R-3(ロシア語:Р-3)は、ソビエト連邦の空対空ミサイル[注 1]。開発名称はK-13またはオブイェクト300(ロシア語:К-13 Объект 300)、NATOコードネームはAA-2 アトール(Atoll)。AIM-9B サイドワインダーのリバースエンジニアリングによって開発されたミサイルと考えられており[1]、ルーマニアのA-91と中国のPL-2は、このミサイルのライセンス生産品である[2]。 金門砲戦の最中の1958年9月24日[注 2]、台湾空軍のF-86が発射したAIM-9B サイドワインダーが中国人民解放軍空軍のMiG-17に命中した。このミサイルは不発であったことから中国人民解放軍空軍によって回収され、ソビエト連邦へ送られた。後にヴィーンペル科学製造連合の主任技術者であったゲンナジー・アレクサンドロビッチ・ソコロフスキーは、「サイドワインダーはミサイル製造技術の大学であり、機械工学教育を向上させると共に我々の新型ミサイル開発へのアプローチを更新した」と述べている[1]。 2年後には、初期型であるR-3の生産が開始され、1962年には量産型であるR-3Sの生産が開始された。同年、MiG-21と共に中国に有償供与され、PL-2の開発へ続いている[3]。また、1961年より開発が開始されたセミアクティブ式ミサイルは、R-3Rとして1966年に実用化された。 ヴィーンペル設計局は、1960年代末より性能向上型K-13Mの開発に着手し、1973年にR-13Mとして制式化された。さらに、最終型となる運動性向上型のR-13M1が開発された[1]。これらに対しては、アドバンスド・アトール(Advanced Atoll)というNATOコードネームが割り当てられている。 北ベトナムのMiG-21によって使用された[4]。北ベトナム空軍は一撃離脱戦法を採っていたため、斉射の後離脱している。 中東では、第三次中東戦争および消耗戦争・第四次中東戦争・レバノン侵攻においてアラブ諸国の空軍が使用したが、優勢なイスラエル空軍の前に十分な戦果は得られなかった[注 3][5][6]。アラブ諸国が十分な戦果を上げられなかったのは、未熟なパイロットが最小有効射程を割り込んで使用したためとも考えられている。一方、イスラエルでは第三次中東戦争で鹵獲したR-3Sを評価したところ、自国製のシャフリル1よりも優秀な性能であったため、1967年12月からミラージュIII CJに装備し、以後の実戦で使用されている[7]。 要目[8]R-3SR-3RR-13МR-13М1
開発
戦歴
バリエーション
R-3(K-13)
初期型。
R-3S(K-13A、オブイェクト310)
量産型。
R-3R(K-13A、オブイェクト320)
セミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)型。
R-3U
照準訓練型(シーカーのみ)。
R-3P
発射訓練型(炸薬無し)。
R-3MV
ターゲットドローン。
R-13M(K-13M、オブイェクト380)
性能向上型。
R-13M1
R-13Mの運動性向上型。
A-91
ルーマニアのライセンス生産型。
PL-2
中国のライセンス生産型。
要目
計画番号310320380380M
採用年1962年1967年1974年1976年
最大射程(km)7.681515
最小射程(km)0.91.50.90.3
全長(mm)2,8383,417(3,120)2,8752,876
直径(mm)127
翼幅(mm)528632651
方向舵(mm)127420453
発射重量(kg)75.383.587.790.6
飛行時間(秒)215452
速度(m/秒)550
許容発射加速度(g)??3.75-6
許容旋回加速度(g)3278
弾頭破片効果弾頭11.3kgロッド式弾頭11.3kg
信管光学式 454-K電波式 Ястребレーダー式 Синица
誘導システム赤外線ホーミング(IRH)
TGS-13Kセミアクティブ・レーダー・
ホーミング(SARH; 10-20GHz)
ПАРГ-13赤外線ホーミング(IRH)
Иней 70
フロンによる冷却赤外線ホーミング(IRH)
Иней-M
フロンによる冷却
エンジンПРД-80АПРД-240
採用国
キューバ
エリトリア
北朝鮮
ベトナム
画像
R-3
R-13
R-13M
R-3 シーカー部
R-3R シーカー部
脚注[脚注の使い方]
注釈^ R-13とされる場合もあるが、これは派生型であるR-13Mなどとの混同によるものであり、R-13自体はGRAU名称4K50、NATOコードネーム SS-N-4となるSLBMの制式名称である
^ 24日は最初の実戦投入であり、不発弾となったのは28日とする説もある
^ 戦果が無かったわけではなく、ミラージュIII CJ、F-4、A-4E、ネシェルなどの撃墜は確認されている
出典^ a b c ⇒FAS.org(2012年1月22日確認)
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