐ上にはインターナルロックの鍵穴 M49
センティニアルシリーズ
(M40, M42, M&P M340, M442, M640, M642, M940, M942)
コンシールドキャリーに備えて引っ掛かりをなくすため、ハンマーをフレーム内に内蔵したダブルアクションオンリーモデル。またグリップ後面にはグリップセフティが追加されており、レモンスクイーザーと通称される。1952年にスチールフレームのセンティニアル(後にM40の番号を付与)とアルミニウム合金製のセンティニアル・エアウェイト(後にM42の番号を付与)が発表されたほか
[5]、後にスカンジウム合金製フレーム、及びマットブラックフィニッシュの施されたアルミ合金フレームをそれぞれ持つM&P M340、M442、ステンレス製としたM640およびM642、更に9x19mmパラベラム弾の使用に対応したM940およびM942も開発された[1]


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