M&H蒸留所(えむあんどえいちじょうりゅうじょ、英語: M&H Distillery)は、イスラエルのテルアビブにあるウイスキーの蒸留所。ユダヤ教の戒律であるカシュルートに準じた製品づくりや、死海周辺の過酷な自然環境下での熟成を特徴としている。
歴史カナンの地図
M&H蒸留所は2013年にイスラエルのテルアビブで創業した[1]。創業の場所としてテルアビブを選んだのはイスラエル国内では最もバー文化が盛んだからであった[4]。蒸留所名の「M&H」は「Milk & Honey」を意味し、旧約聖書の一節「乳と蜜の流れる地」から名付けられたものである[5]。創業者はガル・カルクシュタイン[6]。蒸留開始は2014年1月で、初めての製品は2017年5月20日の世界ウイスキーデーに合わせて発売された[7]。
イスラエルではブランデーなどの蒸留酒は造られていたもののウイスキーは造られておらず、ウイスキー造りに挑戦した理由についてM&Hの蒸留責任者であるトメル・ゴレンは「イスラエルで最初の、本格的なウイスキーを造れたら、という思いが原点です」と述べている[1]。製造面では、カバラン蒸留所の立ち上げに関わり温暖地でのウイスキー造りに通暁しているジム・スワン(英語版)をコンサルタント兼マスターディスティラーとして招聘した[8][9][注釈 1]。 製造能力は年間23万リットルである[2]。ユダヤ教の戒律であるカシュルートに準じた製品づくりを行っているほか[11]、熟成環境の違いを活かしたウイスキーづくりを行っている[12]。また、製造方法はスコッチ・ウイスキーの基準にも準じており、原料は麦芽100%、蒸留はポットスチルを2回使用、熟成は樽で3年以上となっている[4]。土屋守はM&Hの製造設備について「手作り感満載」と評している[12]。「スコッチ・ウイスキー#製造工程」も参照 麦芽はすべて海外から輸入しており、ノンピートのものを使用しているが、半年ごとに2週間だけピート麦芽での製造も行っている[4]。麦芽を粉砕するミルはポ―ティアス社製のもので、初留器を購入した際のおまけで付いてきたものだという [3]。一度の仕込みに使う麦芽は1トンである[13]。 マッシュタン(糖化槽)はイスラエル製のものを使っている[4]。糖化は2回行われ、1回目は4,000リットル、2回目は2,000リットルの水が使われる[14]。それぞれ所要時間は2時間ほど[3]。 ウォッシュバック(発酵槽)はステンレス製のものが6基ある[11][2]。容量は9000リットル [3]。カシュルートに則った製品づくりをしているため金曜日と土曜日は製造ができず、そのため麦汁の製造日によって発酵時間が2つのパターンに分かれている[13]。日曜日に造られた麦汁は火曜日までの48時間発酵で、水曜日と木曜日の麦汁は96時間発酵となる[3]。 ポットスチルは初留器と再留器がそれぞれ1基ずつである[3]。蒸留回数は2回[2]。初留器はスペイン製と思われる中古品で [11]、アルメニアにあったものである[3]。容量は9,000リットル[3]。再留器はドイツのカール社製の容量3,500リットルのものである[3]。ラインアームはいずれも下向きである[3]。ミドルカットは80%から70%と比較的短く[2]、オイリーで口当たりのいい味わいの原酒造りを志向している[3]。 ジム・スワンの提案のもとで気候の違いを利用した熟成を行っており[11][15]、蒸留所の位置するテルアビブの他に、死海、ネゲヴ砂漠、ガリラヤ湖、ユダヤ山脈
製造
麦芽・仕込み・発酵左にあるのがマッシュタン
蒸留ポットスチル
熟成熟成庫