Precision_Time_Protocol
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Precision Time Protocol (PTP)は、コンピュータネットワーク全体でクロックを同期させるために使用される通信プロトコルである。

Local Area Network(LAN)においてマイクロ秒以下の精度のクロック同期を達成し、測定や制御システムにも使用できるようにする[1]。PTPは現在、金融取引、携帯電話の基地局、海底音響アレイ、および正確なタイミングを必要とするが衛星ナビゲーション信号を使用できないネットワークの同期に使用されている。

PTPは当初、2002年に発行されたIEEE 1588-2002 "Standard for a Precision Clock Synchronization Protocol for Networked Measurement and Control Systems"(ネットワーク化された測定および制御システムのための精密クロック同期プロトコルの規格)において定義された。2008年に、改訂規格 IEEE 1588-2008がリリースされた。これは「PTPバージョン2」とも呼ばれ、精度や堅牢性を向上させたが、元の2002年バージョンとの下位互換性はない[2]

「IEEE 1588は、NTPGPSという2つの主要プロトコルのどちらでもうまく機能しないニッチを埋めるように設計されている。IEEE 1588は、NTPの使用で達成可能なものを超える精度を必要とするローカルシステム用に設計されている。また、各ノードでGPS受信機のコストを負担できない、またはGPS信号にアクセスできないアプリケーション向けにも設計されている。」[3]
アーキテクチャ

IEEE 1588規格は、クロック分配のための階層的マスタースレーブアーキテクチャとして定義されている。このアーキテクチャでは、時間配信システムは1つ以上の通信媒体(ネットワークセグメント)と1つ以上のクロックで構成されている。ordinary clock(通常クロック)は、単一のネットワーク接続を持つデバイスで、同期基準の発信元(マスター)または宛先(スレーブ)のいずれかである。boundary clock(境界クロック)は、複数のネットワーク接続を持ち、あるネットワークセグメント(英語版)を別のネットワークセグメントに正確に同期させることができる。システム内の各ネットワークセグメントに対して同期マスターが選択される。ネットワーク内において高精度な時刻を持つデバイスをグランドマスターに指定する[4]。グランドマスターは、そのネットワークセグメント上にあるクロックに同期情報を送信する。セグメント上に存在する境界クロックは、接続されている他のセグメントに正確な時間を中継する。

単純化PTPシステムは、単一のネットワークに接続された通常クロックからなり、境界クロックは使用されない。クロックの中からグランドマスターが選出され、他の全てのクロックはそれに直接同期する。

IEEE 1588-2008では、PTPメッセージの伝達に使用されるネットワーク機器に関連する新たな種類のクロックが導入されている。transparent clock(透過クロック)は、デバイスを通過するときにPTPメッセージを変更する。ネットワーク機器を通過するのに費やされた時間によってメッセージ内のタイムスタンプが修正される。この方式では、ネットワーク全体のパケット遅延変動を補正することで、配信の正確性が向上する。

PTPは通常、UNIX時間と同じエポック(1970年1月1日)を使用する[note 1]。UNIX時間は協定世界時(UTC)に基づいており閏秒の影響を受けるが、PTPは国際原子時(TAI)に基づいており、閏秒の影響を受けない。PTPグランドマスターは現在のUTCとTAIの差分を通知するので、受信した時間からUTCは計算できる。
プロトコルの詳細

PTPシステムにおける同期と管理は、通信媒体を介してメッセージを交換することによって行われる。PTPでは以下のメッセージタイプを使用する。

Sync, Follow_Up, Delay_Req, Delay_Resp - 通常クロックと境界クロックが使用し、クロックを同期するための時間関連の情報を通信する。

Pdelay_Req, Pdelay_Resp, Pdelay_Resp_Follow_Up - 透過クロックが、通信媒体による遅延を測定するために使用する。透過クロックとそれに関連するこれらのメッセージは、IEEE 1588-2002では使用できない。

Announce - IEEE 1588-2008の
BMCA(後述)において、クロック階層を構築してグランドマスターを選択するために使用する[note 2]

Management - PTPシステムの監視・設定・維持(ネットワーク管理)のために使用する。

Signaling - クロック間のタイムクリティカルではない通信に使用される。このメッセージはIEEE 1588-2008で導入された。

メッセージはイベント(event)メッセージと一般(general)メッセージに分類される。イベントメッセージはタイムクリティカルである。これは、送信と受信のタイムスタンプの正確さの正確さが直接クロック分配の正確さに影響するためである。Sync, Delay_Req, Pdelay_Req, Pdelay_resp はイベントメッセージである。一般メッセージは、メッセージ内のデータがPTPにとって重要であるという点でより典型的なProtocol Data Unitであるが、その送信・受信タイムスタンプは重要ではない。Announce, Follow_Up, Delay_Resp, Pdelay_Resp_Follow_Up, Management, Signalingは一般メッセージである[5]:Clause 6.4。
メッセージ転送

PTPメッセージは、メッセージの伝送にUser Datagram Protocol over Internet Protocol(UDP/IP)を使用する。IEEE 1588-2002はIPv4のみを使用する[6]:Annex Dが、IEEE 1588-2008ではIPv6でも使用できるように拡張されている[5]:Annex F。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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