Lp空間
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数学の分野における Lp 空間(エルピーくうかん、: Lp space)とは、有限次元ベクトル空間に対する p-ノルムの自然な一般化を用いることで定義される関数空間である。アンリ・ルベーグの名にちなんでルベーグ空間としばしば呼ばれる[1] が、Bourbaki (1987) によると初めて導入されたのは Riesz (1910) とされている。Lp 空間は関数解析学におけるバナッハ空間や、線型位相空間の重要なクラスを形成する。物理学や統計学、金融、工学など様々な分野で応用されている。
有限次元における p-ノルム異なる p-ノルムにおける単位円の図(原点から各単位円へのすべてのベクトルの長さは、対応する p の長さの公式で計算して、1 である)。p = .mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}3⁄2-ノルムにおける単位円(スーパー楕円

n-次元数ベクトル空間 Rn 内のベクトル x ? (x1, x2, …, xn) の長さは、通常、次のユークリッドノルム ‖ x ‖ 2 := x 1 2 + x 2 2 + ⋯ + x n 2 {\displaystyle \|x\|_{2}:={\sqrt {x_{1}^{2}+x_{2}^{2}+\dotsb +x_{n}^{2}}}} で与えられる。

二つの点 x と y との間のユークリッド距離は、それらの間に引かれる直線の長さ ‖ x − y ‖ 2 {\textstyle \|x-y\|_{2}} である。しかし多くの場合、ユークリッド距離は与えられた空間における実際の距離を認識する上で不十分である。例えば、マンハッタンのタクシー運転手は彼らの目的地までの直線の長さよりも、互いに垂直あるいは平行な道路について考慮したマンハッタン距離を測るべきであろう。p-ノルムの類は、これらの例を一般化するものであり、数学物理学計算機科学などの多くの場面において応用されるものである。
定義

実数 p ? 1 に対して、x の p-ノルム(p-乗平均ノルム)あるいは Lp-ノルムは次で定義される: ‖ x ‖ p := ( 。 x 1 。 p + 。 x 2 。 p + ⋯ + 。 x n 。 p ) 1 / p . {\displaystyle \|x\|_{p}:={\Bigl (}|x_{1}|^{p}+|x_{2}|^{p}+\dotsb +|x_{n}|^{p}{\Big )}^{\!1/p}.}

この語法のもとでは、上述のユークリッドノルムは 2-ノルム、マンハッタン距離は 1-ノルムと呼ぶことができる。

L∞-ノルム、最大値ノルム(あるいは一様ノルム)は、 p → ∞ {\textstyle p\to \infty } に対する Lp-ノルムの極限として、 ‖ x ‖ ∞ := max { 。 x 1 。 , 。 x 2 。 , … , 。 x n 。 } {\displaystyle \|x\|_{\infty }:=\max\{|x_{1}|,|x_{2}|,\dotsc ,|x_{n}|\}} と定められる(これはチェビシェフ距離である)。

任意の p ? 1 に対し、上で定義された p-ノルムおよび最大ノルムは、実際「距離関数」(あるいはノルム)の性質を満たす。すなわち、次を満たす:

長さゼロとなるのは、ゼロベクトルのみである;

ベクトルの長さはスカラー倍に対して正の斉次性を持つ;

二つのベクトルの和の長さは、それらのベクトルの長さの和よりも小さい(三角不等式)。

抽象的に言えば、このことは p-ノルムを備える Rn はバナッハ空間であることを意味する。このバナッハ空間が Rn 上の Lp-空間である(後述)。
p-ノルムの間の関係

一般にマンハッタン距離が直線距離より短くならないことは直観的に明らかである。正確に述べれば、これは任意のベクトルのユークリッドノルムがその 1-ノルムで抑えられること、すなわち ‖ x ‖ 2 ≤ ‖ x ‖ 1 {\displaystyle \|x\|_{2}\leq \|x\|_{1}}

を意味する。これは、任意のベクトル x の p-ノルム ‖ x ‖ p {\textstyle \|x\|_{p}} は p に関して増大しないこと、すなわち次が成り立つことに一般化可能: ‖ x ‖ p + a ≤ ‖ x ‖ p ∀   x ∈ R N   ∀   p ∈ [ 1 , ∞ )   ∀   a ∈ [ 0 , ∞ ) . {\displaystyle \|x\|_{p+a}\leq \|x\|_{p}\quad \forall \ x\in \mathbb {R} ^{N}\ \forall \ p\in [1,\infty )\ \forall \ a\in [0,\infty ).}

逆方向の不等式については、1-ノルムと 2-ノルムの間に次の関係が成立することも知られている: ‖ x ‖ 1 ≤ n ‖ x ‖ 2 . {\displaystyle \|x\|_{1}\leq {\sqrt {n}}\|x\|_{2}.}

この不等式はベースとするベクトル空間の次元 n に依存する。コーシー=シュワルツの不等式より直接的に従う。一般に p > r > 0 に対して ‖ x ‖ p ≤ ‖ x ‖ r ≤ n ( 1 / r − 1 / p ) ‖ x ‖ p {\displaystyle \|x\|_{p}\leq \|x\|_{r}\leq n^{(1/r-1/p)}\|x\|_{p}}

が成り立つ。右側の不等式は、凸関数 t ↦ t p / r {\displaystyle t\mapsto t^{p/r}} についてイェンセンの不等式を用いることで示される。
0 < p < 1 の場合p = 2⁄3 距離における単位円であるアステロイド

n > 1 のときの Rn において、0 < p < 1 に対して上と同じ式   ‖ x ‖ p = ( 。 x 1 。 p + 。 x 2 。 p + ⋯ + 。 x n 。 p ) 1 / p {\displaystyle \ \|x\|_{p}=(|x_{1}|^{p}+|x_{2}|^{p}+\dotsb +|x_{n}|^{p})^{1/p}} は絶対斉次的だが劣加法的とはならないため、これを用いたのではノルムを定義できない(F-ノルムにもならない)。そこで式を修正して ‖ x ‖ p := 。 x 1 。 p + 。 x 2 。 p + ⋯ + 。 x n 。 p {\displaystyle \|x\|_{p}:=|x_{1}|^{p}+|x_{2}|^{p}+\dotsb +|x_{n}|^{p}} を定義とすると F-ノルムの意味での「ノルム」が定まる(p-乗ノルム)。この修正によって斉次性は失われるが、これは劣加法的であって、特に d p ( x , y ) := ‖ x − y ‖ p = ∑ i = 1 n 。 x i − y i 。 p {\displaystyle d_{p}(x,y):=\|x-y\|_{p}=\sum _{i=1}^{n}|x_{i}-y_{i}|^{p}} は距離を定める。この距離空間 (Rn, dp) を通例 ? p
n  で表す: l n p := ( R n , d p ) . {\displaystyle l_{n}^{p}:=(\mathbb {R} ^{n},d_{p}).}


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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