短期暴露の影響度呼吸器疾患心血管疾患全死因
PM10濃度 +10μg/m3あたり
1日当たり死亡率の増加率+1.3 %+0.9 %+0.6 %
出典:WHO メタアナリシス, 2005。
PM2.5に関しては、必要な研究データが不足しているため
メタアナリシスは行われていない[1]。
粒子状物質(りゅうしじょうぶっしつ、英: particulate matter, particulates)とは、マイクロメートル (μm) の大きさの固体や液体の微粒子のことをいう。主に、風で舞い上がった土壌粒子(黄砂など)、工場や建設現場で生じる粉塵のほか、燃焼で生じた煤や排出ガス、石油からの揮発成分が大気中で変質してできる粒子などからなる。粒子状物質という呼び方は、これらを大気汚染物質として扱うときに用いる。
粒子状物質は主に人の呼吸器系に沈着して健康に影響を及ぼす。粒子の大きさによって、体内での挙動や健康影響は異なる。その影響度を推し量る測定基準として、大きさにより分類したPM10やPM2.5(日本では微小粒子状物質とも言う)、日本では浮遊粒子状物質などの指標が考案された。疫学的には、粒子状物質の濃度が高いほど呼吸器疾患や心疾患による死亡率が高くなるという有力な報告がある[2][3][1]。また、PM10や浮遊粒子状物質よりもPM2.5のほうが健康影響との相関性が高い[4]。これらに基づきアメリカ合衆国や欧州連合 (EU)、次いで世界保健機関 (WHO)、これに続けて世界各国が、PM10やPM2.5濃度の基準値を定めている[5][6]。
先進国の一部地域ではWHO指針値に近いレベルまで削減させる事に成功している一方、途上国では家庭での薪の使用に加えて都市部で自動車の使用が増大して汚染が深刻化する傾向にあり、1990 - 1995年の時点で途上国の年平均濃度は先進国の3.5倍である[7]。WHOは、PM10の濃度を70 μg/m3から30 μg/m3に減らすことができれば、世界の大気汚染に関連する死亡者年間330万人を15 %減らせるだろうとしている[8]。
分類PM10, SPM, PM2.5の分級(捕集効率)特性。SPMはPM6.5 - 7.0に相当する[9]。衛星レーダー観測による世界のエアロゾルの光学的厚さ。粒子状物質の分布に近いが、μmより大きな粒子や小さな粒子も含む。Terra衛星、2007-2011年。
粒子状物質は、一般的には大気汚染の原因となる微粒子全般をいう[10]。大きさや生成過程、各国の法令など、いくつかの分類がある。 大きさを示すマイクロメートル単位での値を付してPM10、PM2.5などが定義されている。学術文献では下付き添字でPM10、PM2.5のように書く。数字の意味について、普通、粒子径(空気動力学径、以下同)○○μm以下(WHOの定義では「○○μm未満」[7])の微粒子などと説明されるが、ある粒子径以下の微粒子を完全に捕集することは困難であるという測定技術の都合から、厳密には質量中央径 MMD[注 1] または粒子数中央径 CMD[注 2] が○○μm以下の微粒子をいう。例えばPM10は、粒子径10μmで50%の捕集効率(ろ過効率)をもつフィルターを通して採集された、粒子径の異なる微粒子のまとまりのことであり、サンプル空気の中の10μmの微粒子の半分が含まれている。また、PM10はPM2.5を含んでいる(含有率は、例えば北米では40-90%である[11]。)環境基準値として用いられる濃度(単位:マイクログラム毎立方メートル μg/m3)は、こうして採集された粒子径の異なる微粒子のまとまりを計量した値である。 環境基準が設定され始めた当初は黒煙[注 3]や総浮遊粒子状物質 (TSP[注 4]) などの基準値が採用されていた。例えば、アメリカで1971年に設定された最初の環境基準ではTSPの基準値だけが設定されていた[12]。しかし、TSPはほとんど人が吸入しない数十μmの大きな微粒子が含まれていたので、人が吸入するようなより小さな微粒子へと焦点を移し、PM10やPM2.5が新たな基準として採用されている[13][14]。この点で日本では、1972年に設定された最初の環境基準がSPM(≒PM6.5 - 7.0)であり、当初から小さな微粒子を採用していたものの、PM2.5に関しては環境基準の設定が遅く、世界で採用され始めた1997年から12年経った2009年にようやく設定されている[15]。 大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径が概ね10μm以下のもの。粒子径10μmで50%の捕集効率をもつ分粒装置を透過する微粒子。1987年にアメリカで初めて環境基準が設定され、以降世界の多くの地域で採用されて、大気汚染の指標として広く用いられている[16][17][18]。日本では、PM10は環境基準に採用されておらず、代わりに浮遊粒子状物質が採用されている。
粒子径での分類
PM10
PM2.5(微小粒子状物質)世界のPM2.5濃度の分布、2001-2006年、NASA。