M期
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細胞周期ごとに染色体の複製と分離が行われる。

細胞周期(さいぼうしゅうき; cell cycle)は、ひとつの細胞が二つの娘細胞を生み出す過程で起こる一連の事象、およびその周期のことをいう。細胞周期の代表的な事象として、ゲノムDNAの複製と分配、それに引き続く細胞質分裂がある。
目次

1 概要

2 間期

2.1 G1期

2.2 S期

2.3 G2期


3 M期

4 静止期(G0期)

5 細胞周期の制御

5.1 細胞周期エンジン(Cdk/サイクリン複合体)

5.2 細胞周期チェックポイント


6 関連項目

7 脚注

8 参考図書

9 外部リンク

概要 細胞周期

細胞周期は、光学顕微鏡での観察に基づき、間期(interphase)とM期(M phase)とに分けられる。間期はさらにG1期、S期、G2期に分けられる。M期は有糸分裂細胞質分裂によって構成される。有糸分裂では姉妹染色分体が細胞の両極に分かれ、引き続く細胞質分裂では細胞質が割れて2つの細胞が生み出される。一時的にもしくは可逆的に分裂を停止した細胞は、G0期と呼ばれる静止期に入ったとされる。

状態期間略記説明
静止/
老化Gap 0G0細胞が周期から去った、または分裂を止めている休止期。
間期Gap 1G1Gap 1では細胞は大きくなる。G1/Sチェックポイントで次のDNA合成への準備ができているかが確認される。
合成(Synthesis)Sこの期間にDNAの複製が行われる。
Gap 2G2DNA合成から有糸分裂が起こるまでの間、細胞は成長し続ける。G2/Mチェックポイントで次のM期(有糸分裂と細胞質分裂)への準備ができているかが確認される。
細胞分裂分裂(Mitosis and cytokinesis)Mこの段階で細胞の成長は停止し、活動エネルギーは分裂に集中される。有糸分裂の途中M期チェックポイントで完全な分裂への準備ができているかが確認される。

間期

この節は検証可能参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(2010年5月)

細胞が分裂し、生じた娘細胞が再び有糸分裂を開始するまでの間、つまりM期と次のM期の間を間期(interphase)と呼ぶ。細胞の成長、物質の吸収、生合成、遺伝情報と全ての細胞小器官の複製、また代謝など、細胞としての機能はこの時期に行われる。真核細胞の多くは大半の時間を間期に費やし、次の細胞分裂(M期)に備える。間期では、クロマチン核膜に囲まれた細胞核の中に分散しており、個々の染色体を識別することはできない。核小体は核内構造のひとつとして確認できる。紡錘糸はまだ観察されないが、中心体周辺に観察される。

放射性同位体(RI, radio isotope)を用いて同調細胞のDNA合成を経時的に追跡することで、間期は、G1期、S期、G2期の3段階に分けられることが明らかになった。各期は細胞周期チェックポイントで完了が確認されてから次の期間へと進行する。各期間と間期全体にかかる時間は細胞の種類や生物の種類によって様々である。一般に哺乳類の成体の細胞で、間期は20時間ほどであり、細胞分裂全体のほぼ90%の時間を占める[要出典]。
G1期

M期が終わり、DNA合成が始まるまでの期間は、間期における最初の期間であり、G1期(Gはgapを意味する)と呼ばれる。G1期は別名成長期とも言われる。この期間中、M期では顕著に低かった細胞の生合成活性が再び高まる。G1期では、次のS期で必要とされる種々の(主にDNA複製に用いられる)酵素が合成される。また細胞小器官の合成も盛んで、関連する構造タンパクと酵素が多量に消費されるため細胞内の代謝が活発な期間でもある。G1期はさらに4つの小期に分けられる。
コンピテンス(g1a)

エントリー(g1b)

プログレッション(g1c)

アセンブリ(g1d)

これらの小期は成長因子、栄養供給、温度、その他の阻害因子により影響を受けうる。S期に入る前にG1期を中断し休眠状態のG0期に入る細胞もある。G1期の長さは様々で、同種の生物でも細胞によって異なるが[1]、24時間毎に分裂を繰り返しているような活発なヒトの細胞では、G1期に約9時間かかる[2]。G1期の終わりには細胞周期チェックポイントがある。これはDNAに欠陥がなく、細胞の機能が正常なことを確認する一連の安全機構である。機能的にはサイクリン依存性キナーゼ(Cyclin Dependent Kinase; CDK)がこの役目を果たしている。G1期CDKタンパクは様々な遺伝子に対して転写因子を活性化する。これらの遺伝子の中にはDNA合成タンパク質やS期CDKタンパク質に対応するものも含まれている。[2]
S期

G1期に続くS期(Synthesis phaseの略)は、染色体DNAが複製される時期である。S期では、DNAヘリカーゼが2重鎖DNAを開裂して1本鎖を作り、続いてDNAポリメラーゼが相補的塩基対を結合させることで2本の2重鎖DNAが生成される。DNA合成が完了し、全ての染色体が複製されたところでS期は終了する。S期の間に細胞内のDNA量は実質2倍になる。S期ではRNA転写とタンパク質合成の速度は非常に低い。しかし、ヒストンは例外的で、ほとんどのヒストンがS期に作られる[3][4][5]。中心体もS期に複製される。DNAの複製と中心体の複製は独立に行われるが、その進行には多くの共通の因子が関係している。結果的に細胞分裂に必要な細胞内の遺伝物質の複製はS期で完了する[6]

S期ではDNAの損傷が頻繁に起こるが、複製の完了と共にDNA修復が始まる。修復が不完全な場合は細胞周期チェックポイント機構で検知され、細胞周期が停止される。この段階を通過するとほとんどの細胞は細胞周期を途中で停止しない。
G2期

DNA複製が完了してから、M期に入るまでの期間をG2期と呼ぶ。G2期では再び盛んなタンパク質合成が行われ、主に有糸分裂に必要な微小管が作られる。一般に間期の中ではG2期が最も短く、例えばヒトの細胞では多くの場合4?5時間で終了する。G2期にはG2/Mチェックポイントがあり、細胞がM期に進めるかどうか判断している。
M期 分裂中期の細胞。ほとんどの染色体 (青) が赤道面に配列した状態。緑が紡錘体。

M期(Mitotic phaseの略[7])には、有糸分裂(mitosis)と細胞質分裂(cytokinesis)が行われる。有糸分裂は、ほとんどの細胞において約1時間程度で終了する。有糸分裂は、染色体の動態の光学顕微鏡での観察に基づいて、前期前中期中期後期終期に分けられる。前期では、染色体の凝縮(染色体凝縮)が起こり、この時期に染色体が顕微鏡下で観察されるようになる。中期にはいると、核膜が消失し、染色体が赤道面上に並ぶ。紡錘体もこの時期に完成する。後期では、セントロメア付近で結合していた姉妹染色分体が、紡錘体に引っ張られるような形で、分離し、極方向に移動を開始する。終期では分離を終えた染色分体が脱凝縮し、その周囲に核膜が再形成される。また、この時期から細胞質分裂が始まり、細胞分裂が終了する。

有糸分裂は、生物種によって異なる様式をとる。例えば、上記のように動物細胞では核膜が一時消失する「開いた」有糸分裂(open mitosis)を行う。一方、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)ような菌類では、M期を通じて核膜は崩壊せず、細胞核の中で染色体が分かれる「閉じた」有糸分裂(closed mitosis)を行う[8]


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