4項目目以後については確認されていない。地球外物質の落下がP-T境界の大絶滅の直接原因となった可能性は今のところ高くない。
絶滅からの生物多様性回復の遅れP-T境界後の三畳紀の陸地に広範に繁殖したミズニラ類の現生種(ミズニラ Isoetes japonica)
過去のすべての大絶滅事件の後には、絶滅した生物種に代わって次世代の生物が繁栄して生物多様性が回復した。たとえばK-Pg境界では恐竜に代表される大型爬虫類のほとんどが絶滅した後、数十万年[64][65]で哺乳類や鳥類が多様性をもたらした。P-T境界において生物多様性の回復は非常に遅れ[66]、400万年後においても種の数が回復せず、本格的に回復したのは約1000万年後[64]である。生物多様性の回復が遅れた原因は、P-T境界後も引き続き地球環境が生物の生存に対して厳しい条件にあった可能性が考えられる[67]。 アメリカのテキサス州のペルム紀の海洋地層では底生生物数千種、そのうち巻貝が数百種が確認されているが、ユタ州の砂岩・石灰岩地帯で採取される大絶滅後の三畳紀初期の地層には底生の生物22属、巻き貝化石の種類は9-10種類しか見つかっていない[68][69]。また世界各地の三畳紀初期の地層には二枚貝の「クラライア」や腕足類の「リンギュラ」のみが数百万以上かたまって見つかる場合も多い[70]。この2種類は通常は低酸素条件下に生息する生物で、当時の浅海は引き続き低酸素状態であった可能性が示唆されている[71]。さらに上記スーパーアノキシアがP-T境界後も約1000万年間継続していることと整合している[72]。 またクラライアやリンギュラの同一種は、ユタ州、北イタリア、イラン、中国南部、日本でも三畳紀初頭の化石の主体として確認されており[73]、この期間は種の多様性が著しく低下していた。クラライアやリンギュラは他の生物が出現し始める前期三畳紀の終わりにはまれにしか見つからなくなる[74]。 ストロマトライトは原生代に繁栄した微生物群集によって構築された堆積岩でありカンブリア紀以後姿を消していたが、三畳紀初頭の海洋で広範囲に分布していた。ストロマトライトは現在でもオーストラリアのシャーク湾等で見ることができるが、捕食者に対する防御に欠けるため他の生物が生息できない条件[75]で生きている。この三畳紀初頭のストロマトライトの化石がドイツ[76]・アメリカ西部・トルコ・グリーンランド・中国南部・イラン・日本で見つかっており、400から500万年の間浅海で繁栄していた[77]。この期間の海洋においてストロマトライトを捕食する生物が激減していたと考えられる。 上記のように前期三畳紀の地層からは今のところ石炭が見つかっていない。石炭の元となる泥炭地の植物が激減したと思われる[78]。オーストラリアの三畳紀初頭の地層からは小さいミズニラ、背の低いヒカゲノカズラ、種子シダ、トクサ、少数の針葉樹が見つかっている。特にミズニラ類のアイソエステは13の新種が前期三畳紀の湿地・氾濫原・砂漠などに広がった。当時熱帯に位置していたヨーロッパでもミズニラはヒカゲノカズラとともに主要な植物であった。これら前期三畳紀に特有な植物から中生代を代表する針葉樹に植生が変るのはオーストラリアとヨーロッパでは中期三畳紀の始め、中国では中期三畳紀の後半であった[79]。 岐阜県各務原市と愛知県犬山市の県境、岐阜県大垣市赤坂、京都府福知山市、徳島県天神丸、高知県伊野町、愛媛県東宇和郡城川町、大分県津久見市佐伯市、宮崎県西臼杵郡高千穂町上村にある[80][81][82][83]。 古生代中生代新生代 カ .P-T境界.K-Pg境界.
化石として見つかる種の数が少ない
ストロマトライトの繁栄
植物の状況
日本国内におけるP-T境界
犬山 美濃帯 黒色チャート 黒色有機質泥岩
赤坂 石灰岩 5mm 酸性凝灰岩
福知山 丹波帯 チャート
天神丸 秩父帯 チャート
伊野町 秩父帯 チャート
佐伯 秩父帯
城川 ドロマイト
上村 秩父帯 ドロマイト 1?3mm 淡緑色粘土層
顕生代の内訳のグラフ地質時代区分表は地質時代を参照
上段:左から、古生代、中生代、新生代を示している。
下段:カンブリア紀から第四紀までを紀ごとに示している。(右端の第四紀は見えにくい可能性がある。)
古
新
ン
ブ
リ
ア
紀オ
ル
ド
ビ
ス
紀シ
ル
ル
紀
デ
ボ
ン
紀
石
炭
紀
ペ
ル
ム
紀
(P)三
畳
紀
(T)ジ
ュ
ラ
紀
白
亜
紀
(K)古
第
三
紀
(Pg)新
第
三
紀
第
四
紀
脚注[脚注の使い方]^ 三畳紀の始まりはコノドントの種ヒンデオダス・パルヴスの化石で規定される、「大絶滅」P279
^ 「大絶滅」P278
^ シカゴ大学のセプコスキの計算では最大96%の種が絶滅した。「生命と地球の歴史」P137
^ 「大絶滅」P8
^ 「生命と地球の歴史」P137
^ a b 「大絶滅」P153
^ 「生命と地球の共進化」P207
^ a b 「大絶滅」P10
^ Stanley,S.M., and X.Yang.1994."A double mass extinction at the end of the Paleozoic era."Science 266:1340-44
^ 「生命と地球の共進化」P213
^ この地層はペルム紀末から三畳紀にかけての国際模式層序地 (GSSPs) に指定されている。
^ この火山灰は、当時煤山の近くにあった火山の爆発的な噴火により供給されたもので、シベリア洪水玄武岩のものではない
^ 「大絶滅」P72、元データはBowring,S.A., D.H.Erwin, Y.G.Jin, M.W.Martin, K.L.Davidek, and W.Wang. 1998. "U/Pb zircon geochronology and tempo of end-Permian mass extinction.2 Science 280:1039-45
^ 火山灰中のジルコン結晶に含まれるウラン・鉛分析の結果から算出。
^ 「大絶滅」P95
^ Haijun Song; Paul B. Wignall; Jinnan Tong; Hongfu Yin (2013). “Two pulses of extinction during the Permian-Triassic crisis”. Nature Geoscience 6 (1): 52-56. doi:10.1038/NGEO1649
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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