OODAループ
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OODAループによる意思決定手順

OODAループ(英語: OODA Loop、ウーダ・ループ)は、意思決定行動に関する理論[1][2][3][4]アメリカ空軍ジョン・ボイド大佐により提唱されて、元々は航空戦に臨むパイロットの意思決定を対象としていたが[3][4]作戦術戦略レベルにも敷衍され[5]、更にビジネス政治など様々な分野でも導入されており[5][6][7]コリン・グレイらにより、あらゆる分野に適用できる一般理論 (Grand theory) と評されるに至っている[5][8][9][注 1][注 2]
概要

OODAループは、元々は軍事行動における指揮官意思決定を対象としていたが、後にこれに留まらず、官民を問わずあらゆる個人の生活、人生ならびに組織経営等において生起する競争・紛争等に生き残り、打ち勝ち、さらに反映していくためのドクトリン、そして創造的行動哲学となった[7]

OODAループは、観察(Observe)- 情勢への適応(Orient)- 意思決定(Decide)- 行動(Act)- ループ(Implicit Guidance & Control, Feedforward / Feedback Loop)によって、健全な意思決定を実現するというものであり、理論の名称は、これらの頭文字から命名されている[1][4]

OODAループ理論は、アメリカ全軍NATO(北太平洋条約機構)加盟国をはじめとする西側各国の軍隊だけでなく中国やロシアを含む世界中の軍隊で採用され、その戦略を大きく転換させた。そして、今ではシリコンバレーをはじめとする欧米のビジネス界でも基本戦略として採用され、アメリカのビジネススクールでも教えられている[12]
来歴

OODAループ理論は、朝鮮戦争の空中戦についての洞察を基盤にして、指揮官のあるべき意思決定プロセスを分かりやすく理論化したものである。朝鮮戦争では、アメリカ軍はF-86戦闘機、ソ連軍および中国軍MiG-15戦闘機を主力として航空戦を戦った。F-86をMiG-15と比べると、加速・上昇・旋回性能のいずれでも劣っていたにもかかわらず、実際の交戦ではF-86のほうが優れた戦果を示し、最終的に、そのキル・レシオ(撃墜・被撃墜の率)はほぼ10対1にも達したといわれていた[注 3]。ジョン・ボイドは、自身も数度に渡ってF-86に搭乗してMiG-15と交戦しており、これらの経験をもとにして洞察した結果、決定的な勝因は、操縦士の意思決定速度の差にあったと結論づけた。F-86のコクピットは360度の視界が確保されており、MiG-15に比べると操縦も容易であったため、F-86のパイロットは敵機をより早く発見することができ、より早く対応する行動をとることができた[3][7][2]

ボイドは、この洞察をさらに敷衍して、戦闘機パイロットの意思決定過程の一般化を試みた。従来の意思決定モデルは線形を描いていたのに対して、このモデルでは非線形構造が採用されており、ひとつのOODAプロセスの最後にあたる「行動」(Act)の結果は、直ちに次の「観察」(Observe)の段階で評価され、次の意思決定に反映されることで、ループを描くこととなる。このループは、空中戦のモデルにおいては、一方が無力化されるまで続くこととなる[3]
段階
観察 (Observe)

監視[4][7]観察と訳される。意思決定者自身が直面する、自分以外の外部状況に関する「生のデータ」 (Raw data) の収集を意味する[3]

理論の原型となった空戦においては、パイロット自身の目視、機体装備のセンサー、あるいは地上レーダーや早期警戒機からの伝送情報により敵機を探知する。また、地上部隊であれば斥候部隊や航空偵察、艦艇であれば艦装備のセンサーおよび外部のISRシステム(偵察衛星や航空偵察)も使用される[4]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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