One_Last_Kiss
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

制作には、イギリスレーベル・PC Music(英語版)の設立者である音楽プロデューサーA・G・クック(A. G. Cook)が共同プロデュースで参加している[20]。クックはソフィーとともにUKの新興ジャンル「ハイパーポップ」の始祖として知られ、チャーリー・XCXらの作品にも参加している[21]シンセベースは、復帰後の宇多田の多くの楽曲に参加してきたジョディ・ミリナー(Jodi Milliner)が演奏しており、エンジニアも同じく復帰後の宇多田の全楽曲でミックスを担当してきたスティーヴ・フィッツモーリス(Steve Fitzmaurice)が務めている。なお、ボーカルのレコーディングは宇多田自身が行った。
エンジニアリング

スティーヴは、本楽曲のミックスでは動きのあるベースが肝になっているリズムトラックに最もフォーカスしたといい、また音楽的に楽曲をメインに支えているのはピアノだと話している[22]。またミックスを聴くときに重要視しているのはその出音の空間、距離、奥行きだとしており、たとえば様々な音が鳴っている本楽曲のラストのところでは、それぞれの音を良い位置におさめていくことを心掛けたと述べている[22]。メインボーカルのミックスについては、フレーズによってや曲の展開によって「常に変わっていく」処理を施しており、メリハリがあってぐっと迫ってくる部分や高音域、響きのあるリバーブなど様々だという[22]
テーマ

楽曲は、「喪失」をテーマにしたものとなっている。イギリスのカルチャーサイト・デイズド(英語版)でのインタビューによると、宇多田は本作で「前に進むこと、成長すること、そして自分自身に折り合いをつけることのほろ苦さ」を探求している。宇多田は2013年に母親 (藤圭子) を亡くし、その悲しみを長らく抱えることになり、「どうすればいいかわからなくなった」という。しかし、本作の制作に至って次のように理解することができたと述べている[23]。「One Last Kissの制作を始めて、ようやく理解できました。重要なのは、悲しみを捨てようとするのではなく、常にそれを抱えているということを受け入れること。痛みはまだ残るけれど、それでいいのだと思います。喪失であったものが贈り物になったのです。」
(原文: ”When I began working on ‘One Last Kiss’ I finally understood that the point was not to try to leave that behind, but to accept that I will carry it with me always. It still hurts, and that’s alright. What was a loss became a gift.”) ? 宇多田ヒカル、Dazedでのインタビュー[23]
音楽性

本楽曲の音楽性は、心地よく飛び跳ねるダンスホールのビート[24][25]、豊かな低音を響かせるベースライン[24]、楽曲後半で前景化するエレクトロサウンドなどをその特徴としている[26][27]。楽曲は、Aメロからシンセストリングスなどを織り交ぜつつドラマチックな盛り上がりを演出しながらスタートする[28]。サビでは、< Oh oh oh oh oh… / 忘れたくないこと / Oh oh oh oh oh… / I love you more than you'll ever know >という、シンプルでなじみやすいフレーズ、メロディが、心地よいコーラスとともに何度も繰り返されており[29]、歌詞を歌わず声をシンセの音のように聴かせるボーカルドロップ的なフレーズが用いられている[1][注 1]

音楽ライターの天野龍太郎はや批評家のimdkmは、「ビートやシンセベースや後半に向けて盛り上がっていく電子音の響き」「後景にあったけばけばしいシンセの質感がぐっとせりだし、さらにはボーカル・カットアップも登場する中盤からの展開」に、本楽曲の共同プロデューサーであるA.G.クックに特徴的なサウンドを見出している[26][27]。この部分からボーカルに催眠的なエフェクトが加わりはじめ、楽曲はクラブ・ミュージックのような陶酔感あふれるムードに突入する[29]
評価と受賞
評価と批評

音楽家

ヒャダインは、内省的なサウンドや冒頭の歌詞の具体的表現の仕方などを評価し、宇多田を「日本が誇る芸術家」と称賛した[30]

mabanuaは、「無駄な音もなければ足りない音も一切ない」「合間に出てくるちょっとした音まで全てが必要なピース」とコメントした[31]

荘子it (Dos Monos) は、「言葉のここで区切るのか!」と感じたという歌詞の譜割りを称賛し、「J-POPの、日本語とR&Bの譜割りのアマルガムを完璧にこなしている」と評価した[32]

Yaffleは、テレビ朝日系関ジャム 完全燃SHOW」に出演した際に「2021年の年間マイベスト」第1位に本楽曲を選出。「素晴らしいシンガーが素晴らしいビートで歌い素晴らしいミックスで仕上がっているというシンプルな楽曲の圧倒的な完成度」「完璧な曲」と称賛。なかでも、「1番サビの後半に力点を置いてあるかと思いきや、実はミスリードで、2番の頭点に置いてある点」を斬新とし、「始まりから終わりまでの構成が流れるように進んでいく」ところも本楽曲の良さだとした[33][34]

ライター・批評家

批評家のimdkmは、A.G.クックの手腕によって「宇多田ヒカルの声と言葉をあくまでセンターに据えつつ、宇多田ひとりではあまり取り組まなさそうなサウンドをフックに絶妙なカタルシスをつくりだしている」と述べた[27]

MuuMuse(ポルトガル語版)のブラッドリー・スターンは楽曲の前半部分について、「シンセの音色が、『ULTRA BLUE』『HEART STATION』期の温かい雰囲気を思い出させる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:171 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef