PC-8800シリーズ
PC-8801(初代機)
開発元日本電気
種別パーソナルコンピューター
発売日1981年12月 (1981-12)(PC-8801)
出荷台数約94万台(1989年3月末時点)[1]
前世代ハードPC-8000シリーズ
次世代ハードPC-9800シリーズ
PC-8800シリーズは、1981年(昭和56年)から日本電気(NEC、後に日本電気ホームエレクトロニクスへ移管)が販売していた[2]、パーソナルコンピュータ「PC-8801」及びその周辺機器のシリーズ名である。1980年代当時パソコン御三家の筆頭格と謳われたシリーズの一つである。 シリーズの初代機であるPC-8801は、1981年(昭和56年)9月22日にPC-6001と同時に発表され[3]、同年12月に発売された。同じNECの8ビットパソコンであるPC-8001の上位互換機種であり、縦400ライン表示可能なビジネス用途もターゲットとした最上位機種という位置付けだった。当時は『I/O』や『マイコンBASICマガジン』などプログラム投稿雑誌やエニックスの賞金付ゲームコンテストも盛んになっていた。1982年(昭和57年)にPC-9801が発売されると、PC-8001ソフトとの両活用でホビーユースに対応した人気機種というポジションにシフトし、日本電気ホームエレクトロニクスへ移管された後に発売されたPC-8801mkIISRで、その位置づけを決定的にした[4]。 PC-8800シリーズはNECの半導体開発部門(電子デバイス事業グループパーソナルコンピュータ事業部)が開発しており、情報処理部門(情報処理事業グループ小型システム事業部)が開発した16ビットパソコンのPC-9800シリーズとは販売戦略が異なっていた[5][6]。 累計出荷台数は、1989年(平成元年)3月末時点で約94万台[1]、同年9月時点で約96万台出荷されている[注 1]。
概要
ハードウェアの特徴
基本仕様
当時のNEC社内での開発コードは「PCX-02」で[要出典]、PC-8801の前身となる機種PC-8001の仕様をほぼ全て継承しつつ、新しい機能を追加する上位互換を実現していた。以下はPC-8801及びPC-8801mkIIの仕様である。PC-8801及びPC-8801mkIIのメモリマップ
CPU μPD780C-1(Z80A 4MHz相当)
搭載メモリ容量合計184KB
RAM(メインメモリ) 64KB(4KBのテキストVRAM領域を含む)
N88-BASIC ROM 40KB
機械語モニタ ROM 8KB
N-BASIC ROM 24KB
漢字ROM(オプション、PC-8801mkIIでは標準実装)
グラフィックVRAM 48KB(16KB×RGB3プレーン)
グラフィック画面解像度(PC-8044家庭テレビ用カラーアダプタによりカラーテレビを使用可)
640×200ドット / 8色(ドット単位に指定可) 1画面
640×200ドット / モノクロ 3画面(COLOR@コマンドによりテキストキャラクター単位でカラー表示可)
640×400ドット / モノクロ 1画面(高解像度カラーディスプレイ使用時、COLOR@コマンドによりテキストキャラクター単位でカラー表示可)
テキスト表示
80文字×25行、80文字×20行、40文字×25行、40文字×20行(いずれかを選択可)
リバース、ブリンク、シークレット(キャラクタ単位に指定可)
表示領域転送には、DMAコントローラを使用し、モードごとにテキストVRAMアドレスが変更される。
BASIC
N88-BASIC
N-BASICモードに切替え可
インタフェース
モノクロCRT(コンポジット出力、ライトペン対応)
カラーCRT(RGBセパレート出力方式、DINコネクタ)
オーディオカセット(600ボー / 1200ボー)
プリンタポート(セントロニクス規格に準拠)
シリアルポート(RS-232C規格に準拠、D-sub25ピン)
ミニフロッピーディスク
起動後にLINE命令でカラー表示400ライン表示はモノクロPC-8801背面の拡張スロットPUT関数での漢字表示(緑枠は400ラインモード)
メモリ構成
搭載メモリ容量は合計184KBであり、Z80Aで直接扱えるメモリ容量(最大64KB)を越えていたため、バンク切り換えの手法が用いられた。N88-BASICの通常モードにおいて、アドレス0000H(Hは16進数を表す)から7FFFHまではN88-BASIC ROM(容量32KB)が割り当てられた。一方0000Hから7FFFHまでのメインRAMにはBASICプログラム(テキストエリア)が格納されていたが、ROMに隠れてCPUから直接アクセスできないため、任意の1KBを8000Hから83FFHまでの領域に割り当て直してアクセスする方法(テキストウィンドウ)が採られた。8400HからFFFFHまでの31KBにはメインRAMが割り当てられ、変数データやANK文字表示用メモリ、N88-DISK BASICのディスクコードなどが格納された。このメモリ構成により、当時の8ビットパソコンとしては異例の最大32KBのBASICプログラムを実行することができた。ちなみに、本来のアドレス8000Hを割り当てると、隠しメモリとして使用できた。
200ライン表示
RGBそれぞれ0%と100%の二階調を組み合わせて8色(0:黒、1:青、2:赤、3:マゼンタ、4:緑、5:シアン、6:黄色、7:白)のカラー表示を行っていた。この方式は後に登場した「アナログRGB」との比較で「デジタルRGB」と通称された[注 2]。カラーパレット切り替え機能により8種類のパレット番号(0-7)を上記の8色から選んで任意の色に対応させることができた。また、モノクロ3ページのモードも存在し、例えば1ページ目のみを表示しながら非表示となっている2ページ目に描画をすることができた。
400ライン表示
モニター出力の水平同期周波数が15kHzと24kHzに対応し、400ラインの表示が可能となった。縦横比のドットピッチ間隔がほぼ同じになったため、漢字フォントの表示でも隙間を感じないよう精細に出来るようになり、日本語表示を必要とするビジネスマシンとしても使用できるようになった。
文字表示
PC-8001と同等のANK文字表示用ハードウェアが残されており、グラフィック画面の上に合成表示が可能になっていた。フォントをハードウェア的に展開するこの仕組みは文字表示についてVRAMへのデータ転送量が軽減されるため、ANK文字は高速表示が可能だった。このような構成は後のPC-9800シリーズにも継承され、日本語表示も可能な形で実装されている。
ROMに内蔵されたソフトウェア
内蔵のROM-BASICは、N88-BASICを新たに採用した。PC-8001互換のN-BASICには、本体のモードスイッチかBASICの拡張命令(NEW ON命令)で本体を一旦リセットすることで切り替えて使用した。機械語モニタには簡易的なアセンブラと逆アセンブラの機能が含まれていたが、Z80ではなくIntel 8080の文法である。そのため、Z80にて追加された機械語命令は、逆アセンブル時に???と表示された。
キーボード
本体はキーボードと本体部分のセパレート型となり、拡張ボードを本体に内蔵できるようになっていた。キーボードはパラレル入力で、同時押しもできたが、SHIFTやCTRLなどを除いてダイナミックスキャンの回り込み防止用のダイオードは入っていない。
キーボード(オプション PC-8801-KI)
新入力方式日本語ワードプロセッサPCWORD-M[8]に同梱されているキーボード[9]。PCWORD-Mの動作に必要な増設RAMボード PC-8801-02N はPCWORD-M に同梱されている[8][9]。