Renesas RAファミリは、ルネサスエレクトロニクスが開発する32ビットマイクロコントローラーのファミリ名である。RAの名称の由来は「Renesas Advanced」の頭文字からきている。 Arm Cortex-Mコアを採用したCPUと、ルネサスがSHファミリやRXファミリなどのオリジナルコアマイコンなどの長年の経験とノウハウが詰まった周辺機能を備えている。2019年10月に発表された。[1]RA2シリーズ(最大60MHz)、RA4シリーズ(最大100MHz)、RA6シリーズ(最大240MHz)、そして最上位のRA8シリーズ(最大480MHz)、さらにRA0シリーズ(最大32MHz)を追加し、全5シリーズがラインアップされている。 RAファミリの特長はルネサスの独自の周辺機能とArmアーキテクチャの融合であり、特にセキュリティに関しては自社で開発した暗号エンジンであるSecure Crypt Engine (SCE) とArmの「TrustZone for Arm v8-M」を融合し、PSAに準拠した「Trusted Firmware-M (TF-M) API」に対応することによってIoT機器のセキュリティ開発を安全かつ迅速に行えるとしている。 もう一つの特長として、オペレーティングシステムとしてFreeRTOSおよびAzure RTOSを採用したFlexible Software Package (FSP)
概要
歴史
マイクロコントローラー
2019年10月 Renesas RAファミリ発表。初期ラインナップとして5グループ(RA2A1, RA4M1, RA6M1, RA6M2, RA6M3)がリリースされる。
2020年
5月 ワイヤレス対応製品を拡充。Bluetooth Low Energy 5.0に対応するRA4W1をリリース。
10月
最高200MHz動作のCortex-M33コア、TrustZone搭載のRA6M4をリリース。
AIによる予知保全システムの実現にも対応するモータ制御用マイコンRA6T1をリリース。
12月
新たなタッチセンシング用IPを搭載するCortex-M23コアのRA2L1をリリース。
RA4シリーズで初めてCortex-M33コア、TrustZone搭載のRA4M3をリリース。
2021年
1月 超小型WLCSPパッケージをラインナップに揃える低コスト帯向けエントリー製品RA2E1リリース。
2月 100MHz動作のCortex-M33を搭載したRA4M2をリリースし、RA4シリーズを拡充。
3月 最大2MBのデュアルバンクFlash、CAN-FDやUSB-HSをサポートするRA6M5をリリース。
9月 Cortex-M33コアを搭載した製品としては初のエントリーライン製品、RA4E1とRA6E1をリリース。
10月 ファミリ最軽量マイコンとして、小ピン/小型/低消費電力のRA2E2をリリース。
12月 モータ制御用マイコン「RA6T2」グループをリリースし、RA6シリーズを拡充。
2023年
3月 RA4/RA6シリーズのエントリーライン新製品、RA4E2とRA6E2をリリース。
5月 RA4/RA6シリーズのモータ制御用マイコンの新製品、RA4T1とRA6T3をリリース。
10月 業界初Arm Cortex-M85コアを搭載したRA8シリーズの第一弾となる「RA8M1」グループをリリース。
12月 RA2シリーズのエントリーライン新製品、RA2E3をリリース
12月 RA8シリーズのグラフィックス対応新製品、RA8D1をリリース
2024年
1月 RA8シリーズのモータ制御マイコンの新製品、RA8T1をリリース
3月 RA2シリーズの新製品、RA2A2をリリース
4月 RA0シリーズの第一弾となる「RA0E1」グループをリリーズ
ソフトウェア
2019年10月 マイコンの初期ラインナップの評価用にFSPv0.8.0をリリース
2020年
3月 FSPv1.0.0をリリースし初期ラインナップの全機能に一通り対応
5月 RA4W1のBSPやBluetoothプロトコルスタックを備えるFSPv1.1.0
RA4シリーズとRA6シリーズではArm v7-Mアーキテクチャ
のArm Cortex-M4コアおよびARMv8-MアーキテクチャのArm Cortex-M33コアを採用、比較的ローエンドのシリーズであるRA2シリーズにはARMv8-MアーキテクチャのArm Cortex-M23コアを採用している。2023年10月には、RA8シリーズとして業界で初めてArm Cortex-M85を採用したマイクロコントローラがリリースされた。 RA8シリーズはRAファミリの中でも最上位に位置付けられているシリーズである。ArmのCortex-M85コアを業界で最初に採用したμコントローラで、動作周波数は最大で480MHz。MプロファイルベクタエンジンであるHeliumを搭載することで、従来のCortex-M7よりも大幅に性能向上することがうたわれている。これにより従来MPUが必要だった性能要求の厳しいアプリケーションにおいてもマイコンを使用することが可能になり、低い消費電力やコスト、短い起動時間などのマイコンの利点を享受することができる。 シリーズ製品グループCPUコア 最大動作周波数 動作電圧範囲ピン数Flash容量SRAM容量代表的な周辺機能
マイコンラインアップ
RA8シリーズ
RA8RA8M1
480MHz
1.68~3.6V動作100~224最大2MB1MBRenesas Security IP, Arm TrustZone, Octal SPI, USBHS, USBFS, イーサネット, SDHI, SCI, SPI, I2C, I3C, CAN-FD, SSI, 12bit ADC, 12bit DAC, Comparator, 各種タイマ, CEU Camera Interface
RA8D1176~224Renesas Security IP, Arm TrustZone, Octal SPI, USBHS, USBFS, イーサネット, SDHI, SCI, SPI, I2C, I3C, CAN-FD, SSI, Octal SPI, 12bit ADC, 12bit DAC, Comparator, 各種タイマ, Graphics LCDC, 2D DRW, MIPI DSI IF, CEU Camera Interface
RA8T1100~224Renesas Security IP, Arm TrustZone, USBFS, イーサネット, SDHI, SCI, SPI, I2C, I3C, CAN-FD, 12bit ADC, 12bit DAC, Comparator, 各種タイマ