P2X受容体
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ATP P2X受容体
識別子
略号P2X受容体
Pfam
PF00864
InterProIPR001429
PROSITEPDOC00932
TCDB ⇒1.A.7
OPM superfamily202
OPM protein3h9v

利用可能な蛋白質構造:
Pfamstructures
PDBRCSB PDB; ⇒PDBe; PDBj
PDBsum ⇒structure summary
PDB3h9v​ 3I5D​

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P2X受容体(P2Xじゅようたい、: P2X receptors)は、陽イオン透過性イオンチャネル内蔵型受容体であり、細胞外アデノシン三リン酸(ATP)と結合して反応する受容体である。プリン受容体(英語版)ファミリーに属する。P2X受容体はヒトのほか、マウスラットウサギニワトリゼブラフィッシュウシガエル吸虫アメーバ等、多種多様な種に存在する[1]図1 典型的なP2X受容体サブユニットの膜トポロジーを示す模式図。第1と第2の膜貫通ドメインには、それぞれTM1とTM2とラベル付けされている。図2 ゼブラシィッシュのP2X4受容体(δP2X4-B)チャネルの結晶構造。横から(左) 細胞外側から(上右) 細胞内側から(下右)(PDB: 3I5D​)
生理学的役割

P2X受容体は下記の様な多彩な生理学的機能に関与している[1][2]

心臓のリズムと収縮性(英語版)の調節[3]

血管抵抗(英語版)の調節[1]

疼痛の伝達(特に慢性疼痛[4]

射精時の精管の収縮[1]

排尿時の膀胱の収縮[5]

血小板の凝集[6]

マクロファージの活性化[7]

アポトーシス[8]

神経細胞グリア細胞の相互作用[9]

組織内の分布

P2X受容体は広く様々な動物種の組織に発現している。神経末端(英語版)のシナプス前/後、ならびに中枢神経系末梢神経系自律神経系の全体にわたるグリア細胞では、P2X受容体はシナプス伝導を制御している[1][10]。加えて、心筋骨格筋のほか、血管精管膀胱等の平滑筋で、筋収縮の開始を司っている。P2X受容体はリンパ球やマクロファージ等の白血球あるいは血小板でも発現している。一部の細胞では発現しているP2X受容体のサブタイプに偏りが見られる。P2X1受容体は平滑筋細胞に目立ち、P2X2受容体は自律神経系に広く分布している。しかし、これらは極端に偏在しているものではなく、各サブユニットの分布は重なっており、ほとんどの細胞で2つ以上のサブユニットが発現している。例えば、P2X2とP2X3は感覚神経に共に発現しており、機能的には1つのものとしてP2X2/3受容体と呼ばれる。
基本構造と命名法

P2Xをコードする遺伝子には7種類が知られており、P2X1からP2X7と呼ばれている[1][11]

サブタイプHUGO(英語版)遺伝子名遺伝子座
P2X1(英語版)P2RX1[12]17p13.3[13]
P2X2(英語版)P2RX2[14]12q24.33[15]
P2X3(英語版)P2RX3[16]11q12[17]
P2X4(英語版)P2RX4[18]12q24.32[19]
P2X5(英語版)P2RX5[20]17p13.3[21]
P2X6(英語版)P2RX6[22]22p11.21 [23]
P2X7(英語版)P2RX7[24]12q24[25]

サブユニットのトポロジーは全て共通しており、細胞膜を貫通する部位を2つ有し、大きな細胞外ループで繋がっており、C末端N末端は細胞内にある[26](図1)。N末端側にはプロテインキナーゼCのコンセンサス部位(英語版)(キナーゼでリン酸化される部位)を含んでおり、P2Xサブユニットのリン酸化が受容体の機能の本質である可能性を示唆している[27]。加えて、C末端側は変化に富んでおり、それぞれがサブユニット固有の機能の元となっている可能性が示される[28]

一般的に言うと、多くのサブユニットはホモマー(英語版)またはヘテロマー(英語版)として多量体を形成し、受容体となっており[29]、受容体は構成されるサブユニットに基づいて命名される。すなわち、P2X1のみで構成されるホモマー受容体はP2X1受容体と、P2X2とP2X3から成るヘテロマー受容体はP2X2/3と呼ばれる。一般に、P2X6サブユニットはモノマー受容体を構成しても機能せず、P2X7サブユニットはヘテロマーでは機能しないと考えられている[30][31]

初期の分子生物学やタンパク質の機能的研究では、3本のペプチドサブユニットが会合して中央にイオン透過チャネル孔が形成されたので、機能を持つP2X受容体タンパク質が三量体であることを示す強い根拠であると考えられた[32]。このことはゼブラフィッシュのP2X4受容体の三次元構造[33]X線結晶構造解析した結果からも裏付けられた[34](図2)。これらの知見は、各サブユニットの第2膜貫通ドメインがイオン透過孔を形作り、チャネルの開閉(英語版)を司っていることを示している[35]

P2X受容体の構造と活性の相関は多くの研究の主題となり、その結果、ATP結合、イオン透過性、孔拡大、感受性低下を担う部位が特定された[36][37]
活性化とチャネル開口

P2Xの活性化には3分子のATPが必要であると考えられ、チャネル孔の開口には3つのサブユニットのそれぞれにATPが結合する必要があると思われていたが、その後、ATPは3つのサブユニットの境界部に結合することが判明した[38][39]。ATPがP2X受容体の細胞外ループに結合すると、イオンチャネルのコンフォメーションの変化を引き起こし、イオン透過口を開口させる。最も受け入れられているチャネル開口のメカニズムは、第2膜貫通ドメイン(TM2)螺旋構造の回転と解離であり、3つのTM2が広がったその側面(孔)をNa+Ca2+といった陽イオンが通過すると思われる[40][41]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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