MZ-700(えむぜっとななひゃく)とは、シャープのMZシリーズに属する8ビットパーソナルコンピュータである。1982年11月15日発売[1]された。目次 前身であるMZ-80Kシリーズをベースに、高速化、カラー化を主とした機能拡張およびコストダウンを行い、低価格なホビーパソコンとして設計された機種である。 詳細は「クリーン設計」を参照 従来機種と同じく低レベルサポートルーチンと、内蔵データレコーダからソフトウェアを起動するためのモニタのみをROMとしてもち、システム本体は二次記憶装置から起動する。この機種では、シャープ製のS-BASICとハドソン製のHu-BASICの2つのBASICがカセットテープで標準添付され、命令セットの違う二つのBASICをユーザが選択可能になっている。 CPUのクロック周波数は2MHzから3.579545MHz[注 1]に高速化された。 従来単色であった表示はアトリビュートエリアが追加され、文字色、背景色を1文字毎に任意の8色から指定することが可能になった。また、キャラクタジェネレータが拡張され、アルファベットの小文字とひらがな他、いくつかの記号が追加・変更[注 2]された。アルファベットの大文字およびカタカナのディスプレイコード[注 3]に対してアトリビュートの第7ビットを1にすると、アルファベットは小文字、カナはひらがなに切り替わって表示される。 RAMは64Kバイトフル実装となった。これに伴いROM・テキストVRAM・メモリマップドI/Oと重なるアドレスにはバンク切り換えを適用し、MZ-80Kシリーズとのハードウェアの互換性を保っている。新設されたモニタ1Z-009Aはカラー表示や新配列のキーボードをサポートし、メモリエディットを可能にするなどの機能強化を行いながらも主要なルーチンのエントリアドレスはMZ-80KシリーズのモニタSP-1002に合わせており、従来のソフトウェアの多くが変更なしで動作可能である。同社別系統のMZ-2000が前身機種との互換性をBASICレベルにとどめて機能を拡張したのに対し、ハードウェア・ソフトウェアともにMZ-80Kシリーズとの互換性に気を配った設計になっている。 これらの工夫により多くのソフトウェアをそのまま従来機種から引き継ぐことが可能であったが、未公開サブルーチンを使用したプログラム、CPUクロックやキーボードの配列に強く依存するゲーム等では修正を要するものもあった。そういった場合でも、該当領域がバンク切り替えになっているため、モニタ部分のメモリ空間をRAMに割り当ててSP-1002を読み込み、キーレイアウトを変更するなどのパッチを当てて動作させることも可能であった。 本体に添付されていたデモプログラムには、チェッカ(市松模様)のキャラクタを使用して擬似的に中間色を出すもの等、その後の展開につながるものも含まれ、MZ-80K由来の豊富なキャラクタ群もゲーム画面を構成する事などに役立った。 従来のMZシリーズはシステム全体を一つの筐体で実現する形式、形状を採っており、それが同シリーズの特徴でもあったが、カラー出力に対応しつつ低価格を目指したため従来のようなオールインワン設計では価格が跳ね上がる事から、ディスプレイを切り離した設計になった。 また、システムとしての価格を抑えるため、デジタルRGBディスプレイだけではなく、家庭用テレビに接続できるようコンポジットビデオやRF出力が用意されたが、開発側としては妥協の産物[2]とのことである。 ディスプレイ装置だけではなく、データレコーダの代用として家庭用テープレコーダーを利用する端子も設けられており、家庭にある民生機器の流用によってシステム全体のコストを抑えられるように設計されている。 プロッタプリンターを本体上部に内蔵できるようになっている。このプロッタプリンターは、ペンの左右の動きをX軸、紙の上下の動きをY軸として本来高価なプロッターを安価に実現したものである。黒・赤・青・緑の4色のボールペンをヘッドに装着し、ヘッドを回転させてペンの色を変更できるようになっている。その設計から、斜線をまっすぐに引くことはできず、斜線の描画は短い縦横の線で構成されるため階段状となる。 この仕様に伴い、プリンターインタフェースが標準搭載されている。 添付のBASICには画面出力をプリンタに振り向けるコマンドが存在するなど、限定的ではあるもののCRTなしでも操作が可能になっており、オプションのキャリングケースも含め、モバイル用途も考慮して設計されたようである。 この系譜ではMZ-1200からANK文字列は標準的なASCII配列に近い配置になっていたが、本機では初心者向けという位置づけから、括弧や加減乗除等の記号がSHIFTキーを併用せずに入力できる位置に移動された他、カナ入力時のキー配列がJIS配列から五十音順に並べ替えられた。 また、テンキーは設置されなかったが、従来機種では上下及び左右がSHIFTの併用によって各々1キーで兼用になっていたカーソルキーが上下左右各々の方向を示すキーに独立しキーボード右側に設置された。 キーボードスキャンはPPI(8255)を通じてCPUが行い、複数の同時キー入力も判別が可能であった。 国内で発売されたモデルは以下の三種類である。 国内版の仕様は以下のとおりである。
1 概要
1.1 クリーン設計
1.2 MZ-80Kシリーズのカラー対応後継機
1.3 MZシリーズ初のディスプレイ分離タイプ
1.4 プロッタプリンターの内蔵
1.5 キー配列の変更
2 ハードウェア
2.1 モデルラインナップ
2.2 仕様
2.2.1 搭載インターフェイス
3 ソフトウェア
4 周辺機器
4.1 シャープ純正オプション
4.2 サードパーティーから発売されたオプション
5 国内における状況
6 実機以外での展開
7 海外展開
8 脚注
8.1 注釈
8.2 出典
9 関連項目
10 外部リンク
概要
クリーン設計
MZ-80Kシリーズのカラー対応後継機
MZシリーズ初のディスプレイ分離タイプ
プロッタプリンターの内蔵
キー配列の変更
ハードウェア
モデルラインナップ
MZ-711 データレコーダとプロッタプリンターが内蔵されていない基本モデル。標準価格 79,800円。
MZ-721 データレコーダが内蔵されたモデル。標準価格 89,800円。
MZ-731 データレコーダに加え、プロッタプリンターが内蔵されたモデル。標準価格 128,000円。
仕様
CPU: Z-80A 3.579545MHz
RAM:
メイン 64KB
テキストVRAM及び、アトリビュートVRAM 4KB
ROM:
CGROM 4KB
各種キャラクタパターンが格納されている。
モニタ 4KB
通常はモニタが直接起動し、コマンドによって言語のロードなど処理を決定する。拡張ROMが存在する場合は$E800から配置されたROMが自動的に呼び出される。FDDからはコマンドから起動できる等、外付けのハードウェアからの起動にも対応する。[注 4]
音源従来のMZシリーズと同じく8253の矩形波出力モードを利用した単音、3オクターブでの演奏が可能。通常は周期を指定して鳴らすが、CPUが直接トリガを掛け、制御することも可能である。内蔵スピーカー出力は最大500mW
表示能力40桁×25行8色をキャラクタごとに文字色背景色を指定可能。1キャラクタを4分割した2×2ピクセルのパターンがあるため、80×50ピクセルを40×25単位での色指定をして擬似グラフィックスとして扱うことも可能。
電源 AC 100V ±10% 50/60Hz 消費電力 20W
使用条件 温度/使用時 0℃ ? 35℃、湿度/使用時 85%以下
外形寸法・重量
MZ-731: 440(幅)×305(奥行)×102(高さ)mm・4.6kg
MZ-721: 440(幅)×305(奥行)×86(高さ)mm・4.0kg
MZ-711: 440(幅)×305(奥行)×86(高さ)mm・3.6kg
搭載インターフェイス
ジョイスティック:独自仕様5ピン×2ポート
映像出力
デジタルRGB出力(8ピンDIN)×1
コンポジットビデオ出力×1
RF出力(アナログTV1Ch/2Ch切り替え可、カラー/白黒切り替え可)×1
オーディオカセットレコーダー用端子:Read、Write各1
プリンターインタフェース:×1。コネクタ形状はカードエッジ仕様。[注 5]内蔵のプロッタプリンタと外付けのプリンタは排他使用。
ソフトウェア
S-BASIC (1Z-007B)旧機種のBASIC(SP-5030)との互換性があるシャープ製のBASICインタープリタ。標準添付品。
Hu-BASIC V2.0ハドソンによるマイクロソフトBASICの命令体系を持つBASIC。標準添付品。
1Z-009AMZ-700内蔵のROMモニタ。
MZ-2Z009MZ-700のディスクBASIC。MZ-8BIO3/MZ-1E24の制御コマンドも含まれた。添付品にブートROMが入っており、MZ-1E05に取り付け利用する。
MZ-5Z008QD-BASIC。
9Z-503MQDインタフェースに入っているQD制御を含むROMモニタ。
Size:30 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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