Oリング
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この項目では、ゴム製の環型部品で、流体の流出、流入を防ぐ為のものについて説明しています。代替医療の診断法については「O-リングテスト」をご覧ください。
様々な大きさ、太さ、色のOリング

Oリング(オーリング、英語: O-ring)とは、密封(シール)に使用される、断面が円形(O形)の環型をした機械部品。押しつぶして密閉することから、スクイーズタイプのシール(スクイーズパッキン)に分類される[1][2]。材質にはゴムが使用されるのが一般的である[3][4]。装置などに気体や液体などの流体が進入することを防止したり、装置内部の流体が外に漏れないようにするために用いられる[5]
原理

Oリングの形状は、Oリング断面円形の「太さ」(線径)と、Oリングの環の「内径」の2つの寸法により基本的に決まる[6]。外筒と内筒のような、2つの部品間に取り付けて、そこで流体の入出を防ぐために使われる。片側の部品に溝を設けるなどして、Oリングに対する「押さえ」(溝)を作り、この押さえでOリングを保持する[5]。このとき、溝によってできるOリングが収まる空間の深さをOリング太さよりも小さくすることで、Oリングを押しつぶす[7]。これにより、Oリングと2つの部品の間には反発力が生じ、これらを密着させることができる[7]。これがOリングの基本となる密閉原理である。

以上のような、Oリングと押えのサイズ差によって押しつぶす単純な原理に加えて、Oリングには「セルフシール」と呼ばれる機構が働く[8]。Oリングが流体を密閉するとき、流体から圧力が作用する。元々のOリングと2つの部品間の反発力に流体からの圧力が加わり、さらに強く密着することになる[9]。セルフシール機構が働く他のシール部品としては、リップタイプのシール(リップパッキン)がある[1][10]
使用方法

Oリングを含むシール全般の使用方法は固定用と運動用に大別され、固定用はガスケット、運動用はパッキンと呼び分けられる[1]。Oリングは、これらどちらの用途にも使われる[11]
密閉対象

Oリングによる密閉対象は、流体から気体、真空密閉までに及ぶ。流体の具体例としては、、機械の作動油や潤滑油、ガソリン重油などの燃料類、アルコールなどの薬品類、気体の具体例としては、空気蒸気液化石油ガスフロンガスなどがある[12][13]。密閉流体とOリング材質のそれぞれの化学的特性を考慮して、Oリングの材料が選択される[14]。流体とOリングが適合しない場合、Oリングが硬化、軟化、あるいは溶解、膨潤するといったトラブルが起きる可能性がある。

気体密閉の場合には、Oリングへの潤滑剤塗布が重要となる[15]。真空密閉には流体の浸透を減らすために複数のOリング取り付けが有効となる[16]。Oリングに使用されるゴム材料の中でもブチルゴムが最も気体透過性が低く、真空用によく使用される[17]
固定用・運動用Oリングの固定用としての使用例。黒いOリングが青い部分の流体を閉じ込めている様子。外側では白いバックアップリングがOリングを支えている。

固定用とは、密閉構造を成す部品同士が相対的に動かない状態で、Oリングが使用されることを指す[15]。それぞれの部品はボルトやリベットなどで固定される[15]。円筒形間で密閉する円筒面固定用と平面間で密閉する平面固定用にさらに大別される[18]

運動用とは、密閉構造を成す部品同士が相対運動する場合に対する使用方法を指す。主に、Oリング軸方向に往復運動する場合に対する用途が多い。ピストンシリンダーにおける使用が典型例である[15]。その他には、相手材がOリング軸方向回りに回転する場合や、回転運動と往復運動が同時に起こる螺旋運動をする場合などがある。固定用と比較すると、相対運動による摩擦が顕著となり、Oリング損傷の主因となる[19]。また、捩れの発生防止のため、Oリング太さを太くするなどの処置が行われる[11]

やや特殊な使用方法としては、低負荷のベルトドライブ装置のためのベルトとしてOリングが使用される場合もある[20]。また、部品と部品の衝突を緩和するための緩衝材のような役目としてOリングを設置する使用もある[16]
Oリング形状・ハウジング形状内径 20 mm 前後のOリングの例

後述のように多くの規格でOリングの形状、溝の形状が標準化されている。

環の内径と太さによってOリングの形状が決定される。寸法の具体例としては、JIS規格では運動用Oリングの基準寸法(公称寸法)について、内径を2.8 mmから399.5 mmまで、太さを1.9 mmから8.4 mmまでの範囲で規定している[21]

ハウジングのために、典型的には密閉する2つの部品のどちらかに四角形の溝が作られる。その他のハウジング形状としては、三角溝、あり溝がある[22]

Oリングの欠点として、相手部品に押し潰してシールを達成する原理上、相手部品の表面粗さを小さくする必要がある[23]。特に運動用は、固定用以上に表面粗さを抑える必要がある[24]。運動用における摺動面には、算術平均粗さや二乗平均粗さで0.4 μm程度が要求される[25][24]
材料
要求特性

シール対象、使用温度、作用圧力などに応じてOリングの材料が選定される。次のような特性が考慮される[26]。一つの材料で全ての特性を満たすことは無いので、使用環境に応じて材料が選ばれる[27]

低圧縮永久ひずみ

耐老化性

耐熱性

耐寒性

耐候性

耐引裂性

耐摩耗性

耐油性

耐薬品性

気体透過性

Oリング材質の硬さは、Oリングの性能に関わる重要な物性の一つで[28]、ゴム材料のOリングの場合にはデュロメータ硬さタイプA測定値が標準的に指標として使われる[29]。最も柔らかいOリングでHDA 50程度である[30]
具体例標準的なゴム材料のOリング金属Oリング

Oリングの材料にはゴム材料が使用されるのが一般的である。以下に主要な材料とその特性を記す。
ニトリルゴム
汎用Oリングの材料として用いられる[31]


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