NASA
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2003年コロンビア号空中分解事故によりシャトルの飛行が2年間中断された間、NASAはISSの保守作業をロシアの宇宙船に頼ったことから見ても、両者の信頼関係の強さは明白である。

ISSは、主な機材の運搬はすべてシャトルに頼っている。1986年のチャレンジャー号と2003年のコロンビア号の事故で、シャトルは2機の機体と14名の飛行士を失った。1986年の事故では新たにエンデバー号が製造され喪失した機体の埋め合わせがなされたが、2003年の事故ではそのような補強はされず、新型宇宙船オリオンへの移行が決定された。

ESAや日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)など、ステーション建設に投資した他の国々はISSの完成に懸念を表明したが、これに対し宇宙運用局長のウィリアム・H・ガーステンマイヤー(William H. Gerstenmaier)は、計画には柔軟性がありシャトルは2007年には6ヶ月で3回の飛行を成功させていること、NASAは危機的な日程にも対応できる能力があることなどを説明した。

90年代を通して、NASAは議会の財政削減にともなう予算の縮小に直面してきた。第9代長官で、「より早く、より良く、より安く」の標語の生みの親であるダニエル・ゴールディン(Daniel Goldin)は、進行中の多彩な惑星探査計画(ディスカバリー計画)は、経費を削減することで継続が可能であると提案した。1999年マーズ・クライメイト・オービター(Mars Climate Orbiter)とマーズ・ポーラー・ランダー(Mars Polar Lander)の2機が失敗したのはこの経費削減が原因であると批判を浴びたが、一方でスペースシャトルは2006年12月までに116回の飛行に成功していた。
NASAの宇宙飛行計画

NASAは21世紀初頭までに150の有人宇宙飛行を含む多数の宇宙計画を成功させてきた。中でも著名なのは、11号による史上初の月面着陸を含む、一連のアポロ計画である。スペースシャトルチャレンジャー号コロンビア号の事故により、14名の搭乗員全員の命が失われるという大きな障害に見舞われた。シャトルはロシアの宇宙ステーションミールとのドッキングを果たし、現在はロシア・日本カナダ欧州宇宙機関など世界の多数の国々が共同参加している国際宇宙ステーションへのドッキングが可能である。

無人飛行計画もまた多数行われており、太陽系の7つの惑星(水星・金星・火星・木星・土星・天王星海王星)はいずれも少なくとも一度は探査機が訪れ、1997年に打ち上げられたカッシーニ(Cassini)探査機は2004年の半ばに土星の周回軌道に乗り、土星表面やその衛星を探査している。カッシーニはNASAのジェット推進研究所と欧州宇宙機関による、20年以上におよぶ国際協力のたまものであった。またパイオニア1011号およびボイジャー12号の4機は太陽系を離れた。NASAは現在の所、小惑星帯を越えて太陽系の外側へ探査機を送り込んだ唯一の宇宙機関である。いくつかの小惑星や彗星にも探査機が接近し、NEARシューメーカーは史上初の小惑星への着陸を行った。
火星探査詳細は「火星探査」および「火星探査機」を参照マーズ・リコネッサンス・オービター

火星に対しては、生命の存在や地質気候についてを観察をする目的で多数の探査計画が行われてきた。火星探査機はすべてカリフォルニア州パサデナのジェット推進研究所で作成されている。

マリナー計画バイキング計画に続き、1996年に打ち上げられた「マーズ・パスファインダー(Mars Pathfinder)」は翌年に火星に20年ぶりに着陸し、同時期に打ち上げられた「マーズ・グローバル・サーベイヤー(Mars Global Surveyor)」は上空から火星を観測した。

2001年に打ち上げられた「2001マーズ・オデッセイ(Mars Odyssey)」は2011年初頭時点でも火星上空から観測を続けていて、2003年に打ち上げられた「マーズ・エクスプロレーション・ローバー(Mars Exploration Rover、MER)」 のローバー「スピリット(Spirit)」と「オポチュニティ(Opportunity)」は、2004年の初頭以来グセフ(Gusev)クレーターメリディアニ平原(Meridiani Planum)で当初予定していたより17倍もの長期間に渡って運用され続けている。2005年には「マーズ・リコネッサンス・オービター(Mars Reconnaissance Orbiter)」が打ち上げられ、2011年初頭時点でも火星上空から観測が続けられている。2007年には「フェニックス(Phoenix Mars Lander)」が打ち上げられ、2008年5月25日に火星の北極付近に着陸し、同年6月のロボットアームによる土壌掘削調査により土壌中から氷らしきものを発見した。

2008年5月25日、「豪腕」「改革屋」の異名を持つ科学ミッション部門の副長官アラン・ステム(Alan Stem)が辞任した。伝聞によると在任中の4月11日、アランは「2001マーズ・オデッセイ(Mars Odyssey)」 および「マーズ・エクスプロレーション・ローバー(Mars Exploration Rover、MER)」 の予算のカットを指示したが、グリフィン長官に覆されたとのことである。この削減案は、マーズ・サイエンス・ラボラトリーにかかる経費の超過を相殺するためのものであった。アランは「自分が辞任する理由はMERに関わるものではない」とし、「MERの予算をカットしようとした人間は自分ではない」とも述べた。彼は1年ほどの勤務の間に、「NASAの重要な科学実験計画を再建し、大きな変革をもたらした」と評価されたが、辞めた理由は「健全な計画や、政治的に微妙な問題を含むような基礎研究が中止されることを避けるためだった」と語っている。グリフィン長官は基礎研究のような地味な部分の予算を削りたがる傾向を持っており、それを拒否したことがアランを辞任に導いたのではないかと言われている。
NASAの科学研究
オゾン層破壊

20世紀の中盤からNASAは地球観測のための計画を増加させ、環境調査を行ってきた。その成果の一つが1980年代に打ち上げられた「地球観測システム(Earth Observing System、EOS)」で、オゾン層の破壊のような地球的規模の環境問題を監視することが可能となった。

また初の世界的規模の測量は、1978年にゴダード宇宙研究所の科学者たちにより、ニンバス(Nimbus)7号を使用して行われた。
塩湖の蒸発およびエネルギー管理

国家的規模の自然復旧計画の中の一つとして、NASAは南サンフランシスコ湾の61平方キロメートルにおよぶ政府による塩湖干拓事業が、周辺の環境にどのような影響を及ぼしているのかを衛星を使用して観察している。

またNASAは、環境破壊の予防とエネルギーの削減および水資源の確保に直結する計画に、全機関をあげて取り組んでいる。これらの事実により、アメリカ政府の環境問題に関わる専門機関はNASAであることは明らかである。
地球科学事業

地球科学事業(Earth Science Enterprise)の主目的は、自然に対する理解を深め人間が地球環境に与えた変化を知ることである。そのためNASAは、その目的を達成するために関係諸機関と長年にわたり協力してきた。2000年代末までに同事業が行ってきた計画は、以下のとおりである。

炭素管理のための炭素分離評価(Carbon sequestration for Carbon Management)

国防のための大気および水質に関する早期警戒システム(Early warning systems for air and water quality for Homeland Security)

エネルギー予想のためのより高度な天気予報(Enhanced weather predication for Energy Forecasting)

沿岸管理のための環境指標(Environmental indicators for Coastal Management)

地域社会発展管理のための環境指標(Environmental indicators for Community Growth Management)

絶滅危機に瀕する生物種のための環境モデル(Environmental models for Biological Invasive Species)

大気汚染管理のための国家的および地球的規模の大気の計測および予測(Regional to national to international atmospheric measurements and predictions for Air Quality Management)

水資源管理および保護のための水循環の研究(Water cycle science for Water Management and Conservation)

NASAは国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory)と協力して、世界的規模の太陽資源地図を作成している。またDNAPL重非水液による水質汚染を除去するための、革新的な技術を評価する取り組みも続けている。


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