この項目では、2021年の映画について説明しています。その他の用法については「ミスター・ノーバディ (曖昧さ回避)」をご覧ください。
Mr.ノーバディ
Nobody
監督イリヤ・ナイシュラー
『Mr.ノーバディ』(原題:Nobody)は、2021年のアメリカのアクション・スリラー映画。仕事でも家庭でも尊敬されない平凡で冴えない中年男だが、実は過去に政府機関で執行者として働いていた主人公が、凶悪なマフィアと抗争に至る。監督はイリヤ・ナイシュラー(英語版)、脚本はデレク・コルスタッド(英語版)。出演はボブ・オデンカーク、コニー・ニールセン、RZA、クリストファー・ロイド、アレクセイ・セレブリャコフ(英語版)など。主演のオデンカークはプロデューサーも務めた。
2021年3月26日に、ユニバーサル・ピクチャーズによって米国で劇場公開された。この映画は、批評家たちから総じて肯定的なレビューを受けた。
題にある「ノーバディ(Nobody)」は取るに足らない、つまらない人間を意味するのと同時に「誰でもない」「該当者なし」の意味も含意し、劇中で展開される。 妻と2人の子供を持つハッチ・マンセルは、義父が経営する金型工場に会計士として務めている。彼は郊外の自宅と職場を路線バスで往復し、帰りには老人ホームに入居する父デイビッドを訪問する単調な生活を送り、家族からも軽んじられる平凡で冴えない(ノーバディな)中年男であった。ある夜、家に若い男女2人組の強盗が入る。ハッチは反撃するチャンスがあったが、葛藤の末にこれを無抵抗で見逃し、息子から失望される。後日、盗まれたかもしれない娘のブレスレットを取り返そうと元FBI捜査官であった父の捜査官バッチを使い、犯人の住居を突き止める。犯人夫婦に銃を突きつけ、自分の腕時計は取り返すものの、酸素吸入器をつけた乳児を見て強盗の動機を察し、怒りの矛先を失ってそのまま立ち去る。悶々とした帰りのバス内で、酔っ払ったロシア人のチンピラグループが乗り込んでくる。彼らに絡まれた若い女性客を助けるため、ハッチは怒りを爆発させ、満身創痍になりながらも彼らを叩きのめす。 実はチンピラらの中にロシアンマフィア、クズネストフ・ファミリーのボスであるユリアン・クズネストフの実弟テディがいた。ユリアンはロシアンマフィアたちの基金「オブシャク」を任されているほどの有力者であり、凶暴な性格で知られていた。そして先の乱闘の傷が元で間もなくテディは亡くなり、ユリアンは復讐を誓う。彼は犯人捜しを始め、最終的にハッチに辿り着くものの、国防省の情報を探らせていた部下は辞職を願い出るなど、その過去については謎を残す。とりあえずユリアンは得られた情報から、側近のパヴェル率いる部下たちに彼の自宅を襲撃するように命じる。 一方、久しぶりの暴力の発散で晴れ晴れとしたハッチは、家族に明るく接するようになる。その中、謎の知人の電話よりユリアンに注意することと、そのためにかつての仕事仲間バーバー(理髪師)に会うよう伝えられる。バーバーに会ったハッチは、彼からユリアンの詳細な情報を教えられ、自分が危険な人物に狙われたことを知る。夕食時、自宅で家族と団欒するハッチは、襲撃者の接近に気づくと家族を地下のセーフルームに避難させる。そして重武装した襲撃者たちを返り討ちにし、一度はパヴェルに拘束されるも機転で逆襲する。ユリアンはまたデイビッドにも襲撃者を差し向けていたが、彼らはデイビッドのショットガンで返り討ちに遭う。 家族を避難させたハッチは襲撃者たちの死体を隠匿するため自宅に火を放つと平穏な生活を取り戻すためにユリアンとの抗争を決意する。まず隠し財産の金塊で義父の金型工場を買い取ると、罠を作り始める。そしてユリアン自身は不在である彼のアジトを単身で襲撃し、「オブシャク」の資金や、彼の絵画コレクションを焼き払う。その足で、今度はユリアンがいる彼が経営するクラブに平然と乗り込み、彼にサシの対話を要求してお前のアジトを焼いたからこれで手打ちにしようと言い放つ。激怒するユリアンは部下にハッチの殺害を命じるが、彼は盗んだ隣人のスポーツカーで逃亡し、彼らを罠を仕掛けた金型工場へと誘い込む。工場の駐車場にてハッチは銃撃で負傷し、ピンチに陥るも、工場内にはデイビッドや異母兄弟のハリーが潜んでおり、助けられる。彼ら3人は自前の銃器や、工場内の罠を使って、次々とマフィアたちを返り討ちにしていき、最終的にハッチはユリアンを殺害する。 駆けつけてきた警察から2人を逃したハッチは一人逮捕されて取り調べを受け、捜査官からお前は何者だと問われると「自分はノーバディだ(何者でもない)」と答える。そして3ヶ月後、家族と合流したハッチは、妻と新居を内見し、新たな平凡な生活に期待する。
プロット
登場人物
主人公
ハッチ・マンセル
演 - ボブ・オデンカーク、日本語吹替 - 安原義人[3]主人公。妻と二児を抱え、会計士として金型工場に務める平凡で冴えない中年男。劇中で明確にはされないが、かつて3文字の政府機関にて(監察官という意味での)「会計士」と呼ばれる殺人も厭わない内部統制的な職に就いていたことが示唆される。ある一件で平凡な生活に憧れ、お前には無理だと上司に指摘されながらも、引退したという。現役時代の個人情報は極秘扱いになっており、国防省の地下倉庫にかろうじて「NOBODY(何もない)」と印字された資料だけが残る。
ハッチの家族
ベッカ・マンセル
演 - コニー・ニールセン、日本語吹替 - 日野由利加[3]ハッチの妻。不動産業で成功している実業家。ハッチからは愛されているが、夫婦仲は冷めている。
ブレイク・マンセル
演 - ゲージ・マンロー、日本語吹替 - バトリ勝悟[3]ハッチの息子。10代の少年で、父ハッチを軽視している。冒頭の強盗事件の一件でさらに父を軽んじるようになる。
サミー・マンセル
演 - ペイズリー・カドラス、日本語吹替 - 佐藤里緒[3]ハッチの娘。まだ幼く、彼女がお気に入りだった「猫のブレスレット」の行方を尋ねたことが、ハッチが犯人捜しを始めるきっかけとなる。
ハッチの親族
デイビッド・マンセル
演 - クリストファー・ロイド、日本語吹替 - 側見民雄[3]ハッチの実父。元FBI捜査官。現在は老人ホームで暮らし、自室のテレビで西部劇を観る長閑な余生を送る。普段は呆けているように見えるが、息子同様に現役時代のような喧騒を求めている。得物はショットガン。
ハリー・マンセル
演 - RZA、日本語吹替 - 志村知幸[3]ハッチの異母兄弟で、黒人ハーフ。物語前半からハッチが無線機で話す相手として登場する(ハッチとの関係は終盤で明らかになる)。ユリアンとの抗争では見捨てるようなことを言いつつも最後は父と共に駆けつける。得物はスナイパーライフルで近距離戦にも長ける。
エディ・ウィリアムズ
演 - マイケル・アイアンサイド、日本語吹替 - 廣田行生[3]ハッチの義父(ベッカの父)で、金型工場のオーナー。豪放な性格でハッチの理解者だが、金銭にがめつい一面もある。引退を考えており、一代で築いた工場を高く売却したいと考えている。
チャーリー・ウィリアムズ
演 - ビリー・マクレラン、日本語吹替 - 中島智彦[3]ハッチの義弟(ベッカの弟)で、金型工場の役員。義兄ハッチをやや下に見ている。
クズネストフ・ファミリー
ユリアン・クズネストフ
演 - アレクセイ・セレブリャコフ(英語版