MZ-2000
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MZ-2000(エムゼット にせん)はシャープ1982年に発売した8ビットパーソナルコンピュータである。基本設計が同様なマイナーチェンジモデルであるMZ-2200についても、本稿で記述する。
MZ-2000
概要
MZ-80Bの後継機種
基本設計はMZ-80Bを踏襲したものになっており、BASIC使用時の動作においてはグラフィック仕様の差異や挙動が違うI/Oポートを操作する箇所以外は互換性が保たれたものになっている。入力モードを示すLEDは削除され、入力モードはソフトウェア側でカーソル形状を変化させることでフィードバックされるようになった[1]他、キーボードのキースイッチはストロークの深いしっかりしたもの物に変更された。外観もカセットデッキ部分が縦になり、全体のフットプリントが小さくなっている。また、本機はMZ-1200と共にオールインワン設計の最後の機種にもあたる。テキストVRAMバンク切り換えアドレス選択肢の減少、解像度の差異とカラー対応に伴うグラフィックスVRAMの容量やアドレス空間の変更、カセットデッキ、キーボードLEDの制御部分など、I/Oアドレスが同じにもかかわらず微妙に動作の違うポート等のハードウェア的な相違があるため、非常に似た機種でありながらBASIC以外の低レイヤー部分は互換性が高いとはいえなかった。それらの互換性の理由もあり、MZ-80BはグラフィックRAMを標準装備したMZ-80B2として併売されていた。MZ-80BをMZ-2000相当にするMZ-2000コンパチボード(SID-1001/1002)がマイコンショップ・セキグチより発売されていた。この製品では、外付けのボックス上にMZ-2000用のグラフィックボードを搭載することでカラー表示に対応していた。
クリーンコンピュータ
詳しくはクリーン設計を参照のこと。MZ-80Bの同様、MZ-2000ではInitial Program LoaderのみがROMに書き込まれており、CMT、FD、特定のメモリからの起動をサポートする。起動するシステムプログラムを自由に選択できる特徴から、BASICはシャープ純正だけでも複数、サードパーティーからもそれぞれ特徴を備えた製品が発売され、その他の言語OSを含むシステムプログラムも多数発売された。このソフトウェア的にフレキシブルであることとクリーン設計と称し、それを採用したコンピュータをカタログ上で、商品名として「クリーンコンピュータ」と表記した。その機能上、差異が明確に現れることはないが、後述のMZ-2200のIPL-ROMでは表示する文字列や一部ルーチンに手が入っており、バイナリとしては違うものが実装されている他、カタログは「パーソナルコンピュータ」の商品名に戻されている。
事業部移行後の初期機種
事業部の統合により、1982年7月発売のMZ-1200と本機以降はMZの後ろに下二桁が00を持つシリーズ名に命名規則が変更された。複数モデルが存在する機種ではその二桁はバリエーションに割り当てられた。同時に周辺機器、ソフトウェアの類はシリーズ全体で種類ごとに連番が振られた体系だったものに変更されている。MZ-1200では周辺機器の命名規則は変更されていないため本機からの変更である。
信頼性の高い電磁メカカセットデッキの内蔵
MZ-80Bから引き続き本体に内蔵されたカセットデッキは、早送り・巻き戻し、頭出し、デッキオープンなどの操作がソフトウェアによって制御でき、読み書き自体もソフトウェア制御であるため、ボーレートの指定を書き換えることで更に高速な読み書きを行えるほどのマージンや信頼性があり、手動操作の煩雑さやリードエラーに悩まされた他社製品と比較しカセットテープでの運用に利便性があった。書き込みこそシーケンシャルでしか行えないものの、前述の通り読み込みについては頭出しや巻き戻しがソフトウェア制御可能なことで、自動で任意のファイルを探しロードすることが可能になっていた。反面、純正品のフロッピーディスクドライブは標準価格が高価に設定されていることもあり、同機種のフロッピーディスクへの対応を遅らせる一因となった。そのような信頼性の高いカセットデッキではあったが、ピンチローラーの素材が経年劣化に弱く、ゴムが溶け出すなどの障害が見られた。なお、MZ-2000の型番の2000はカセットデッキのボーレートからとられたものであり、同時期に発売された下位シリーズは、MZ-1200(1200ボーの手動式データレコーダを内蔵)と名づけられている。電磁メカカセットデッキは、後にX1シリーズにもボーレートを2700ボーに高速化されて採用されている。
カラー出力が考慮された設計
サードパーティー製の周辺機器によりカラー表示を可能にした機種はあったものの、MZシリーズには純正のみの構成でカラー出力が可能な機種には存在しなかった。MZ-80Bで320×200ドット、単色2プレーンだったグラフィック画面は、640×200ドット、単色3プレーンかカラー1プレーンを表示可能な仕様に強化された。内蔵されているものが単色のグリーンディスプレイで、グラフィック表示はオプションのグラフィックボードの搭載を必要とし、カラー表示に至ってはさらに追加のグラフィックRAMを2プレーン分搭載し、カラーディスプレイを接続して初めて可能となる。カラー対応BASICもオプションであったことから、ソフトウェアはグラフィックを使うものであっても単色1プレーンのみ利用のものが多く、仕様としてはカラー出力対応にはなったもののカラー対応のソフトウェアが揃うようになるにはグラフィックRAMとカラー対応BASICを標準装備したMZ-2200の登場を待つことになった。ただし、パレットや論理演算機能などといった、CPUの負担を軽くできる機能をディスプレイコントローラが持たないため、メモリ空間に割り当てたグラフィックスVRAMに対してCPUが全ての演算を行う必要があり、よく言えば素直、悪く言えば低機能な実装になっている。テキスト画面については、全画面一括でテキストと背景色を8色から各々指定することができたが、カラー出力自体を担うチップがグラフィックVRAMの1ページ目の基板に搭載されているため、単体でのカラー出力はテキストのみの場合を含めできない。またグリーンディスプレイでは反転表示がサポートされるが、カラーディスプレイでは無視される。2画面分のVRAMを搭載できるわけではないためマルチディスプレイは不可能であるものの、出力内容はプレーンごとに指定が可能であるため、カラーCRTにカラーグラフィックスを表示し、グリーンディスプレイにはテキストによってルーペ機能相当の表示を行うソフトウェアなど、数は少ないもののカラーCRTとグリーンディスプレイでは表示内容が異なるソフトウェアも幾つか存在する。
その他
オプション機器を接続するためのインターフェイスボードを挿す拡張I/OポートはMZ-2000でもそれ自体がオプションで、MZ-80Bの6スロットから4スロットになった。プリンタインターフェイスボードとFDDインターフェイスボードは電気的仕様は同じであるもののボードサイズの違いから差し込む位置が固定されており、実質自由に使用できるのは2スロットである。また、MZ-700と共用になり、サイズが変更された後期のFDDインターフェイスは専用スロットでは幅が小さくきちんと固定できない。FDDインターフェイスは、従来機種の影響を受け負論理のFDC(MB8876、同社のX1シリーズでは正論理のMB8877を使用)を利用しているため、FDDに記録されるデータが反転した実装になっており、従来機からFDD(MZ80BF、ハード的には40x2トラックまで使えたが35トラックにストッパが取り付けられていた、後継のMZ-1F07では元から80トラック)としての仕様は70トラックであるため、市販ソフトもそれに従ったフォーマットになっている。システム自体は80トラックでも利用できるようになっており、フォーマッタが許せば80トラックを利用可能にはなっていた。そのためユーザーベースでは2D標準である80トラックが利用可能なパッチや改造があったほか、純正ドライブで84トラックまで使うオーバートラック仕様のユーティリティも存在した。ただし、オーバートラックは2Dドライブとしての仕様外であるため、互換品などではヘッドが引っかかってしまうなど故障の原因にもなった。全回路図を含めた詳細なマニュアルが添付されたほか、MZ-80シリーズで好評だった挿し絵の豊富なBASICのテキストも幾つかの修正、改訂を受け添付された。ただし、MZ-2000の仕様に含まれない命令や操作もそのまま掲載されていた。キャラクタジェネレータに内蔵されたフォントはMZ-80B由来の物で、単色画面での作表には便利であるものの他のシリーズや他社機種にない反転したANK文字が定義されているため、実質的なキャラクタ数は少ない。その他、トランプスート(絵柄マーク)をキャラクタ文字で表示させることができたので、トランプゲームなどの制作に重宝した。
ハードウェア仕様SHARP LH0080A(Z80A)

CPU

LH0080A (4MHz, シャープ製)

Z80Aセカンドソース


ROM

2KB BOOT ROM(イニシャルプログラムローダ)本体の電源を入れるとデータレコーダの蓋が開きディスプレイに「Make Ready CMT」と表示し、プログラムカセットを入れるよう促す。システムプログラムの入ったカセットが入っている場合、並びにセットした場合は自動的に読み込みを行い、システムの処理を移す。フロッピーインターフェイスが接続されている場合は、起動メニューにブートの選択肢として追加され、「Make Ready FD」とメッセージは変わる。この場合、認識、並びに起動はFDDが優先される。IPLはバンク切り替えにより実現しており、起動時にはメモリ先頭よりマッピングされ、フロッピーディスク、カセットテープからの起動をサポートするが、起動メニューに表示されない機能として、/を押しながら起動することで拡張スロット内のメモリからの起動を行うことも可能であった。この機能は純正品ではSRAMカード、QDからのブートに利用されている。読み込みは$8000からのRAM空間へ行われ、ローディング完了時に先頭領域へブロック転送を行っているため、初期システムのサイズは32KBに限定される。そのため、それ以上の容量を読み込む事が必要な場合は多段ブートの構造を取る必要があった。

2KB CG-ROM(キャラクタジェネレータ)

直接入力ができないコントロールコードも含むテキスト画面に表示するドットパターンが格納されている。改造として入れ替えたりプログラマブルにしているものも居た。


RAM

メイン 64KB 標準システム自体もここにロードされるため、言語を利用した場合全ての空間がユーザーエリアになるわけではない。また、空間のうち、$C000以降はグラフィックス、$D000以降はテキストVRAMのウィンドウにバンク切り替えで割り当てられるため、配置には工夫が必要である。ディスクBASICでは、FDDのサポートルーチンが含まれるなどしているため、標準BASICでギリギリの大きさの場合にはメモリ不足に陥るなどのケースもある。

キャラクタ用 VRAM 2KBアトリビュートなどは無く、I/Oポートにより、8色中1色で全体の色を指定可能。

グラフィック用 VRAM オプション。最大48KB。グラフィックスをサポートする回路は1ページ目に含まれ、残りの分のソケットに対し、DIPタイプのRAMを差し込む形で増設する。


表示能力

キャラクタ
8×8ドットマトリクス、1000文字(40桁×25行)/ 2000文字(80桁×25行)、2モードソフト切換。MZ-1R01を増設してある場合、カラーディスプレイに対し、画面の背景色並びに、画面全体の文字色を各々1色選択することが可能。

グラフィック。
MZ-2000では全てオプションであり、ベースとなる一枚目に対して、残りのプレーンはRAMを差し込むことで増設される。詳細はMZ-2200の項を参照のこと。

キーボード

ASCII準拠メインキーボードALPS製メカニカルスイッチが採用された、入力しやすく精度の高いキーボードである。


インターフェイス
カラーCRTインタフェース×1(要MZ-1R01)

サウンド出力 400mW最大
PWM出力で該当I/OポートのHとLがスピーカー出力のH、Lに相当し、ソフトウェア的に音量を調整する機能を持たない。全体の音量は、背面の「音声ボリウム」によってハードウェア的に音量を無段階調整する。


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