Rh因子
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Rh因子(アールエイチいんし、: Rhesusfaktor)とは、血液型を決定する因子の一つ。
種類

赤血球膜の抗原により判定される。現在は40種以上の抗原が発見されているが、輸血の際の副作用の関係でD抗原、C/c抗原、E/e抗原で判定する場合が多い。Rh因子の抗原のうちC・EとDの大文字・小文字表記はやや意味が異なり、D抗原は「ある」と大文字、「ない」と小文字表記になるが、CやEの場合は「C (E) という種類の抗原がある」と大文字、「c (e) という抗原がある」と小文字表記になる。よって大文字Dと小文字dの遺伝子を持ち合わせた場合はD抗原が作られる(体内に存在する)ので表現型はD[注 1]だが、大文字C (E) と小文字c (e) の遺伝子を持ち合わせた場合は両方作られるのでCcやEeという表現型になる[2]。この3つの抗原のタイプによって、CDe、Cdeなどのように表記する。ただし、C抗原とE抗原に対する抗体はD抗原に対する抗体と比較して免疫反応が弱く、大きな問題とはならないため、一般的には、D抗原の有無で陽性・陰性を表記する。免疫原性は D > E > c > C > e の順に強い。

ABO式と異なり自然抗体は形成されないため、血清中の抗体を検査して判定することはない。

また極まれにD以外の抗原を持たない(通常はCとc、Eとeはどちらか片方は存在する。)「?D?(バーディーバー)」や、D抗原は丸ごと存在するが量が少ない「Weak D」、D抗原のタンパク質の一部が欠損している「Partial D」という型、上に記した5つの抗原を全部持たない「Rh null(アールエイチナル)」もしくは「???(バーバーバー)」という型もある。これらの型のうちRh null型以外は定義上Rh+型になるが、実際は普通のRh+型を輸血すると、?D?型は自己が持たないC (c) やE (e) 抗原と反応してしまい、Partial D型などはDの不足分に自己にない抗原があるので輸血不可になる。このため同型同士(Weak DやPartial D型はRh?型からも輸血可能)かRh null型からの輸血が必要になるが、逆に供血者の場合はD抗原が(不完全でも)あるのでRh?型への輸血はできなくなる[3]。ちなみにRh null型はRh null型同士しか輸血ができないが、全世界でも40人程度しか確認されていないという。

日本人での頻度はCCDee (43 %)、CcDEe (38 %)、ccDEE (10 %)、ccDee (0.1 %)、CCDEE (0.05 %) の順となっている[要出典]。
検査手順

抗D血清と患者血球浮遊液を混ぜ、900?1,000 G (3400 rpm)、もしくは100?125 G (1000 rpm) で遠心して凝集の有無を見る。

試薬・追加検査D陽性D陰性、Weak D、DelPartial D直接クームス試験陽性D不適合輸血後、キメラ・モザイク
抗D4+03+以下4+部分凝集
Rhコントロール0003+0
追加検査不要D陰性確認試験(陽性ならWeak D、陰性ならD陰性、Del)他の抗D試薬との反応生食との反応を見て、陽性なら血球にIgMが結合している患者情報の確認

Weak D

抗原エピトープの量が普通よりも少ないので凝集も弱い。確定のため被凝集価測定も必要となる。
Del

抗原エピトープがWeak Dよりもさらに圧倒的に少ないので、そのため最終的に抗Dを用いた吸着解離試験でないと確定できない。
Partial D

Partial Dはモノクローナル抗Dを使用すると凝集が弱いか陰性になることがある。これは抗原エピトープの一部欠損によるもので、試薬の種類によって反応性が違う。そのため確定には複数の抗D試薬が必要となる。
直接クームス試験陽性の場合

自己抗体保有患者では、Rh判定が困難な場合があり、それがIgGかIgMかで対応が異なる。
IgG自己抗体が感作している場合

ポリクローナル抗D試薬は高蛋白なので、D抗原の有無と関係なく凝集が起きることがある。この場合は蛋白濃度の低いIgMモノクローナル抗体を使えば正常に判定できる。
IgM自己抗体が感作している場合

この場合もD抗原の有無と関係なく凝集が起きることがあるので、0.2MのDTT溶液で赤血球を処理(血球とDTT溶液を1:4で混ぜ37℃で30?45分間反応)すれば判定が可能となる。なおDTT処理でKell抗原が破壊されるため、これを調べれば処理が適切か分かる。
輸血の対応

受血者の場合、単純に抗D試薬の直接凝集反応で陽性ならD陽性、陰性ならD陰性として扱う。

供血者の場合、ポリクローナル抗Dを用いたD陰性確認試験(間接抗グロブリン法)で陰性の場合のみD陰性、それ以外はすべてD陽性として扱う。

また、前述のD抗原が少なかったり一部が欠損しているWeak DやPartial D型の場合は、受血者のときはRh0(D)(-)、供血者としてはRh0(D)(+)として扱う。[4]。D抗原を持たないRh?型の人にRh+型の血液を輸血すると、血液の凝集、溶血等のショックを起こす可能性がある。またRh?型の女性がRh+型の胎児を妊娠すると、病気・流産の原因となることがある。なお、ABO式血液型と違い、Rh?型の人はD抗原の自然抗体を持たない。そのため、Rh型不適合妊娠による胎児への影響は、第2児以降の出産かD抗原に何らかの形で感作した場合にしか起こらない。ABO式血液型不適合で起こりにくい胎児への悪影響がRh型で起こるのは、抗A抗体や抗B抗体がIgMで胎盤通過性を持たないのに対し、抗D抗体がIgGで胎盤通過性を持つからである。なお、予防のために初回出産時に抗Dグロブリン製剤を投与し、母体が抗D抗体を産生しないように予防するのが一般的である。E抗原の不適合妊娠が問題となることもある。[5]

Rh+(D抗原陽性)

Rh?(D抗原陰性)

Rh(D)免疫グロブリン (RhIg) の投与量計算
妊婦の場合

Rh(D)免疫グロブリン (RhIg) はRh(?)の妊婦がRh(+)児を出産した際に72時間以内に投与され、抗体産生を防ぐ。

RhIg1バイアル (300 μg) あたり30 mLのRh(+)胎児血球に効果があるので、例えば体重50 kg、循環血液量70 mL/kg、胎児血球が2.5 %残存しているとすると、50 kg × 70 mL/kg × 0.025 = 87.5 mLの血球が母親体内にある。


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