O型
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

その後、世界各地の人種の血液型比率を調べていた際にスナイダーが混血が少ないアメリカ先住民族(原文は「アメリカ・インディアン」)にO型が極めて多い(453人を調べてOが91.3%だった)ことを報告し、これにより自分が提唱した後述の原則から「大昔はアメリカ先住民は100%O型だったのではないか」という説を提唱し[62]、これ以外にドイツのベルンシュタインなども自分の三因子仮説などから原始人類の血液型はO型のみでそこからA・B型が突然変異したのではないかという説を上げていた[63]が、カナダのアルバータ州でマトソンとシュラーデルが調査したところ、ほとんど混血のない先住民(前述のブラッド族・ブラックフィート族など)にA・O型が多くB・AB型が皆無という地域が見つかった他、オーストラリアでも白人との混血が少ないにもかかわらずA型の多い集団が発見され、原始人類はO型のみではないかという仮説は訂正された[64]

スナイダーは血液型を人類学に応用する際、以下の必要な四原則を定めている。
一民族の血液型分布率は、これと血液的に緊密な関係にある他民族の血液型の分布率と近似することが予期される。

一民族の血液型分布率が、これと血液的に緊密な関係にある他民族の血液型の分布率と大いに異なる場合、この民族はさらに他の民族との間に混血があることが予期される。

一民族の血液型分布率が、これと緊密な関係にない他民族の血液型の分布率と等しい場合、その祖先の時代において前者が後者あるいはその近い民族との間に混血があったことが想像される。

一民族がAまたはBのいずれか、あるいは両方を欠くか、その遺伝子頻度が非常に小さい場合、この民族は人類にAまたはBの突然変異が起こる前、またはAやBの広がる前からほかの民族と孤立して生存していたと考えられる。

この四原則は当てはまる場合も多いが、一致しない場合もあり他の証拠から近縁でさらに別の民族との交流が薄い民族同士でも分布率が大きく違い、逆に無関係のはずの2つの民族の血液型分布がほぼ一緒という場合もあるので、なるべく一定数以上の人数で広い範囲を確かな診断で調べる必要がある[65]
ABO式血液型の亜型分類

ABO型の各型の凝集力の違いなどを元にさらに下の亜型がある。検査については亜型検査を参照。

血液型の亜型はA2が最初の発見になり、通常のA型はフジマメ科の植物ドリコス・ビフローラスからとれるレクチンで凝集が起きる(B型・O型は凝集しない)が、A型であるにもかかわらずこれに反応しないものがあったことで発見された。このA2は酵素反応してないH物質が多く、このためドリコスレクチンに反応しなかった。原因はA2の遺伝子はABO血液型物質を作る354番目のアミノ酸の塩基配列が1つ抜けたため、次が終止コドンにならずにA1(通常のA)より長くなり、376個分のアミノ酸のデータで酵素を作るためこのような違いが起こっていた。なお後に判明した他の亜型の場合もA3は291番目のアミノ酸(塩基では871番目)、AXは216番目のアミノ酸(塩基では646番目)、B3は352番目のアミノ酸(塩基では1054番目)にこうした違いが起きていた[66]

基本的に型が同じなら抗原は同じもの(量が異なるのみ)なので亜型が違っても通常はその型の赤血球製剤で問題ない[67]し、反応する場合も低温でのみ反応する寒冷凝集素の場合は実害がないためそのまま輸血可能だが、まれに37℃反応性のその型の抗体(A型なら抗A1抗体、B型なら抗B抗体)を持っている場合は「O型」の赤血球製剤(A抗原・B抗原を持たない)を使用する。いずれの場合も血漿・血小板剤はその型のもので問題ない[68]
A型の亜型
A1
普通のA型。A型の人のうち約80%を占める。(赤血球1個当たりの抗原数8.1×105?11.7×105)
[67]
Aint
A1よりも弱くA2よりも強い。
A2
弱いA型。(赤血球1個当たりの抗原数2.4×105?2.9×105)このあたりからO型に間違えられやすくなる[67]。検査は抗Hレクチン、抗A1レクチン、被凝集価測定、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定、そのほかA1に対する抗体を持つものものが時々いる[69]ため、A型血球との間接抗グロブリン試験などでも調べる。
A3
かなり弱いA型。(赤血球1個当たりの抗原数7000)オモテ試験で部分凝集となるのが特徴。検査は抗Hレクチン、抗A1レクチン、被凝集価測定、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。その他A型とO型の血液キメラモザイクとの鑑別のため、混合赤血球の分離も。これ以外にほとんどがA1に対する抗体を持つという性質を持つ[69]
Ax
A3よりさらに弱いA型。(赤血球1個当たりの抗原数1400?10300)AでありながらAに対する抗体を持ち、あるはずの転移酵素や型物質がない。検査は抗Hレクチン、抗A1レクチン、吸着解離試験、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。
Am
Axよりさらに弱いA型。(赤血球1個当たりの抗原数1200)Aでありながらオモテ試験で凝集せずOと判定される。しかし転移酵素や型物質は存在する。検査は抗Hレクチン、抗A1レクチン、吸着解離試験、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。
Ael
ものすごく弱いA型。(赤血球1個当たりの抗原数700)「el」はelution(溶離・溶出)の略。吸着解離試験の検査以外ではA型と判断できない。
Aend
ものすごく弱いA型。特定の抗原が存在しないか、ごくわずかしか存在しない。

亜型抗A血清との反応抗B血清との反応血清中の抗A血清中の抗B型物質A型転移酵素適切な追加検査
A1+00+A、Hありなし
A2+0+/0+A、HありHレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、被凝集価測定、唾液・血清中の型物質測定、転移酵素活性測定、A血球との間接抗グロブリン試験
A3mf(部分凝集)00+A、HありHレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、被凝集価測定、唾液・血清中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離
Ax+/00++HなしHレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、A血球との間接抗グロブリン試験、家系調査
Am000+A、HありHレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、吸着解離試験、唾液・血清中の型物質測定、転移酵素活性測定、家系調査
Ael00++HなしHレクチンとの反応、A1レクチンとの反応、吸着解離試験、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、家系調査

基本的に血清中に抗Aがあると、血清を使った型物質測定はできない。
B型の亜型

B型はあまり研究が進んでいないが、A型同様のバリエーションがあると思われる。
B1
普通のB型。
Bint
B1よりも弱くB2よりも強い。
B2
弱いB型。
B3
かなり弱いB型。オモテ試験で部分凝集
となるのが特徴。検査は抗Hレクチン、被凝集価測定、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。そのほかキメラモザイクとの鑑別のため、混合赤血球の分離も。
Bx
B3よりさらに弱いB型。BでありながらBに対する抗体を持ち、あるはずの転移酵素や型物質がない。検査は抗Hレクチン、吸着解離試験、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。
Bm
Bxよりさらに弱いB型。Bでありながらオモテ試験で凝集せずOと判定される。しかし転移酵素や型物質は存在する。検査は抗Hレクチン、吸着解離試験、転移酵素活性測定、唾液・血清中の型物質測定。
Bel
ものすごく弱いB型。特定の抗原が存在しないか、ごくわずかしか存在しない。「el」は吸着解離試験を意味する。この検査以外ではB型と判断できない。
Bend
ものすごく弱いB型。特定の抗原が存在しないか、ごくわずかしか存在しない。

亜型抗A血清との反応抗B血清との反応血清中の抗A血清中の抗B型物質B型転移酵素適切な追加検査
B0++0B、Hありなし
B30mf(部分凝集)+0B、HありHレクチンとの反応、被凝集価測定、血清・唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離
Bx0+/0++HなしHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定
Bm00+0B、HありHレクチンとの反応、吸着解離試験、血清・唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定
Bel00++HなしHレクチンとの反応、吸着解離試験、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定

基本的に血清中に抗Bがあると、血清を使った型物質測定はできない。
AB型の亜型
前述のA型亜型とB型亜型の組み合わせ
例えばA1B2の場合、Bの凝集力が弱いのでA型と誤認されやすくなる。両方凝集が弱い型だとO型との誤認もありうる
[67]普通、AB型(遺伝子型はA/B)とO型(遺伝子型はO/O)の両親からはA型とB型のこどもが生まれるが、遺伝子型がcis-AB/OとO/Oの親からはAB型(シスAB)とO型のこどもしか生まれない。
シスAB型 (cisAB)
普通、A型遺伝子とB型遺伝子が重なった際にAB型になる(例・A×B=AB)。しかしごく稀に、一本の染色体にA型とB型両方の遺伝子が乗っていることがある。このような染色体を持つ人は必ずAB型となり、このケースをシスAB型と呼ぶ。この場合、配偶者がO型でもAB型が生まれる事がある(例えばcisAB×Oの場合は全ての型が生まれる可能性がある)。ちなみに、普通のAB型はトランスAB型と呼ばれる。シスAB型はAB型の約10000分の1程度でかなりの低確率である。シスAB型の場合、普通のAB型に比べて抗原を作る量が少ないことが多く、A2B3(A・B双方の抗原が少ない)、A2B(B抗原は多いがA抗原は少ない)、A1B3(A抗原が多いがB抗原が少ない)の3種類が報告されており
[67]、一番典型的なA2B3型の場合、A抗原・B抗原は弱いがH抗原は通常より高く、A1レクチンに反応しない。血清に弱い抗B抗体があり、時には抗A1抗体もあるが体温では反応しないなどの特徴を持つ[70]。遺伝子を見るとA・B双方の抗原が少ないA2B3型の場合、A型遺伝子を基本に2か所(156番目と268番目)のアミノ酸が異なり、後者がB遺伝子の物と同じ配列になるのでAとBの酵素をつぎはぎにしたような酵素ができ、量は少ないがAとB双方の抗原が作られているのに対し、B抗原は多いがA抗原は少ない型の場合はB型遺伝子を基本にしているが235番目のアミノ酸がA型と同じ配置なのでB抗原が主に作られ、わずかだがA抗原も作られているといったような違いがある[71]

遺伝子型表現型抗A血清との反応抗B血清との反応血清中の抗A血清中の抗B型物質転移酵素適切な追加検査
AB/OA2B3+mf(部分凝集)+/0+A、(B)、HなしHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離
AB/AA1B3+mf(部分凝集)0+A、(B)、HAHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定、混合赤血球分離
AB/BA2B+++/00A、B、HBHレクチンとの反応、被凝集価測定、唾液中の型物質測定、転移酵素活性測定

O型の亜型(便宜上ボンベイ型・パラボンベイ型も解説)
(本来の)O型の亜型
元々O型が「ABO遺伝子のうちH物質に糖をつける遺伝子が働かないもの」すべてを指すので遺伝子の配列がかなり違うものが見つかっており、通常の87番目のアミノ酸製造の塩基が1つ抜けているもののほかに、さらに後半部で置換がある亜型と、87番目のアミノ酸はA型やB型と同じだが後半のアミノ酸で塩基の置換が生じてアミノ酸が4つ(176・235・266・268番目)異なっている(厳密には176番目がB型、235・256番目がA型、268番目がどちらとも違う。)亜型も見つかっている
[72]。いずれでも遺伝子を調べて分かる程度の違いでH物質が赤血球にそのままついているのには変わりがなく、輸血上の問題もない。
ボンベイ型(Oh)
インドのボンベイ(現在のムンバイ)で発見[73]されたことから、この名前がついている。H物質を組み立てる際にフコースをつける工程があるが、ボンベイ型はこの酵素が作られない遺伝子のためH物質自体が完成せず、ここから先のA抗原とB抗原も作られないためA型やB型の遺伝子を持っていても表試験ではO型と判定されてしまう。H物質を持たないため抗H抗体を自然抗体として持ち、うら試験で通常A・B型血球と対照用に使うO型血球[74]を凝集させる。この抗H抗体は体温で反応する[注釈 12]ので、ボンベイ型にO型を含むH抗原のある型の血液を輸血できず、同型(ボンベイ型)の赤血球製剤を輸血する[68]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:118 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef