NIMBY(ニンビー)とは、英語の句「not in my backyard」(我が家の裏には御免)の略語で、「施設の必要性は認めるが、自らの居住地域には建てないでくれ」と主張する住民たちや、その態度を指す言葉(総論賛成・各論反対)。日本語では、これらの施設について「忌避施設」「迷惑施設」[1]「嫌悪施設」[2]などと呼称される。
その語源は辿ることは難しいが、現在信頼のできる初出は、1980年に行われたアメリカ原子力学会(American Nuclear Society)で、ウォルター・ロジャースが原子力発電の恩恵を享受しつつ、原子力発電所の立地には反対する人々に対して放った言葉とされている[3]。
本来は施設に対して用いられる言葉であるが、その施設で勤務をするもしくは利用する人々が一般的に社会的弱者(性風俗店の娼婦や従業員、刑務所で服役する受刑者、収容施設の不法移民)であるためにスティグマ論とも関連し[4][5][6][7]、例えば施設ではない難民という人々に対する態度においても「NIMBY」という言葉が使用されることがある[8]。 NIMBYによる反対運動は、「施設が建設されると、地域や住民に対して環境被害などの損害をもたらす」などと主張し、以下の理由で建設や誘致の反対運動を起こす場合もある。 NIMBYの対象は個人的な主観や感情も多々含まれるため、判断が分かれるが、一般的には次の施設が挙げられる。下記に挙げられている施設でも、利便性の向上や経済効果を期待し、近隣の自治体や住民により誘致される場合も少なくない。例えば交通機関は車両基地の関係でその最寄りにある車庫所在駅と呼ばれる駅の始発・終着列車は必然的に多くなるため着席乗車の機会や運行本数の増加などの利便性向上が見込まれ、学校、保育園等教育施設は通学・通園時に保護者が送迎の面で近くにない場合に比べて非常に有利であったりするなどで、結果的に住宅を探す際にむしろこれらの近くの地域が周辺のほかの地域よりも住まい探しで人気が出ることが少なくない。 騒音、大気汚染、水質汚染、悪臭、放射能汚染、疫病(伝染病)などの公害が発生するという理由で反対されることがある。 児童(青少年)の目につくと教育や風紀に悪影響を及ぼし、治安が悪化するという理由で反対されることがある。
対象となる施設
施設から直接ないし間接的に衛生・環境・騒音などの面や健康上・精神的な被害を受ける(火災などの事故が発生するとより一層被害が拡大する)
施設の存在により、地域に対するイメージが低下する
また、それによって不動産の資産価値が下がる
施設の影響で治安が悪化する(利用者や関係者に暴力団、暴走族などの反社会的勢力またはそれらとつながりのある者が多く、犯罪やトラブルの温床になりやすい)
住宅地や学校の近くに建設されると児童の目につきやすくなるため、教育に悪影響を与える
衛生面と環境への影響から反対される施設
学校(小中高校、専門学校・大学)
清掃工場・最終処分場
下水処理場
火葬場
食肉処理施設
核施設(原子力発電所、核燃料再処理工場、放射性廃棄物処理設備など)
空港
バイオセーフティーレベルが高い研究所
軍事施設(軍事基地、砲兵工廠など)
道路、交通機関(車輌基地、機関庫、貨物駅や新幹線などの鉄道施設)
発電所
ダム
石油備蓄基地
風力発電設備
幼稚園、保育園
風紀や治安の悪化を理由に反対される施設
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)や、各地域の条例に基づき設置される、風俗店・遊技場(その他社会的な非難の対象となる業種)全般。店舗のネオンサイン(光害)と騒音により、景観や住環境が損なわれるという理由で反対されることもあるが、住宅地や学校から十分離れた郊外であれば、建築(出店)を許可される可能性がある。
パチンコ・パチスロ店
ゲームセンター・カラオケボックス
ソープランド・ファッションヘルス
ラブホテルなど
消費者金融
刑務所・矯正施設(少年院・鑑別所など)— 被収容者(受刑者)の脱走があった場合、または被収容者と通じる関係者(暴力団の幹部や家族など)が面会や釈放時に訪問することで、近隣の治安の悪化が懸念される。
公営競技(ギャンブル)に関わる施設
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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