OPS_(野球)
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OPS(オプス、オーピーエス)は On-base plus slugging の略。野球において打者を評価する指標の1つで、出塁率長打率を足し合わせた値。打席あたりの総合的な打撃貢献度を表し、数値が高いほど、打席あたりでチームの得点増に貢献する打者だと評価される。出塁率と長打率の和によって簡単に求めることができ、得点との相関関係が非常に強い[1]ことからセイバーメトリクスでは重用される指標である。
概要

1984年にセイバーメトリクスの祖、ビル・ジェームズがディック・クレイマー、ピート・パーマーと共同提唱した指標である。その契機は「得点」の多い方が勝つという野球のルールにおいて、より多く得点を記録することこそが攻撃の目的であるはずなのに、攻撃のランキングが四死球や長打を評価しない打率順で掲載されることに彼らが疑問を持ったことに始まる[2]。なお、出塁率の最大値が1.00、長打率の最大値が4.00なので、OPSの最大値は5.00となる。
OPS

このように生まれたOPSの利点は、比較的簡単に求められる数値でありながら、得点との相関関係が非常に高い点にある。具体例として、2008?2017年のNPBでは、試合あたり平均得点との相関の強さを表す決定係数は打率が0.68に対してOPSは0.92となっており、チームにおける得点の多さのおよそ9割以上をOPSが示す高低で説明できることとなる[3]。このような得点との相関関係の強さと簡単な算出方法ゆえにメジャーリーグで2000年代以降普及し、現在では打者成績の公式記録に採用されており、MLB公式サイトの打者成績表が標準状態ではOPSの上位順で表示される設定になっていたり、北米の放送局が制作する中継映像では打率・ホームラン数・打点の打撃三大タイトルと同等かそれ以上の優先度で表示されるようになるなど重要視されている。

日本プロ野球でも、2006年よりヤクルト監督に就任した古田敦也が前年にリーグ最高のチーム打率ながら最少得点に終わった打線を改善するため、出塁率とともにOPSの重視を明言している。また、2009年には広島東洋カープ監督のマーティ・ブラウンがOPSを重視した打線を組むと公言したことで注目され[4]、米国球界経験者のG.G.佐藤は西武ライオンズとの契約においてOPSに応じた出来高を導入した[5]

2023年のMLBでは、全選手の打撃成績を合計した際のOPSは.734であった[6]
Adjusted OPS+

シーズンやリーグの異なる選手同士を比較する場合、リーグ平均を100として傑出度を測るOPS+が有用である。OPS+は平均に対する得点力の大きさをパーセンテージで表している。OPS+が100の打者は平均的であり、OPS+が150の打者は平均より50%高い得点力を持つ[7]

OPS+ = 100 × (出塁率 ÷ リーグ出塁率 + 長打率 ÷ リーグ長打率 ? 1) ÷ パークファクター補正

もしくは

OPS+ = 100 × (出塁率 ÷ リーグ出塁率* + 長打率 ÷ リーグ長打率* ? 1)

 リーグ出塁率*:パークファクター補正されたリーグ出塁率
 リーグ長打率*:パークファクター補正されたリーグ長打率
OPSによる格付け

OPSの開発者であるビル・ジェームズは、OPSを用いて以下のように打者をAからGランクまでの7段階に格付けできるとしている[8]

ランク評価OPSの範囲
A素晴らしい.9000以上
B非常に良い.8334 - .8999
C良い.7667 - .8333
D並.7000 - .7666
E平均以下.6334 - .6999
F悪い.5667 - .6333
G非常に悪い.5666以下

OPSの注意点
打者の特徴が分かる指標ではないこと
二つの数値を足すため「長打はないが出塁率が高い」打者なのか、「出塁率は低いが当たれば大きい」打者なのかは読み取れない。これに対し、米国のメディアは打率、出塁率、長打率の3指標を「打率/出塁率/長打率」とひとまとめにして記載することで問題を解決している。さらに詳しく選手の性質を知りたい場合は
Batted BallPITCHf/x等のデータを利用する。
走塁面の利得を含んだ指標ではないこと
OPSでは選手が出塁した後の進塁の成否は評価対象に含まれない。そのためより正確な得点生産力を測るには、走塁を評価した指標と併用する必要がある。
出塁が過小評価されていること
得点と非常に高い相関関係を持つが、得点期待値からプレーの得点価値を算出するLinear Weights[9]と比較すると、出塁能力がやや過小評価となる問題点がある[10]。より正確に打者としての総合力や貢献度を測る指標としてLinear Weightsに基づくwOBA (Weighted On-Base Average) 等が存在し、それらは現在セイバーメトリクスにおいてもっとも使用される[11]
OPSに関する記録
日本プロ野球

※出塁率は1985年以降現在に至るまで採用されている方法によって計算(宇佐美徹也「プロ野球記録大鑑」および各年発行の「ベースボールレコードブック」の個人記録欄より機械的に算出)。
通算記録

順位選手名OPS
1
王貞治1.080
2松井秀喜.996
3アレックス・カブレラ.990
4落合博満.987
5柳田悠岐.950
6タフィ・ローズ.940
7張本勲.9334
8中西太.9325
9小笠原道大.929
10ブーマー・ウェルズ.927

順位選手名OPS
11松中信彦.925
12レロン・リー.924
13山本浩二.923
14長嶋茂雄.919
15掛布雅之.913
16清原和博.909
17門田博光.907
18レオン・リー.902
19山内一弘.900
20田淵幸一.896


2023年シーズン終了時点、通算4000打数以上の選手を対象。

シーズン記録

順位選手名所属球団OPSOPS+[注 1]記録年備考
1王貞治読売ジャイアンツ1.2932511974年セ・リーグ記録
2ランディ・バース阪神タイガース1.2582351986年
3王貞治読売ジャイアンツ1.2552631973年
4落合博満ロッテオリオンズ1.2442111985年パ・リーグ記録
5ウラディミール・バレンティン東京ヤクルトスワローズ1.2342372013年セ・リーグ右打者記録
6落合博満ロッテオリオンズ1.2322171986年
7アレックス・カブレラ西武ライオンズ1.2232342002年
8王貞治読売ジャイアンツ1.2112431967年
9王貞治読売ジャイアンツ1.2102611966年
10王貞治読売ジャイアンツ1.2042051976年


2023年シーズン終了時点

参考記録

2000打数以上4000打数未満順位選手名OPS
1
R.バース1.078
2R.ペタジーニ1.051
3C.マニエル.988
4鈴木誠也.985
5T.ウッズ.96470
6村上宗隆.96469
7吉田正尚.960
8イチロー.943
9T.オマリー.941
10G.アルトマン.938


記録は2023年シーズン終了時点

各年度リーグ平均記録

年度日本野球連盟備考
1936年秋[12].592[注 2]
1937年春[13].625
1937年秋[13].649
1938年春[14].626
1938年秋[14].612
1939年[15].603


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