NAND型フラッシュメモリ
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寿命「フラッシュメモリ#寿命」も参照

フラッシュメモリにも寿命がある。書き換え可能回数に上限があるほか、記録内容の保持期間も有限(最大で10年から数十年)であり、劣化により書き込んだ情報はいつか失われる。また回路構造上、NOR型よりもNAND型の方が劣化が進みやすい。また、データを常に記録するような用途で使用すると、特性上急激な劣化(不良ブロック)が発生し、製品寿命が著しく短くなることが予測されるという[5]
書き換え回数の制限

浮遊ゲートへ電子の注入と引き抜きを何度も繰り返すと、トンネル酸化膜 (Tunnel Oxide) と呼ばれる絶縁層である酸化膜を電子が通過するために、格子欠陥と呼ばれる、電子が通過しやすい箇所が増大していき、この層が劣化してゆく[注釈 2]。やがて格子欠陥が層を貫通し電子が通過してしまい、正常に情報の記録が行えないセルが生じ、このセルを含むブロックは不良ブロックとなる。この時の誤りは後述の誤り訂正の仕組みでかなりの程度までは訂正される。この一度生じた不良ブロックは回復することなく、この不良ブロックを使用しないように管理をする必要がある。

一般的なデータ書き込みおよび消去後、不良ブロックの検知処理を行い、不良ブロックを管理するロジックが組み込まれている。不良ブロックと検知されたブロックは冗長バイト内に不良ブロックを示すフラグ情報が書き込まれる。

書き換え頻度の上限回数は各社の企業秘密であり、公表はされていないが、SLCで10万回程度[2]、MLCで1万回程度の消去・書き込みが上限ではないかと言われている[要出典]。

メモリセルに対する読み書きによってゲート酸化膜の劣化が進行すると、電荷の蓄積量が当初の設計値とずれてしまい、"0"と"1"の差異が判別できなくなることで寿命となるが、読み書きが全く行われないブロックでも近隣セルの動作に伴って電圧が加わるため、「読み出しディスターブ」 (Read Disturb) と呼ばれる劣化が進行する[6]
データのエラー訂正

NAND型の欠点として、書き込み時のエラービットの発生が比較的多いことが挙げられる。これは、書き込み時に過剰な電子が浮遊ゲート内に注入されてしまうことにより、読み出し時にセルからの出力電圧異常が発生することや、書き換え回数の上限に起因する。このためNAND型では、ページ内の誤り訂正コードを演算し、冗長記憶エリアにこの誤り訂正コードを書き込む。

また、読み出し時に要求の記憶番地に該当するユーザデータと誤り訂正コードを演算し誤りがないか確認し、誤りがあれば訂正処理を行い、必要ならば不良ブロック処理を行う。
ウェアレベリング詳細は「ウェアレベリング」を参照

NAND型ではデータの書き換えおよび消去を繰り返すとセルが劣化し、データを書き込むことができなくなる。このため特定のブロックのみにデータの書き込み消去が集中するとそのブロックだけ早く寿命を迎えてしまう結果をもたらす。

この現象を回避するのがウェアレベリングである。ウェアレベリングにはいくつかの手法があるが、NAND型フラッシュメモリを使った記憶媒体では、メモリチップ外部からのアドレス信号をチップ内部的に異なるアドレスに変換して、各ブロックの書き込み消去回数が平準化するようにする手法が広く用いられている。またこのアドレス変換情報もNAND型フラッシュメモリ内に書き込まれて保存される。なお、この変換アルゴリズムは複数存在し、記憶媒体のメーカの特許等になっている。
NAND型フラッシュメモリ市場規模

2001年ごろまでは、フラッシュメモリの市場規模全体からみてもNAND型は約10%程度を占めるに過ぎなかった。2003年頃からNAND型フラッシュメモリが成長し、金額ベースで2001年には全世界約8億ドルだったものが、2004年には約72億ドル規模となった。

NAND型の市場規模拡大に伴い、ビット当たりの単価も大幅に下落した。2006年にはワンチップに2ギガバイト(GBytes)の容量を持つものも登場し、小容量ハードディスクとの競合が始まっている。

また、2008年8月に東芝がチップ当り32GbitのNAND型フラッシュメモリを発表し、同年第4四半期から量産を開始している[7]。2013年7月には、米Micron Technologyが128Gbit MLC NANDフラッシュメモリを発表し、同年第4四半期から出荷を開始する[8]
世界シェア

2021年現在の世界シェアは、1位がサムスン電子で30.1%、2位がキオクシア(旧東芝メモリ)で20%、3位がSKハイニックスで13.3%、4位がウエスタンデジタルで13.1%、5位がマイクロン・テクノロジーで10.5%である[9]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ NAND型の初期では、1ページ当たり512バイト(ユーザデータ)+16(冗長エリア)=528バイト、1ブロック当たり32ページ=16,896バイト(ユーザデータ16,384バイト)が一般的だった。
^ 層が薄くなる模式図がよくあるが、層に亀裂が生じるイメージがより近い。層そのものがさらに薄くなるわけではない

出典^ a b c d e SHG2A, p. 3.
^ a b c d SHG2A, p. 4.
^ a b 松川 2011, p. 24.
^ a b 松川 2011, p. 25.
^ 竹内健 (2008年4月21日). “HDD完全代替に向けてOSによる対応が急務”. 日経エレクトロニクス: 67-77. ⇒オリジナルの2016-01-14時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160114133006/http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20090219/165972/ 2012年2月13日閲覧。. 
^ “ ⇒故障メカニズム”. 東芝セミコンダクター&ストレージ (2011年4月). 2012年2月24日閲覧。[リンク切れ]
^ 出典:日経マーケット・アクセス[要文献特定詳細情報]
^ “Micron、16nmプロセス/128GbitのNANDフラッシュをサンプル出荷開始”. PC Watch. https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/607916.html 2013年7月17日閲覧。 
^ “NAND Flash Memory Market - Growth, Trends, COVID-19 Impact, and Forecasts (2022-2027)” (2022年8月). 2022年9月2日閲覧。

参考文献

「SHG2Aシリーズ」(PDF)『TECH JOURNAL』、TDK、2022年5月4日閲覧。 

松川, 尚弘「NANDフラッシュメモリの書換え条件とデータ保持寿命」(PDF)『東芝レビュー』第66巻第9号、東芝、2011年9月、24-27頁、2022年5月4日閲覧。 

関連項目

NOR型フラッシュメモリ

フラッシュメモリ

USBメモリ

ソリッドステートドライブ

舛岡富士雄 - 発明者


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