国際標準化機構 (ISO) によるPDF 1.7の標準化以降、仕様の改訂はISOが預かるところとなった。アドビ独自のバージョンアップは、ベースとなるバージョン (1.7) に対する Adobe Extensions という形で行われている[42][29]。
PDFの関連規格
ISO 15929 および ISO 15930 標準 - 2001年策定
PDFを元に策定された、印刷用途を目的としたファイル形式。印刷時のデータ交換をスムーズにするため、通常のPDFで使える機能を一部制限している。
一連のISO 19005 標準 - 2005年策定
PDFを元に策定された、電子文書の長期保存を目的としたファイル形式。主に印刷目的として利用されていたPDFを、長期保存用に特化させたもの。ISO 19005 標準は特に欧州を中心に使われており、対応するソフトウェアも欧州製のものが多い。
ISO 24517 - 2008年策定
PDFを元に策定された、エンジニアリングワークフローにおける使用を目的としたファイル形式。知的権利の安全な配布やCADデータなどの複雑な3次元データなどをPDFに組み込むことを目標にしている。
PDF/H
PDF 1.7の仕様書の最終版は 2008年1月に ISO Technical Committee 171にて採択され,2008年7月1日にISO 32000-1:2008 Document management ? Portable document format ? Part 1:PDF 1.7として公開された。
ISO 32000-1:2008 はPDFの機能を全て定義した初の規格である。それ以前にISO PDF規格になったもの (PDF/A, PDF/X, 等) は特定分野に適用される物である。ISO 32000-1はAdobe PDF仕様1.0から1.6で定められた物を網羅しているが、以前のバージョンの一部の機能はアドビにより削除されており、PDF 1.7についても同様である。[5]
ISO 32000-1の文書はアドビの PDF Reference, sixth edition, Adobe Portable Document Format version 1.7, November 2006 を元にしており、ISO Technical Committee 171 (ISO/TC 171), Document management application, Subcommittee SC 2, Application issuesによるファストトラック (Fast-track procedure) 制度[注 2][47]により審査された。
ISO PDF 規格の要約 (abstract) には以下のように記述されている。:[48]ISO 32000-1:2008 は電子文書のユーザーが交換と閲覧を行うにあたり、作成した環境に依存することなく再現し、閲覧および印刷するための形式を定義する。その目的とするところはPDFファイルを作成するソフトウェア、既存のPDFファイルを閲覧およびコンテンツを画面に表示するよう解釈しユーザーと対話するソフトウェア、またその他の用途のためにPDFファイルを読み書きする各種製品の開発者に供するものである。
ISO 32000-1 の中にはアドビのプロプライエタリな仕様の部分がいくつか引用規格とされており、(Adobe Acrobat JavaScriptやXFA (XML Forms Architecture) など) ISO 32000-1[5]に準拠するためにはこれらが不可欠となっている。 新しいバージョンのPDF規格はISO/CD 32000-2 - Document management ? Portable document format ? Part 2:PDF 2.0[49]として策定され、2017年7月に公開された。[50] 新機能としては以下のようなものが紹介されている。[51]
PDF 2.0
新機能
暗号化された文書を非暗号化された文書でラップできる。すなわち、だれにでも読める表紙ページが付いたセキュアなPDF文書を作成できる
リッチメディア注釈の導入。地理情報やPRC(3Dフォーマット)のサポート
PDF/A-3にて最初に導入された、添付ファイルについての機械解釈可能なメタデータが付加できるようになった
タグ付きPDFに関する14.8章の完全な作り直し。タグセットの見直し、名前空間の導入、MathMLのサポートと発音ヒントの導入など。アクセシビリティの向上に伴いテキスト抽出や軽量デバイス向けのHTMLにコンバートするのが容易になるなど。
デジタル署名が最新の規格に適合するようアップデートされた。ユーザーにデジタル署名されたPDFの検証が可能になった。