上記の経緯より、本銃はKフレームをもとに、ヨーク(シリンダーの保持機構)部分をわずかに拡張したKターゲット・フレームを用いて設計されている。Kフレームと同様に4スクリュー(ビス4本留め)タイプであり、シリンダーも同じく6連発であるが、シリンダー長は42mm(1,67インチ)となった。銃身長は、当初は4インチのみであったが、後に2.5インチおよび6インチが追加された。リアサイトは調整可能となっており、フロントサイトは抜き撃ちに優れるランプタイプ。グリップは木製で角を落としていない末広がりの長方形のスクウェアバット型、表面処理はブルーフィニッシュとニッケルフィニッシュから選択できた[2][3]。また、M19はトラディショナルな炭素鋼製であったが、1970年には、ステンレス鋼製とし、トリガーメカニズムもフィーリングをスムーズ化したM66も発表された[4]。
なお、小型のKフレーム・リボルバーで強力な.357マグナム弾を常用すると、銃・射手ともに負担が大きいという指摘があった。これは銃自体が軽量であるため反動が強いのに加え、元々小型なKフレームのシリンダーで6発の.357マグナム弾を収めるため、フレームのサイズの割にシリンダー自体が大型となり、エジェクターロッドの位置も高くなるため、ハウジング部分に収めるスペースを確保すべく銃身の下方が削られているのが要因である。1970年代末にはNフレームよりも小さくKフレームと同等の携行性を確保しつつ、より頑丈なLフレームが開発され、1980年よりこれを採用したディスティングイッシュド・コンバットマグナム(M586/686)などが発表されている[6][7][8]。
M19は1999年に[3]、M66は2004年に生産中止となったが[4]、M66は細部のデザインが異なり、ブラックラバーグリップを標準装備した新仕様で2014年に再生産されている。 本銃は、本場アメリカの警察で多く採用されている。FBI捜査官の間でも好評を博し、後に同社のM13(S&W M10の.357マグナム弾・3インチ銃身仕様)が正式採用された[9]。 また1972年のミュンヘンオリンピック事件を受けて、大陸ヨーロッパの法執行機関では対テロ作戦を担当する特殊部隊の編成が相次いだが、創設直後のこれらの部隊は、動作の確実性を評価して、本銃を含む回転式拳銃を多用していた。1977年のルフトハンザ航空181便ハイジャック事件では、突入したGSG-9隊員が装備していたH&K P9S自動拳銃およびH&K MP5短機関銃が有名になったが、隊長のウェグナー大佐はM19を、また突入隊員の数人もM66を携行していた[10][注 1]。 日本でも、海上保安庁の特殊警備隊(SST)の前身となった関西国際空港海上警備隊(海警隊)は、4インチ銃身モデルのM19を使用していた[12]。 1996年、スコットランドのダンブレーンで発生した小学校内無差別乱射事件(en:Dunblane massacre
運用史
登場作品詳細はS&W M19に関連する作品の一覧を参照
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 狭い飛行機の機内での取り回しを重視して、多くの隊員が拳銃を携行していたものの、本作戦の経験から、拳銃では瞬間制圧力が不足であることが問題になり、GSG9はその後、MP5への依存度を高めていくことになった[11]。
出典^ 床井 1993, p. 239.
^ a b c Supica & Nahas 2007, p. 136.
^ a b c Supica & Nahas 2007, pp. 185?188.
^ a b c Supica & Nahas 2007, p. 229-231.
^ Supica & Nahas 2007, p. 135.
^ 床井 1993, p. 241.
^ Supica & Nahas 2007, pp. 346?353.
^ リボルバーマニアックス. 株式会社ホビージャパン. (2016年9月29日)
^ Bill Vanderpool (2011年8月22日). “A History of FBI Handguns