O型
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血清に弱い抗B抗体があり、時には抗A1抗体もあるが体温では反応しないなどの特徴を持つ[70]。遺伝子を見るとA・B双方の抗原が少ないA2B3型の場合、A型遺伝子を基本に2か所(156番目と268番目)のアミノ酸が異なり、後者がB遺伝子の物と同じ配列になるのでAとBの酵素をつぎはぎにしたような酵素ができ、量は少ないがAとB双方の抗原が作られているのに対し、B抗原は多いがA抗原は少ない型の場合はB型遺伝子を基本にしているが235番目のアミノ酸がA型と同じ配置なのでB抗原が主に作られ、わずかだがA抗原も作られているといったような違いがある[71]

遺伝子型表現型抗A血清との反応抗B血清との反応血清中の抗A血清中の抗B型物質転移酵素適切な追加検査
AB/OA2B3+mf(部分凝集)+/0+A、(B)、HなしHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離
AB/AA1B3+mf(部分凝集)0+A、(B)、HAHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離
AB/BA2B+++/00A、B、HBHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定

O型の亜型(便宜上ボンベイ型・パラボンベイ型も解説)
(本来の)O型の亜型
元々O型が「ABO遺伝子のうちH物質に糖をつける遺伝子が働かないもの」すべてを指すので遺伝子の配列がかなり違うものが見つかっており、通常の87番目のアミノ酸製造の塩基が1つ抜けているもののほかに、さらに後半部で置換がある亜型と、87番目のアミノ酸はA型やB型と同じだが後半のアミノ酸で塩基の置換が生じてアミノ酸が4つ(176・235・266・268番目)異なっている(厳密には176番目がB型、235・256番目がA型、268番目がどちらとも違う。)亜型も見つかっている
[72]。いずれでも遺伝子を調べて分かる程度の違いでH物質が赤血球にそのままついているのには変わりがなく、輸血上の問題もない。
ボンベイ型(Oh)
インドのボンベイ(現在のムンバイ)で発見[73]されたことから、この名前がついている。H物質を組み立てる際にフコースをつける工程があるが、ボンベイ型はこの酵素が作られない遺伝子のためH物質自体が完成せず、ここから先のA抗原とB抗原も作られないためA型やB型の遺伝子を持っていても表試験ではO型と判定されてしまう。H物質を持たないため抗H抗体を自然抗体として持ち、うら試験で通常A・B型血球と対照用に使うO型血球[74]を凝集させる。この抗H抗体は体温で反応する[注釈 12]ので、ボンベイ型にO型を含むH抗原のある型の血液を輸血できず、同型(ボンベイ型)の赤血球製剤を輸血する[68]。表記は「Oh」だが、O型血液を輸血できないことなどから厳密にはO型と全く別の血液型である[75]
パラボンベイ型(記号は下記参照)
ボンベイ型と同様にH物質を組み立てる遺伝子の変異でH物質が完成しないが、こちらは赤血球にA抗原もしくはB抗原を弱くだが持つ型。(理由は#機構を参照)Ah型、Bh型(Row-IIとRow-IIIに分類[注釈 13])、AHm型[注釈 14]、BHm型、OHm型(Row-IIIに分類)が確認されている。Ah型、Bh型:通常のボンベイ型(Oh型)と同じ性質を持つが、AまたはB抗原が不完全で弱いながらも存在。AHm型、BHm型:血液上の抗原はAh型、Bh型と同様だが唾液は分泌性、OHm型はOh型(通常のボンベイ型)と同様だが唾液は分泌型。輸血の問題はボンベイ型と基本的に同じだが、Row-IIIのパラボンベイ型で抗体が低温性のもの(抗HI)のみAhの場合はA型、Bhの場合はB型を使用してよい。血漿・血小板剤はその型(亜型の種類によってA・B・Oの選択肢がある)のもので問題ない[68]

HSe表記抗A血清との反応抗B血清との反応抗H血清との反応唾液中のA型物質唾液中のB型物質唾液中のH型物質血清中抗体適切な追加検査
不活性非分泌型Oh000000抗HHレクチンとの反応、吸着解離試験、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定
活性低下非分泌型Ah+/00+/0000抗HHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定
活性低下非分泌型Bh0+/0+/0000抗HHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定
活性低下分泌型Om00+/000+抗HIHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定
活性低下分泌型Am+/00+/0+0+抗HIHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定
活性低下分泌型Bm0+/0+/00++抗HIHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定

判定方法

試薬の抗A血清と抗B血清とを用いて、採取した赤血球と反応させて凝集の有無により判定する方法(おもて検査)で仮に判定される(抗H血清も使用することがある。抗H血清を使用するとボンベイ型の判定も出せる)。どちらかの血清で凝集が見られた場合はその血液型、どちらとも凝集が見られた場合はAB型、凝集が見られない場合はO型と判定される。これに加え、血液の血清を用いてA・B・O各自型の血球の凝集(O型血球は対照として用い、これが凝集する場合は判定を保留する。)を判定する方法(うら検査)で判定して結果が一致した場合に、血液型が確定される。

誕生時には、うら検査で判定するのに必要な血液型決定因子が不足しているので判定できず、おもて検査では、凝集が起きにくいタイプの場合や凝集の有無を間違って、誤って仮判定されるケースがある。そのため、成長してから正しい血液型が確定された場合に、ABO型の血液型が変わったかのように見える場合がある。なお、おもて検査とうら検査の判定が一致しなかった場合は再検査する。それでも一致しなかった場合は以下の可能性も考慮する。おもて検査とうら検査には優劣がないため、どちらかの判定を優先して血液型を決定するということはしない。

おもてとうら不一致時に考えられる可能性[76]
血球側に問題がある場合の例
亜型(#ABO式血液型の亜型分類参照)疾患による後天性の抗原異常(白血病ホジキン病などで抗原が弱まり、弱い亜型やO型と間違えやすくなる。)獲得性B(A型が癌や細菌による感染症で発生したB抗原が赤血球につき、AB型に見える場合がある。)血液キメラ・モザイク(複数の遺伝子や同じ遺伝子でも表現型が異なる血球が存在する。当然別型の血球ごとに反応が変わる。)汎血球凝集反応(血球の表面が細菌やウイルスによって劣化し、T抗原系統の露出ですべての抗原血清で凝集する。#汎血球凝集の各レクチンに対する反応参照)自己免疫性疾患による血球の抗体感作(自分の血液に反応する抗体が元からある)異型輸血後(別人の血が入っているのでキメラ・モザイク同様に別型の血球で反応が異なる。)
血清側に問題がある場合の例
連銭形成(凝集とは別の赤血球が数珠上に重なった状態を凝集と誤認。)低または無γグロブリン血症で抗体不足不規則抗体の存在(ABO式と無関係の血液型で凝集)血清中の血液型物質の増加(癌などで見られる場合がある)高力価の寒冷凝集素新生児や老人における抗A抗B抗体の欠損または低下(上記参照)新生児の胎盤通過性母親由来抗体(母親の抗体が新生児血清に混ざっている)亜型血清中の抗体(亜型の一部には同型抗原に抗体を持つ場合がある)

血液ではなく、遺伝子から判定するという手法もあり、血清による判定に比べ、誤判定が生じにくいことが特徴である。

反応強度スコア特徴と外観背景の色調
4+12一個の大きな凝集塊透明
3+10数個の大きな凝集塊透明
2+8中程度の凝集塊透明
1+5小さな凝集塊赤く濁る
w+2ごくわずかな微小凝集赤く濁る
00凝集も溶血もみられない赤く濁る
mf部分凝集赤く濁る
H(PH)完全溶血(部分溶血)赤く透明(濁る)

また、亜型検査は、輸血検査の中でも血液型を確定するのに非常に重要である。
抗原側検査
抗Hレクチン
H抗原のない、O型の亜型であるボンベイ型やパラボンベイ型には凝集せず、逆にその他の亜型には激しい凝集を起こさせる。またCad(+)血球にも凝集。対象は全亜型。特にボンベイ型、パラボンベイ型通常はO>A2B>B>A1>A1Bの順に凝集は強くなる。
抗A1レクチン(ドリコスレクチン[77]
A1抗原のない、A型の亜型であるA2型などには凝集しない。汎血球凝集などでも例外的に凝集する。対象はAの亜型。
ピーナッツレクチン
感染症などで細菌の酵素により血球の内在性抗原(T、Tk、Tnなど)が露出し、ピーナッツレクチンをはじめ全抗血清に凝集する。対象は汎血球凝集を疑う場合。詳細は下記
吸着解離試験
血球に抗原が存在することを証明するために、既知の抗体をいったん患者血球に吸着させ、熱解離などによって再び解離する。そして既知の同型血球とまた反応するかを調べる。対象は亜型のうちAm、Ax、Ael、Bm、Bx、Bel型。
再アセチル化
消化器系の感染症では細菌の酵素でN-アセチルガラクトサミンが脱アセチル化され、ガラクトースとなり抗B血清と反応するようになる。無水酢酸で再アセチル化すれば通常の状態に戻る。対象は後天性B。
被凝集価測定
抗原の強さを調べる。抗血清の希釈系列と患者血球を反応させ、どこまで凝集するかを調べる。対照と比較して被凝集価が2管差以上、スコアが10以上あれば亜型。対象はA2、A3、B3、パラボンベイ型
吸収試験
抗原の強さを調べる。被凝集価とは逆に患者血球の希釈系列と抗血清を反応させ、どこまで凝集するかを調べる。吸収価が1:8未満ではA3、B3以外の亜型。対象はA2、A3、B3、パラボンベイ型
混合赤血球の分離
対象は異型輸血、キメラモザイクを疑う場合。もともと部分凝集がみられた場合、「異型輸血」「亜型」「造血幹細胞移植後」「キメラ・モザイク」「白血病ホジキン病などの疾患による抗原減弱」を疑う。
血清側検査
転移酵素活性測定
血清中にあるはずの転移酵素の有無を調べる。患者血清と試薬、O型血球を37度で反応させた後、O型血球が転移酵素の作用で別の型に変わったか被凝集価測定で確認する。対象は全亜型。Ax、Ael、Bx、Belでは検出されない。
型物質測定(血清)
血清中にあるはずの型物質の有無を調べる。抗血清の希釈系列と患者血清を混ぜ、さらに同型血球を反応させてどこまで凝集するかを調べる。もし型物質があればそれによって凝集が妨害を受ける。
型物質測定(唾液)
患者が分泌型(Lewis(a-b+))なら唾液中にも型物質があるので血清の代わりになる。Lewis(a-b+)は日本人の70パーセント。分泌型。Lewis(a+b-)は日本人の20パーセント。非分泌型、分泌型両方あり。Lewis(a-b-)は日本人の10パーセント。非分泌型。対象は全亜型。Ax、Ael、Bx、BelやシスABでは検出されない。
不規則抗体検査
(不規則抗体はABO式血液型以外の血液型に対する抗体のことだが、便宜上ここに記す。)その他IgM系不規則抗体でもウラ試験で異常凝集がある。対象はウラ試験で異常な凝集が認められた場合。
予備加温法によるウラ試験
37度の熱を加えてウラ試験の凝集が消えるか確認する。対象は寒冷凝集を疑う場合。
生食置換法によるウラ試験
生理食塩水を加えてウラ試験の凝集が消えるか確認する。対象は連銭形成を疑う場合。
解離試験・吸収試験
熱解離

赤血球沈渣(6回洗浄済)と生食を1容量:1容量混和。

56℃で10分加温後、900 - 1000G(3400rpm)で2分遠心し、上清を解離液とする。

目的方法解離液(性状)反応温度反応時間解離液(色)解離後血球の利用試薬
解離熱解離IgM50 - 565 - 10分淡赤色不可生食

主にAm、Ax、Ael、Bm、Bx、Belなどの亜型に対し、抗原の存在を証明する吸着解離試験で実施。処理血球の検査はできない。
DT解離

赤血球沈渣(3回洗浄済)と生食、DT液を1容量:1容量:2容量混和。

37℃で5分反応後、900 - 1000G(3400rpm)で5分遠心し、上清を解離液とする。
ジキトニン解離

赤血球沈渣(6回洗浄済)と生食を1:9混和。

0.5%ジキトニン液0.5mlを加え1分転倒混和し、900 - 1000G(3400rpm)で5分遠心。赤血球残渣が白くなるまで5回以上洗浄(2分遠心)。

赤血球残渣に0.1Mグリシン塩酸緩衝液2.0mlを混和し1分転倒混和。


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