M1911
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これらの改良が行われた後もまだ全軍に行き渡るには至らなかった為、コルト製及びスミス&ウェッソン製の民間向け大型回転式拳銃をM1911A1と同じ.45ACP弾に対応させたM1917リボルバーが開発され、不足分の穴埋めが行われた。

第二次世界大戦中は、コルト社、スプリングフィールド造兵廠の他、レミントンランド(銃器会社のレミントン・アームズではなく、タイプライターなどで知られる印刷機器会社)、シンガーイサカ・ライフルユニオン・スイッチ・アンド・シグナルなど、様々な機械系メーカーで臨時生産されていた。M1911A1の製造数で言えばコルト製よりもレミントンランド製の方が多い。なお、アメリカ軍はこれ以降新規に発注を行っておらず、戦後は全て部品の入れ替えなどによる旧品の維持で対応されたが、1985年ベレッタM9が新たに制式採用となるまでアメリカ軍の制式採用銃であり続けた。一部の部隊では現在もベレッタM9ではなく、M1911ベースの.45口径拳銃を使っている。11.4mm拳銃
神町駐屯地防衛館で壁に掛けられた展示品。実銃なので落下や盗難に備えてチェーンでつながれ、弾倉も外されている。

日本では、戦後発足した自衛隊が、アメリカ軍より供与されていたM1911A1を11.4mm拳銃の名称で使用していた[2]。供与されたM1911A1はコルト純正ではなく、大戦中に大量生産されたレミントンランド社製やシンガー社製の物が多数を占めていた[2][信頼性要検証]。11.4mm拳銃は、主に上級指揮官迫撃砲砲手戦車搭乗員に支給された[2]1982年ザウエル&ゾーン社のSIG SAUER P2209mm拳銃として採用するまでの、約20-30年に渡って使用された。結果として自衛隊の拳銃は現在に至るまでも外国製が採用されており、小銃については64式7.62mm小銃89式5.56mm小銃といった国産銃が採用されたのとは対照的である[2]

日本の警察にも戦後にアメリカ軍からM1917リボルバーやミリタリー&ポリス等の回転式拳銃と共に軍の余剰分が供与された。1950年に全警察官に拳銃の支給が完了した時点で、供与された拳銃の101,770丁のうちM1911は14,160丁であった。当時の日本の警察は、国家地方警察および自治体警察に分かれていたが、M1911はすべて自治体警察に配分された。後に各地で自治体警察の廃止が進むにつれて国家地方警察に移管され、1954年警察法改正によって現在の警察制度となって以降は各都道府県警察に移管された。しかし、45口径の拳銃は当時の日本人にとっては重く反動が大きかったため好まれず、特に自動式拳銃であるM1911は、構造の複雑さからくる取り扱いの難しさや老朽化から暴発などの事故が多かった。そのため早期に退役が進み、38口径の回転式拳銃に置き換えが進められたが、普段は拳銃を携帯しない上級警察官や職種を中心に1990年代まで支給されていた。例えば1972年に起こったあさま山荘事件において長野県警機動隊がM1911A1を使用していた。
現在[ソースを編集]MEU ピストルの射撃訓練を行う海兵隊員M45A1の射撃訓練を行う第11 MEUの隊員

制式を外れたあとも民間用の拳銃としての人気は高く、護身用銃・競技銃として広く用いられている。アメリカでは最も有名な拳銃であり、コルト社のパテントが失効した現在では各社からガバメントモデル、M1911ベースのカスタムガンなどが発売されている。特に競技用の銃としては、カスタムパーツが多数出ているため細かいニーズに応じられる、前時代的な金属フレームのため個人でカスタムしやすい(新素材のポリマーフレームは、専用の設備がなければ切削加工などが困難)、大量かつ長期間にわたり生産されたため、中古の個体が多く価格が安定している、銃自体に重量があるため(現代人の体格が本銃の開発・採用当時よりも向上したこともあり)体感する反動が比較的軽いなどといった理由から、カスタマイズのベースとされやすい。また、.38スーパーモデルも、IPSCのように威力でクラス分けされるような大会の高威力クラス用にリロードすると、コンペンセイターを効かせやすいという理由から競技用ベースとして取り上げられる事も多い。ビル・ウィルソンが興した「ウィルソン社」で作られ、ロバート・レイサム、ブライアン・イーノスの二人のシューターに愛用された「ウィルソンLE」はよく知られる。

近年の小口径・多弾装化の波により一時人気が下がり、複列弾倉を採用したハイキャパシティ(ハイキャパ)と呼ばれるモデルも出現したが、アメリカが民間銃の装弾上限を10発に規制したため、再びシングルカラムモデルの人気が上がっている(しかし、時限法律であったため既に現在は失効し、一部の州を除いて装弾数制限はなくなった)。

アメリカ合衆国以外では用として採用されることは少なかったが、長年アメリカ軍の顔であったM1911A1は、アメリカ人にとって最も馴染み深い拳銃であり、その主力弾薬である.45ACP弾は、9mm弾などが主流となっている多くの諸外国に比べても非常に普及している。そのため、米国市場を想定した拳銃の開発において「M1911A1に近い操作系統やグリップアングルにする」「.45ACP対応モデルを作る」など、M1911シリーズを意識した方針を重要視する他社・他国の銃器メーカーは少なくない。

海兵隊遠征隊(Marine Expeditionary Unit)などのようにいまだにM1911系の拳銃を使用する軍部隊もあり、その名を冠したMEU(SOC)ピストル(英語版)が納入されている。これは、モスボールされていたM1911A1のフレームに、スプリングフィールド・アーモリーやキャスピアンのスライドを載せ、新規のパーツで組み立てたものである。2012年からはMEUSOCピストルの更に後継として、やはりコルト社製のM45A1 CQBP(Close Quarters Battle Pistol―接近戦用拳銃)が採用されている。これは現代の拳銃に相応しく、左右どちらの手でも撃てるようにアンビセフティになっているなど古品の再生ではなく完全に新規で製造されたものであり、M1911シリーズが再び正式に採用されることとなった。コルト社のCEOは「101年の時を越えて米軍に再び1911ピストルが導入されるのは何よりも優秀な証拠である」と発表している[3]
代表的なバリエーション[ソースを編集]
コルト社製[ソースを編集]
シビリアンモデル(民間販売型)
コルト社の民間販売モデルは、基本的にガバメントモデル、コマンダーモデル、ナショナルマッチモデルの3種類である。ガバメントモデルは、基本的に用モデルと同仕様。コマンダーモデルは、銃身およびスライドを4.3インチに短縮し、ダストカバーおよびグリップセーフティの先端部も短くされている。撃鉄は角型からリング型に改められ、携帯の際に衣服に引っかからないよう工夫された。ナショナルマッチモデルは標的射撃競技仕様で、特に精度の高い銃身が組み込まれ、他の部品の組み立て精度が高い。第二次世界大戦前のモデルは外見的には刻印以外はガバメントモデルと同一仕様であったが、戦後モデルになると、コルト社純正の可動照準器であるアクロサイトが装着された。
コルトMk.IV SERIES 70/SERIES 80
純正の民間用M1911で、現行モデルはMk.IV(マーク4)シリーズ80型である。戦後には安全対策などを目的に数回のモデルチェンジが行われており、1970年-1983年まではMk.IV(マーク4)シリーズ70、1983年からはMk.IV(マーク4)シリーズ80が護身用・競技用それぞれのモデルで販売されている。Mk.IV(マーク4)シリーズ80には、当時の主流となっていた「オートマチックファイアリングピンブロック」(AFPB)と呼ばれるインターナルセーフティが新機軸として組み込まれ、マニュアルセーフティ、グリップセーフティに加えて3重の安全装置を有することになった。これは、トリガーのリリースに伴い作動する方式であるため、以前の型と比較してトリガーにかかるテンションが大きくなり、繊細な操作を要求される保守派の競技射手からは不評を買った。このため、競技銃に改修されるベースガンとして、中古となったシリーズ70の人気が上昇してプレミア価格がつく事態が起きた。そのため、一部の社外品M1911クローンでは、AFPBの解除をトリガーではなく、グリップセーフティと連動させている。また、改良によって大型化したフロントサイトであるが、コルト製のものはステーキ・オンと呼ばれる取り付け方法(スライドに穴を開けて差込み、かしめる)が以前と変わっていないため、射撃時の反動・衝撃で吹き飛び、紛失する現象がしばしば生じる(もちろん、社外品や別メーカー品では取り付け方法を変更して対策している物が多い)。装弾数は8発に増えている。なお、現在でも復刻版のSERIES 70がM1991A1などと並行して販売されている。
コルト ゴールドカップナショナルマッチ
コルト・ゴールドカップナショナルマッチ戦前からある射撃競技仕様のナショナルマッチモデルがSERIES 70以降、ゴールドカップモデルとなった。主な外見上の仕様は、リブ付のスライドカバーにイライアスン可動リアサイトとパートリッジ型のフロントサイトが装着され、引き代が調整できるワイドサイズのトリガー、ストレート型のメインスプリングハウジングが標準装備、グリップ部前面には7本のグルーブ(滑り止めの溝)が彫り込まれている。内部機構としては、高い精度の銃身が組み込まれ、各部品の組合せ精度も熟練工の手により、高精度で組み上げられている。また、トリガーとシアの間にディプレッサーが組み込まれ、標的射撃に向いたトリガープルを持つ。コルト・パイソンに並んで、コルト社最高級モデルである。これは、映画『コブラ』でシルヴェスター・スタローン演じるコブレッティ刑事が、白いグリップにコブラの紋章を入れてカスタムしていた銃でもある。
コルトM1991A1
名称からも分かる通り、コルト社が1991年に発売したモデルで、黒いプラスチックグリップが標準装備されている。


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