PSTD
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COPD」とは異なります。

心的外傷後ストレス障害

分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
精神医学, 臨床心理学
ICD-10F43.1
ICD-9-CM309.81
DiseasesDB33846
MedlinePlus000925
eMedicinemed/1900
Patient UK心的外傷後ストレス障害
MeSHD013313

心的外傷後ストレス障害(しんてきがいしょうごストレスしょうがい、Post Traumatic StressDisorder、PTSD)は、命の安全が脅かされるような出来事(戦争、天災、事故、犯罪、虐待など)によって強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や、生活機能の障害をもたらしているストレス障害である[1]。症状がまだ1か月を経ていないものは急性ストレス障害といって区別する。

心的外傷トラウマ)には事故・災害時の急性トラウマと、児童虐待など繰り返し加害される慢性のトラウマがある。しかし、基本的にPTSDは戦争帰還兵の研究から生まれた診断なので、児童虐待のトラウマに診断基準が対応していないという批判が強かった。そのため、疾病及び関連保健問題の国際統計分類 (ICD) の第11版(2019年改訂)では慢性トラウマを分離し複雑性PTSDの概念を導入することとなった。

治療では、精神療法においては認知行動療法EMDRストレス管理法である[2]。成人のPTSDにおける薬物療法はSSRI系の抗うつ薬が有効であるが、中等度以上のうつ病が併存しているか、精神療法が成果を上げないあるいは利用できない場合の選択肢である[3]。日本および国際的なガイドラインにおいて、ベンゾジアゼピン系の薬剤の効果は疑問視されている[4][5]
目次

1 定義

2 症状

3 特徴と診断

3.1 記憶


4 病理学

4.1 原因部位

4.2 依存症との関連


5 治療

5.1 心理療法

5.1.1 急性ストレス期のデブリーフィング


5.2 薬物療法

5.3 医療大麻

5.4 進行中の治験


6 歴史

6.1 ヒステリー研究

6.1.1 シャルコーによる研究

6.1.2 ジャネ・サリヴァンによる研究

6.1.3 ナラティブセラピーの発生


6.2 持続エクスポージャー療法

6.3 戦闘ストレス反応

6.4 性的・家庭内暴力

6.5 PTSDの疾病概念を批判的に再検討する流れ


7 疫学

8 脚注

9 参考文献

10 関連項目

11 外部リンク

定義「精神障害#定義」も参照

精神医学的障害の一種である。

WHOによる国際疾病分類 ICD-10においては、F4の神経症性障害に分類され、その中でもF43 は「重度ストレス反応及び適応障害」に含まれ、PTSD には F43.1 が割り振られている。
症状

以下の3つの症状が、PTSDと診断するための基本的症状であり、これらの症状が、強い恐怖、無力感または戦慄を伴う出来事の後、1ヶ月以上持続している場合である[1]。1ヶ月未満の場合には急性ストレス障害 (ASD) である。一方、その出来事から6ヵ月以内に発症していることも定義づけられている。

精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状

トラウマの原因になった障害、関連する事物に対しての回避傾向。

事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わる追体験(フラッシュバック

患者が強い衝撃を受けると、精神機能はショック状態に陥り、パニックを起こす場合がある。そのため、その機能の一部を麻痺させることで一時的に現状に適応させようとする。そのため、事件前後の記憶の想起の回避・忘却する傾向、幸福感の喪失、感情鈍麻、物事に対する興味・関心の減退、建設的な未来像の喪失、身体性障害、身体運動性障害などが見られる。特に被虐待児には感情の麻痺などの症状が多く見られる。

上記の症状はいずれも、1930年代にアメリカの精神科医ハリー・スタック・サリヴァンによって定式化された。[6]
特徴と診断

診断の前提として、災害、戦闘体験、犯罪被害など強い恐怖感を伴う体験が存在することが必要である[1]。主に以下のような症状の有無により、診断がなされる。
恐怖・無力感
自分や他人の身体の保全に迫る危険や事件その人が体験、目撃をし、その人の反応が強い恐怖、無力感または戦慄に関わるものである。
心的外傷関連の刺激の回避や麻痺
心的外傷体験の想起不能や、感情の萎縮、希望や関心がなくなる、外傷に関わる人物特徴を避ける等に関わるものである。
反復的かつ侵入的、苦痛である想起
悪夢(子供の場合はっきりしない混乱が多い)やフラッシュバック、外傷を象徴するきっかけによる強い苦痛に関わるものである。
過度の覚醒
外傷体験以前になかった睡眠障害、怒りの爆発や混乱、集中困難、過度の警戒心や驚愕反応に関わるものである。

これらの症状が1か月以上持続し、社会的、精神的機能障害を起こしている状態を指す。症状が3か月未満であれば急性、3か月以上であれば慢性と診断する。大半のケースはストレス因子になる重大なショックを受けてから6か月以内に発症するが、6か月以上遅れて発症する「遅延型」も存在する。
記憶

現在から過去にさかのぼる「出来事」に対する記憶が、診断に重要である。しかしながら、
重大な「出来事」が記憶される

それほど重大でなかったが事後的に記憶が再構成される

もともとなかった「出来事」が、あたかもあったかのように出来事の記憶となる

このような3つの分類ができる点に留意する必要があろう。

なお、PTSDを発症した人の半数以上がうつ病、不安障害などを合併している。
病理学「オペラント条件づけ」も参照
原因部位

前帯状皮質が小さいと発症しやすいことを東北大学加齢医学研究所のグループが解明した。発症後眼窩前頭皮質萎縮することも判明[7]
依存症との関連

PTSDを持つ人はしばしばアルコール依存症薬物依存症といった嗜癖行動を抱えるが、それらの状態は異常事態に対する心理的外傷の反応、もしくは無自覚なまま施していた自己治療的な試み(セルフメディケーション)であると考えられている。しかし、嗜癖行動を放置するわけにはいかないので、治療はたいがい、まずその嗜癖行動を止めることから始まる。
治療

PTSDに関するエビデンスは集約されつつあり、精神療法においては認知行動療法やEMDR、ストレス管理法である[2]。成人のPTSDにおける薬物療法はSSRI系の抗うつ薬であるが、中等度以上のうつ病が併存しているか、精神療法が成果を上げないあるいは利用できない場合の選択肢である[3][8]

SSRIの種類としては、パロキセチン (パキシル)とセルトラリン(ジェイゾロフト)、フルオキセチン(プロザック、日本では未承認)などが選択肢とされる。

おそらく効果がないとされているものは、薬物療法においてはベンラファキシン(イフェクサー)であり、精神療法においてはデブリーフィングと指示的カウンセリングである。


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