DirectXの機能のうち、大部分はCOMインターフェイスの形で提供されている[10]。DirectXのランタイムライブラリとSDKは、いずれもマイクロソフトのウェブサイトから無償でダウンロードできるが、プロプライエタリでソースコードは非公開である。また、単独のDirectX SDKは「June 2010」が最終バージョンであり、Windows 8向けの開発キットであるWindows SDK 8.0がリリースされた際にWindows SDKへと統合された[11]。PIX for WindowsなどのツールやD3DXライブラリはSDK統合の際に廃止され、代替としてGraphics DiagnosticsがMicrosoft Visual Studioに用意されたり、DirectX Tool Kitなどのオープンソースライブラリが開発・公開されたりしている(#補助ライブラリ)。
DirectX Graphics: DirectX 8からの名称。
Direct3D (D3D) : 3次元グラフィックス。DirectXの進化の歴史においてもっとも重要なコンポーネントとなっており、DirectXといえば間接的にDirect3Dを指していることがある。
DirectCompute: Windows 7以降で利用可能な、GPGPU用API。実際にはDirect3D 11/12の一部である。DirectX 11をサポートするためのプラットフォーム更新プログラムとしてWindows Vistaにもバックポートされた。
DirectML (Direct Machine Learning) : Direct3D 12上に構築された、機械学習向けのローレベルなアクセラレーションライブラリ[12]。Windows 10 1903以降で利用可能。
DirectX Graphics Infrastructure (DXGI) : Direct3D 10以降のグラフィックス基盤API。デバイスとの通信など、ローレベルタスクを担当する。
Direct2D (D2D) : Windows 7以降で利用可能な、新しい2次元グラフィックスAPI。バージョン1.0はWindows Vistaにもバックポートされた。
DirectWrite: Windows 7以降で利用可能な、新しい高品位テキスト描画API。バージョン1.0はWindows Vistaにもバックポートされた。
DirectDraw: 2次元グラフィックス(DirectX 7まで存在したが、DirectX 8以降はDirect3Dに吸収された)。
DirectComposition: Windows 8以降で利用可能な、変形やアニメーションなどを伴う高性能なビットマップ合成を可能にするAPI[13]。DWM機能の一部をアプリケーション側に解放し、シームレスな連携を可能にする[14]。
DirectX Audio: DirectX 8からの名称。
XAudio2: XboxのサウンドAPIであるXAudioから発展したもの。DirectSoundの後継。
X3DAudio: XAudio2と組み合わせて使用される、空間音響ライブラリ。
XACT: オーサリングツールを含む高レベルオーディオエンジン。更新終了。
DirectSound: サウンド再生および録音。更新終了。
DirectSound3D (DS3D) : 3次元サウンド再生。
DirectMusic
DirectX APIは基本的にSide-by-Sideであり、複数のバージョンが競合することなく共存できるため、例えばDirectX 11がインストールされている環境でもDirectX 10およびそれ以前のバージョンを利用することは可能である。また、更新が終了したAPIのうち、OSに標準インストールされているコンポーネントに関しては、Windows 10などの新しいOSでも引き続きデスクトップアプリケーションにて標準的に利用すること自体は可能だが、Direct3D 8などのようにネイティブ64ビット版が用意されていないものも存在する[21]。 DirectX 12およびDirectX 11.3はWindows 10 (Windows 10 for Desktop, Windows 10 for Xbox One, Windows 10 for Phone) 専用のバージョンである。PC用Windows 10のほか、Xbox One用Windows 10にも対応する[22]。DirectX 12はWindows Phone (Windows 10 Mobile/Windows 10 IoT) にも対応することが報じられている[23]が、DirectX 12/WDDM 2.0に対応するデバイスドライバーおよび機能レベル11_0以上に対応するハードウェアが必須となる。 DirectX 11.2はWindows 8.1以降/Xbox One専用のバージョンである[24]。 Windows 7(一部DirectX 11.1に対応)/Windows VistaにおいてはDirectX 11.0、Windows XP・2000/Me/98/98SEはDirectX 9(9.0c)、Windows 95はDirectX 8(8.0a)が最新バージョンとなる。ただしPC-9800シリーズの場合はDirectX 7(7.0a)が最新バージョンであり、それ以上のバージョンは制限を解除しないとインストールできないようになっている[25]。またWindows NT 4.0ではSP3以降に付随するDirectX 3相当機能が最新バージョンとなる。 一部のバージョンに関しては、Windows UpdateやWindowsストアを通じて、OSが対応する最新のDirectXをサービスパックなどの機能更新プログラムとともに入手することが可能である。例えばWindows XPの場合、Windows Update経由でSP2と同時にDirectX 9.0cを入手できる。Windows Vistaの場合、SP1と同時にDirectX 10.1を、またSP2+Platform Updateと同時にDirectX 11を入手できる[3]。なお、DirectX 10以降は、Windows Display Driver Modelの導入を始めとして、Windowsのグラフィックスアーキテクチャに大規模な修正が加えられたことから、Windows XPなどの旧Windows製品では利用できない。新しいOSでは、対応する最新バージョンよりも古いバージョンのDirectXに関しても基本的にすべて利用可能である。 バージョン概要日付
リリース履歴
WinG、Display Control InterfaceWindows 3.1時代。
DirectX 1.0ゲーム作成用のAPI集Game SDKとして発表された。1995年10月
DirectX 2.0Direct3D (Immediate Mode, Retained Mode) の登場。1996年6月
DirectX 3.0[26]DirectSound3D登場、DirectInputの統合。Windows NT 4.0ではSP3以降に同梱。1996年9月25日
ActiveMovie1DirectShowの前身。ActiveXの1コンポーネントであり、DirectXには含まれない。1996年11月5日
DirectX 5.0Direct3DにDrawPrimitive(OpenGLのようなプリミティブ単位の描画機能)が登場。Windows 98にはDirectX 5.2が搭載された。1997年8月4日
DirectX MediaDirectShowおよびDirectAnimationのみ頒布。「DirectX」は総称だが、特に区別する場合は「DirectX Foundation」「DirectX Media」と使い分ける事がある。1997年12月1日
DirectX 6.03D描画向けの「Direct3D」の強化、AMD提唱の3D向け命令セット「AMD 3DNow!」への対応や、ジオメトリパイプラインの見直し、テクスチャデータ圧縮機能のサポートなどにより高速化が図られたほか、シングルパス・マルチテクスチャやバンプマッピングのサポートなど表現力の向上。