この項目では、PC-9801型番の機種とその派生機種について説明しています。PC-9800シリーズ全体の概要については「PC-9800シリーズ」をご覧ください。
PC-9801シリーズは、日本電気(以下NECと表記)が開発していたパーソナルコンピュータの製品群の俗称で、一般的にはPC-9800シリーズのうち1982年(昭和57年)から1995年(平成7年)まで開発された「PC-9801」から始まる型番の製品群を指す。シリーズ全体の正式名称である「PC-9800シリーズ」と混同されることもある。
当初、PC-9800シリーズは型番のみで機種が区別されていたため、世間では「PC-9801Vシリーズ」と、型番の後ろに「シリーズ」と付けて呼ぶことで世代や形態を分類することがあった。公式で愛称が設けられるようになった後も型番で分類する慣習は残っており、1993年にシリーズ主力機のラインが「PC-9821」から始まる型番の製品群「98MATE」(俗に言うPC-9821シリーズ)へ拡張されたとき、旧機種と「PC-9801」型番を引き継いだ直接的な後継機「98FELLOW」(98PENや一部の98NOTEも含む)は「PC-9801シリーズ」として分類された[1]。
1995年(平成7年)にはWindows 95と同時に98MATE VALUESTARシリーズが発売され、廉価機の分野もPC-9821型番のシリーズに移行した。これにより1982年(昭和57年)10月から長らく続いたPC-9801型番の表記および分類はその使命を終え、それ以降の新製品のラインナップから姿を消した。 PC-9821登場前後までのPC-9800シリーズは、採用したCPU・グラフィックコントローラ及び筐体デザインの特徴により、大きく4つの世代に分類できる。 以下、各世代の機種と変遷を概観する。 1982年(昭和57年)10月13日に発表された初代機「PC-9801」(シリーズ名と区別するため「初代」「無印」とも呼ばれる)は[2]、16ビットCPU Intel 8086互換のNEC μPD8086を5MHzで駆動し、128KBのRAM (Random Access Memory)(最大640KBまで拡張可能)を搭載する。グラフィック画面解像度は640ドット×400ドット8色。当時の水準としては高精細かつ高速なグラフィック処理のために、自社製の汎用グラフィックコントローラGDC(Graphic Display Controller μPD7220)を2個、テキスト用とグラフィック用にそれぞれ使用している。テキスト用GDCに付随してテキスト表示の滑らかなスクロールを実現するカスタムチップ(μPD52611)を搭載している[3]。このモデルはPC-8800シリーズの周辺装置を流用することを考慮して設計されており、新規ユーザーは高価な8インチフロッピーディスクドライブ (FDD) か小容量の5インチ2D (320KB) FDDを別途購入する必要があった。基本構成では数字と英文字、半角カナしか表示できなかったため、日本語ワープロソフトなどを使用するには漢字ROMボードを増設する必要があり、しかもJIS第2水準はサポートされていなかった[4]。カセットテープ録音再生装置を補助記憶装置とするためのカセット・インターフェースボードとして、PC-9801-03 CMTインターフェースボードがあった[5]。数値データプロセッサintel 8087が PC-9806 として提供された[6]。8色テキストと16色グラフィックを重ねて表示した例(VMモデル以降の4096色中16色表示を使用) 初代機以降、CPUを8MHzに高速化してグラフィック画面を2画面に増強したPC-9801E、PC-9801Eと同様の変更に加えて5インチ2DD(両面倍密度倍トラック)FDDを本体に内蔵し、さらにJIS第1水準漢字ROMを標準搭載したPC-9801Fが発売された。PC-9801用に5インチ2DDインターフェースボードPC-9801-09[7]が、外付け5インチ2DDドライブとしてPC-9832-4W[8]等が用意された。
機種
8086互換CPU・GDC搭載機の世代 - PC-8800シリーズの資産を継承し、16ビット時代の地歩を築いた。この頃の筐体はその後と違い、茶色のアローラインが左向き(太い部分が右側)に走っていた。
V30CPU・GRCG搭載機の世代 - 標準的なハードウェア仕様が確立され、圧倒的なシェアを獲得した。アローラインは右向き(太い部分が左側)に変わった。
80286/80386CPU・EGC搭載機の世代 - MS-DOSの浸透と共に、爛熟期・絶頂期を迎えた。初期のものを除き、アローラインに多数の溝が入っていた。
FELLOW以降・486CPU搭載の世代 - Windows時代の乗り切りを図ったが、ついに終焉を迎えた。筐体はIDEO社によるPC-9821と同様のデザインが採用された。
初期の8086・GDCのみ搭載モデル、FDD内蔵への歩み
PC-9801 1982年(昭和57年)10月
初代PC-9801と8インチフロッピーディスクドライブ PC-9881PC-9801Fのマザーボード