N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド
IUPAC名
N,N'-dicyclohexylcarbodiimide
別称DCC
識別情報
CAS登録番号538-75-0
35 °C, 308 K, 95 °F
沸点
122°C (395 K at 6 mmHg)
水への溶解度不溶
危険性
NFPA 704130
RフレーズR22 R24 R41 R43
SフレーズS24 S26 S37/39 S45
引火点113 °C
関連する物質
関連するカルボジイミドN,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(英語版) (DIC)、
1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩 (EDC)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド (N,N'-Dicyclohexylcarbodiimide, DCC) は分子式C13H22N2で表される有機化合物であり、主にペプチド合成におけるアミノ酸カップリングや、脱水縮合剤に用いられる[1]。標準状態においては、刺激臭のする白色結晶として存在している[1]。融点が低いので取り扱いを容易にするためにしばしば溶融させて利用される。ジクロロメタンやテトラヒドロフラン、アセトニトリルおよびジメチルホルムアミドなどの有機溶媒に対しては高い溶解度を示すが、水に対しては不溶である。ジシクロヘキシルカルボジイミドはしばしばDCCと略して呼ばれる。 DCC中のカルボジイミド基 (N=C=N) を含むC-N=C=N-Cの部分は直線構造をしており、アレンの構造と相関している。カルボジイミドを特徴づける3つの主要な共鳴構造は以下の通りである。 RN = C = NR ⇄ RN + ≡ C − N − R ⇄ RN − − C ≡ N + R {\displaystyle {\ce {RN=C=NR\ \rightleftarrows \ RN^{+}\equiv C-N^{-}R\ \rightleftarrows \ RN^{-}-C\equiv N^{+}R}}} DCCのN=C=N結合は赤外分光スペクトルにおいて2117 cm?1に特徴的な吸収を与える[2]。15N NMRでは硝酸を標準物質として高磁場側275.0 ppmに特徴的なケミカルシフトが見られ、13C NMRではTMSを標準物質として低磁場側139 ppmに特徴的なピークが見られる[3]。 DCCのいくつかの合成方法の内、Pri-Baraらは酢酸パラジウム(II)
構造およびスペクトル
合成
Tangらは、2つのイソシアン酸塩をOP(MeNCH2CH2)3Nを触媒として用いて縮合させる方法によって、92 %の収率でDCCを合成した[2]。均一系触媒
DCCはまた、Jaszayらによって相間移動触媒を用いてジシクロヘキシル尿素から合成されている。二置換尿素であるジシクロヘキシル尿素、アレーンスルホニルクロライドおよび炭酸カリウムをベンジルトリエチルアンモニウムクロリド存在下、トルエン溶媒中で反応させることによって、50 %の収率でDCCが得られている[5]。相間移動触媒 DCCはアミド、ケトン、ニトリルを合成する際の脱水剤である。これらの反応において、DCCは水和して非水溶性のジシクロヘキシル尿素 (DCU) を形成する。DCCはまた、第二級アルコールをワルデン反転させるためにも用いることができる。 DCCのジメチルスルホキシド (DMSO) 溶液は、いわゆるフィッツナー・モファット酸化 アルコール類はまた、DCCを用いて脱水することもできる。この反応は、対応するアルケンを生成するために水素化分解されたO-アシルウレア中間体を与えることで進行する。 RCHOHCH 2 R ′ + ( C 6 H 11 N ) 2 C ⟶ RCH = CHR ′ + ( C 6 H 11 NH ) 2 CO {\displaystyle {\ce {RCHOHCH2R'\ + (C6H11N)2C -> RCH=CHR'\ + (C6H11NH)2CO}}}
反応
フィッツナー・モファット酸化
脱水